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コラム 13時間前

パリ・サンジェルマンのすぐ隣で何が起きている? 忘れられた“クラブ”パリFCが急浮上した理由【コラム】

パリFC
パリFC【写真:Getty Images】



 忘れられたクラブが、いま再び脚光を浴びている。度重なる分裂と低迷を経て、長らく表舞台から姿を消していたパリFC。しかし、LVMHとレッドブルの参画をきっかけに、その歴史は大きく動き出した。パリ・サンジェルマンと“隣り合う”もう一つのクラブは、いかにして再生を遂げたのか。(文:佐藤徳和)[2/2ページ]

PSGは世界的クラブへ。一方のパリFCは…

 パリFCが低迷し、存在感を失う一方で、PSGは再び台頭し、スタジアムも取り戻した。

 それが、今の彼らのホームであるパルク・デ・プランスで、パリFCも1972年から1974年までと1978年から1979年にかけて本拠地として使用した。

 両者がトップリーグで対戦したのは1979年の2試合。ともに引き分けだった。

 それ以降、PSGが、急速に台頭してトップに立つ。2度のクープ・ドゥ・フランス制覇を経て、1985/86シーズン、リーグを初制覇する。

 一方のパリFCは低迷。80年代前半には再び別のクラブと合併したが、これも失敗に終わり、84/85シーズンには、ついに地域リーグのディヴィジオン・ドヌール・パリ(5部リーグ)にまで降格してしまう。

 それから、負のスパイラルに陥り、再び彼らが、全国的に注目を浴びるのは、リーグ・ドゥに昇格する2015/16シーズンまで待たなければならなかった。



 32年ぶりの2部リーグ昇格年は、最下位に終わるものの、シャンピオナ・ナシオナルでの16/17シーズンで再び昇格を勝ち取る。

 そして、2部に定着していた2024年11月29日、冒頭で触れたような買収劇が起こるのである。

 LVMH会長ベルナール・アルノーの息子であるアントワーヌは、サッカーに関心が低い父を、兄弟とともに説得したという。

「父は企業家としての視点で、パリFCというブランドに価値創出の可能性を見たのだと思う」と語る。

 さらに「一歩一歩、進めていく。ビッグスター獲得には走らない。スポーツの世界では、焦らず段階的に進めることが重要だ。我々は長期的視点で考えている」とも話していた。

 世界的な企業の後ろ盾を得たチームは、勢いに乗り、2位でシーズンをフィニッシュ。クラブは史上初めてリーグ・アンへの昇格を果たすのであった。

オーナー一族の一人はまさかのPSGファン

 オーナー一族の計画を前倒しする形でのトップリーグ昇格となった可能性はあるが、これは嬉しい“誤算”だったと言える。

 これでパリFCとPSGとのパリ・ダービーが実現することとなったが、実はアントワーヌは、熱狂的なPSGのサポーターでもある。スタジアムにも足を運ぶほどの熱心なファンだ。

「私はずっとPSGのファンだ。子どもの頃からね。パリFCがリーグ・アンに上がったとしてもPSGを応援し続けるよ。年に2試合を除いてはね(笑)」

 両チームの実力差はあまりにも大きく、両者の間に真のライバル関係は存在しない。

 パリFCのオーナー一族の一人がPSGのサポーターであっても、特段の問題とは見なされていない。



 そして、今年1月4日、迎えたPSGとのアウェイでの一戦は、1-2と敗れはしたものの、パリFCの健闘が光った一戦だった。

 だが、2月に入り、AJオセールに引き分けると、PSGと優勝を争うRCランスに0-5と大敗を喫する。

 さらにトゥールーズFC戦にも引き分け、クラブは2月24日、昇格監督でもあるステファヌ・ジリを解任。選手としても監督としてもPSGに所属したアントワーヌ・コンブアレを招聘した。

 するとチームは、OGCニースに1-0で勝利するなど、3月以降、好調を維持。現在12位で残留争いから抜け出した。

 その原動力となっているのが、冬の移籍市場で獲得したイタリア人3選手である。

パリFCを変えた3人のイタリア人選手とは?

 センターバックのディエゴ・コッポラ、サイドアタッカーのルーカ・コレオショ、そしてストライカーのチーロ・インモービレだ。

 22歳のコッポラは加入後すぐに定位置を確保し、ここまで10試合すべてにフル出場。最終ラインの軸として不動の地位を築いている。

 U-21イタリア代表のコレオショは主に途中出場ながら、すでに2ゴールを記録して存在感を示す。

 ベテランのインモービレは本来のコンディションには至っていないものの、4月10日のASモナコ戦では待望の初ゴールを挙げ、さらにアシストも記録した。

 イタリア人選手の獲得は、パリFCの株主でもあるレッドブル・グループの意向によるものとみられる。

 過去にはトリノFCの買収が噂されたものの、実現には至らなかった。



 しかし、その構想はなお強固であり、イタリアサッカーは戦略的市場と位置づけられている。

 レッドブル・グループのグローバルサッカー部門を統括するユルゲン・クロップは、この新たな領域を開拓すべくイタリア人選手に着目し、オーストリア企業の広範なネットワークにイタリアのクラブを組み込もうとしているという。

 現時点で具体的なクラブ名は挙がっていないが、イタリアのクラブに対する関心は依然として高い。

 パリFCの今季のリーグ・アン最終節は、PSGとの対戦だ。

 現時点で両クラブがライバル関係にあるとは言い難いが、今後パリFCがフランスを代表するクラブへと成長すれば、この二者が新たなライバル史を築いていくことは間違いないだろう。

(文:佐藤徳和)

【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru

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【了】

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