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コラム 7時間前

“次のコモ”になるのか。ヴェネツィアFCが描く壮大な成長戦略、新スタジアムと女性会長の野望【コラム】

ヴェネツィアFC
セリエB優勝とセリエA昇格を成し遂げたヴェネツィアFC【写真:Getty Images】



 ヴェネツィアFCは、ただセリエAへ戻ってきたわけではない。新スタジアム建設、女性会長の就任、若手育成、そしてクラブの長期戦略――。“水の都”のクラブは今、コモ1907にも通じる野心的プロジェクトを進めている。2年ぶりのセリエA復帰を果たしたヴェネツィアFCは、なぜ“次の主役”になり得るのか。その裏側を追った。(文:佐藤徳和)[2/2ページ]

女性会長の正体とは?

 そしてもう一つこのクラブの注目すべき点は、5月にダンカン・ニーダーアウアーから、女性のアメリカ人、フランチェスカ・ボディに会長職が引き渡されたことだ。

 エンポリFCには女性の副会長レベッカ・コルシがいるが、セリエAでは、ASローマの会長を2011年まで務めたロゼッラ・センシ以来の女性会長の誕生となる。

 1985年、イタリアのコモ出身で、元NHLプレーヤーのトロイ・ボディを夫に持つフランチェスカは、スポーツ・エンターテインメント施設の設計・運営を手掛ける世界有数の企業『オーク・ヴュー・グループ』の最高執行責任者(COO)を務めていた。数々のスポーツ施設のプロジェクトに携わり、NHLのニューヨーク・アイランダースの本拠地であるUBSアリーナにも関わった人物だ。

 チームがセリエA復帰を祝う一方で、オーナー陣と経営陣はすでに未来へ向けた計画を進めている。その目標は極めて明確だ。

 チームをセリエAに定着させ、将来的にはヨーロッパの舞台へ導くことである。すでにチームには若く将来を嘱望されている選手も多い。

 22歳のイッサ・ドウンビアは、その筆頭株だ。


あのレコバが覚醒したシーズンのように…

 コートジボワールにルーツを持つイタリア人で、アルビーノレッフェを経て、2024年夏からヴェネツィアFCでプレーし、24/25シーズンのセリエAでは24試合に出場。U21イタリア代表でも3試合のキャップ数を持つ。セリエBのこの1年でさらにレベルアップし、評価を高め、ユヴェントスやポルトガルの名門スポルティングCPが触手を伸ばしているという。

 また、アンドレーア・アドランテは、26歳と若くはないが、17得点をマークして得点王争いの2位でフィニッシュ。『DAZN ITALIA』のジャーナリスト陣によって、今季のセリエB MVPに選出されている。

 パルマ・カルチョの下部組織出身で、20/21シーズンには、トップチームでセリエA出場も経験。それからセリエC、セリエBと渡り歩き、24/25シーズンもセリエBのユーヴェ・スタビアで、得点ランキング4位となる15得点を記録している。

 満を持して再び挑むセリエAでさらなる飛躍を遂げることができるのか、注目だ。

 こういった選手たちが、チームに残り、さらに補強が行われれば、ヴェネツィアFCは来季のセリエAで残留以上の目標を視野に入れることもできるだろう。

 彼らが、セリエAで残留を遂げたのは、11位と躍進した1998/99シーズンまで遡らなければならない。そう、あのアルバロ・レコバが、1999年1月から半年間在籍し、覚醒したシーズンである。

 安定してセリエAに留まることができれば、やがては今季、台風の目となったコモ1907のような存在となるポテンシャルを秘めている。

 中世の時代「アドリア海の女王」の異名を持ち、地中海貿易で繁栄を極めた海洋都市国、ヴェネツィアのようにクラブが謳歌する時を迎えるはずだ。

(文:佐藤徳和)

【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru

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【了】

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