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コラム 5時間前

またセリエA勢が欧州の舞台から消えた…。何が他国リーグと違う? データが暴くイタリア・サッカーの深刻な問題とは【コラム】

UEFAヨーロッパリーグで準々決勝敗退となったボローニャ

UEFAヨーロッパリーグで準々決勝敗退となったボローニャFC【写真:Getty Images】



 去る日本時間4月17日、UEFAヨーロッパリーグ(欧州EL)および、UEFAカンファレンスリーグ(欧州ECL)準々決勝でイタリア勢が敗れ、欧州の舞台から姿を消した。イタリア代表がFIFAワールドカップ2026(W杯)欧州予選で敗退したこともあり、イタリア・サッカーの低迷が浮き彫りとなってしまった。イタリア・サッカー界が今抱えている問題について、現地報道やデータ、これまでの歴史をもとに紐解いていく。(文・佐藤徳和)[2/2ページ]

かつて守備の王者だったイタリアは今。「足元が優れたDFが多いが…」

 2006年大会で優勝したのを最後に、2大会連続でGS敗退、そして、3大会連続での予選敗退である。まるでブラックホールに吸い込まれ、もはや抜け出すこともできないような有様である。

 欧州ECLでは2021/22シーズンでASローマが優勝。欧州ELでは23/24シーズンにアタランタが頂点に立ったが、最高峰のカップ戦、CLでは2009/10シーズンのインテルを最後に、16年も遠ざかっているのだ。

 しかも、そのインテルは先発メンバーがすべて外国人選手で固められ、試合終了直前に投入されたマルコ・マテラッツィが、唯一のイタリア人選手だった。

 真の意味で、“イタリア人による”チームのCL制覇と呼べるのは、先発メンバーに7人ものイタリア人選手を擁した2006/07シーズンのミランまで遡らなければならないかもしれない。

 イタリアはかつて、守備の王者であった。

 欧州の列強が恐れ慄くほどの強さを持ち、守備だけでなく、一撃必殺のカウンターも備えていた。迂闊には、前に出ることのできない恐さがあり、畏敬の念を抱かれていた。



 イタリア代表も、クラブも、もはやかつてのような、守備の強さがない。攻め込まれると粘り強さもなく、いとも簡単に失点を許してしまうのだ。

 イタリア・サッカー界の御大、ファビオ・カペッロも『ラ・ガッゼッタ・デッロ・スポルト』のインタビューでこう訴える。

「私としてはまず第一に、見栄えがいいだけでなく、しっかりと守れるディフェンダーが必要だと考えている。(アレッサンドロ・)バストーニや(リッカルド・)カラフィオーリも前に出ていく場面では非常に優れているが、後ろで何が起きているか、注意しなければならない場面では、それほど優れてはいない」

 とにもかくにも、イタリアには足元が優れたDFが多いが、90分間、一度もマークを逃さず、守り抜けるディフェンダーがいないのだ。

 守備以外でもイタリア・サッカーの低迷は著しい。

 先日、イタリア・サッカー連盟(FIGC)会長を辞任したガブリエーレ・グラヴィーナが公開したレポートを見ても、はっきりと見て取れる。

イタリア・サッカー連盟が公開したイタリア・サッカーの技術的な問題点とは?

 これは本来、イタリア議会下院の文化・科学・教育委員会での公聴会で公表される予定だったが、この公聴会は中止になった。

 セリエAでのイタリア人選手の出場時間の少なさ、平均年齢、外国人選手の割合、インフラ問題、改革案などが記載され、他国のリーグとの比較がなされた技術的な問題も指摘されている。

 その技術的問題は、以下のとおり。

・セリエAは、スプリント時の走行距離において、欧州リーグの上位10位に入っていない。

・セリエAにおける試合中のボールの平均速度(7.6m/s)は、CLの平均(10.4m/s)および欧州主要リーグの平均(9.2m/s)を大きく下回っている。

・セリエAは、欧州5大リーグの中で、1試合あたりのドリブル数が最も少ない(セリエAは26.69回、欧州5大リーグ平均は29.97回)。

・2019/20シーズン以降、セリエAにおける成功ドリブル数は減少傾向にあり、1試合平均19.02回から12.36回へと低下している。

・セリエAは、欧州5大リーグの中で、プレッシング局面における攻撃性の指標において最下位であり、ボール保持中の相手チームに対してより多くのパスを許している。


 
 サッカーの強さは、数値だけで測り知れるものではない。

 しかし、ここまで技術的水準の低下がデータとして明確に表れている以上、イタリア勢が上位へ勝ち進むことは容易ではないと言わざるを得ない。

 実際の試合を見ても、イタリアのチームはパススピードが遅く、横パスを中心に“ゆったり”とボールを回す場面が目立ち、ドリブルで局面を打開するシーンは極めて少ない。

 そして、イタリア代表もセリエAの選手を主軸に構成されている以上、こうした傾向が当てはまるのは必然である。

 サッカー界においてもデータの重要性が高まる現在、こうした数値は各クラブがすでに把握しているはずであり、さらに詳細な分析データを蓄積しているクラブも少なくないだろう。

 ドラスティックな変革を望むのは容易ではないが、意識の転換であれば今この瞬間からでも可能である。とりわけ指導者は、”世界基準”のサッカーを志向し、イタリア・サッカー復権のために尽力しなければならない。

 まずは代表の土台を成すクラブレベルからの改革が急務である。

(文:佐藤徳和)

【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru

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【了】
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