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コラム 4日前

バッジョとパオロ・ロッシを生んだ白赤の系譜――。欧州の舞台でも光放ったヴィチェンツァの足跡【セリエA懐かしクラブの今/第3回】

ヴィチェンツァ
かつてヴィチェンツァで活躍したロベルト・バッジョ(左)とパオロ・ロッシ(右)【写真:Getty Images】



 1980年代後半から2000年代前半にかけて黄金期を築いたイタリア・セリエA。中田英寿や中村俊輔といったレジェンドも同舞台で輝くなど、日本人に馴染みの深いクラブが多かった。しかし、そこから深刻な財政難を理由に、現在はかつてのような存在感を失ってしまったクラブも目立つ。今回は、そのようなクラブをピックアップ。輝かしい歴史と、あまり知られていない“今”を伝える。第3回はヴィチェンツァ。(文:佐藤徳和)[2/2ページ]

輝かしい歴史と転落の破産

 翌シーズン、カップ戦王者としてカップウィナーズカップに参戦したヴィチェンツァは、準決勝まで進んだが、そこで力尽きた。

 その時の対戦相手が、この大会を制すこととなるチェルシーであった。本拠地ロメオ・メンティの初戦には1-0で白星を収めたが、敵地では先制したものの1-3と逆転負けを喫した。

 ロベルト・ディ・マッテーオ、ジャンフランコ・ゾラ、そして今は亡きジャンルーカ・ヴィアッリらを擁したスター軍団を相手に果敢に挑んだ彼らの奮戦は、今でも多くの人々に刻み込まれている。

 ちなみに、この大会では、パスクアーレ・ルイーゾが8得点をマークして、得点王のタイトルを手にしている。

 アッズーリに一度も招集されたこともないイタリア人ジョカトーレが、欧州カップ戦で得点王の称号を得る。そういう時代であった。



 けれども、彼らの幸福な時間は長くは続かず、翌シーズンにはセリエAで17位に終わり、セリエBに転落する。

 1年でセリエAに返り咲くものの、2000/01シーズンを最後に、セリエAの舞台に戻ることはできていない。

 クラブが破産した2018年には、Diesel、Jil Sander、Marniなどのブランドを傘下に収めるイタリアのOTBグループによって買収された。

 Dieselの創業者の一人でOTBグループの会長を務めるレンツォ・ロッソの息子、ステーファノが、クラブの会長を担い、再建に奔走している。

圧倒的な強さでセリエBへ

 すぐに、結果を出して、19/20シーズンには、セリエAの各クラブの指揮を執ったドメニコ・ディ・カルロの指導の下、セリエCグループBの頂点に立ち、セリエBに返り咲いた。

 だが、外国人オーナーが増え、資本力で上回るクラブが多くなったセリエBでは、残留は容易ではなく、2年で降格。またしても、彼らの舞台は、プロリーグ最下層のセリエCとなってしまった。

 それでもクラブは、復帰に向けて着々と実力を身につけ、下部組織から多くの選手をトプチームに引き上げながら、セリエCグループAの25/26シーズン、6節を残し、圧倒的な成績でセリエB復帰の祝祭をあげた。

 OTBは、「Only The Brave(勇敢なる者だけに)」を頭文字に持つ。その企業名に掲げる理念のように、チームも勇ましい戦いを見せた。

 この白赤のクラブの価値を高めてきたのは、バッジョやロッシといった2人のバロンドーラーだけではない。



 創設以来、際立った個性を持つ著名な会長を数多く擁してきた。その多くはヴィチェンツァの貴族階級に属する人物であった。

 クラブは愛国者でありガリバルディ派のティート・ブイによって創設され、彼が初代会長に就任した。また、名誉会長には伯爵であり代議士でもあったフェリーチェ・ピオヴェーネが就いた。

 将軍であり政治家でもあったアウグスト・ブッキアは、チームが1910/11シーズンのスクデットにあと一歩まで迫った際の会長であった。

 こうした数多くの地元有力者に支えられてきた、歴史あるクラブである。彼らの居場所はセリエBではない。

 彼らが目指すべき頂。それは言葉にするまでもないだろう。

(文:佐藤徳和)

【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru

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【了】

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