そのゴールは、ただのJ1初得点ではなかった。東京ヴェルディの寺沼星文が「ヴェルディで決めたかった」と語った一撃には、移籍の決断、苦しんだ日々、そしてようやくつかんだ手応えが凝縮されている。千葉戦で生まれた“らしいゴール”の裏にあった、彼の現在地と覚悟を追う。(取材・文:白谷遼)[2/2ページ]
色々なものを乗り越えてヒーローに「きつい練習をしてきたので」
そして迎えたホームでの千葉戦。出場停止の染野に代わって今季初先発となったヴェルディの背番号45は、先発抜擢にゴールという結果で応え、チームを勝利に導いた。
千葉戦前週のトレーニングから、寺沼には明確な「手応え」があったという。紅白戦でゴールを重ね、自身を表現する準備は整っていた。
城福監督からも「寺沼を中心にゲームを進める」という戦術的な信頼を得てピッチに立ったこの一戦。寺沼が最も自信を持つ空中戦の強さを前面に押し出し、チームメイトから長いボールが供給される。
「自分の色を出す」という強い意志を持って臨んだ87分間は、彼のキャリアにおける一つの転換点となったはずだ。
試合後、ミックスゾーンに現れた勝利の立役者はヴェルディ加入後初ゴールのよろこびを噛みしめた。
「ヴェルディに来てから、すごくきつい時期が続いた。今日は上(スタンド)にいるメンバーやベンチにいるメンバーとは、きつい練習をしてきたので、みんなと自分のゴールを分かち合いたい」
また、苦しいときも自身を支え続けた森下コーチへ「本当にありがとうございます」と感謝の言葉を伝えたという。
ヴェルディの闘将、城福監督は「もっともっと、やれることを増やしてほしいという思いはあります。ただ、J1でも彼がやれることはあると思っている」とさらなる飛躍を期待している。
千葉戦での泥臭い得点は、彼にとって単なる1ゴールではない。苦しい日々を乗り越え、チームの中心で輝くための、確かな「序章」だ。
水戸からヴェルディへ移籍し、悩み、そして這い上がった男が、緑のユニフォームをまとい、覚醒しようとしている。
東京ヴェルディの背番号45が描く物語は、これからの戦いの中で刻まれていくはずだ。
(取材・文:白谷遼)
【著者プロフィール:白谷遼】
昨年度まで縄手猟名義で活動。サッカー専門媒体『エル・ゴラッソ』で東京ヴェルディを担当。これまで日本代表、Jリーグ、大学・高校サッカーなど、プロアマ問わず幅広く取材している。小学生の頃に見たパク・チソン、イ・ヨンピョの活躍に感銘を受けて韓国サッカーにハマった埼玉県民。韓国サッカーに深い造詣があり、興味の守備範囲は広い。
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