
3大会連続でW杯出場を逃しているイタリア代表【写真:Getty Images】
イタリアに異変が起きている。かつて同国の人気スポーツと言えばサッカーが圧倒的だったが、代表チームが3大会連続でFIFAワールドカップ(W杯)出場を逃すなど、弱体化している影響もあり、その人気に陰りが見え始めている。そんな中、いま国民の関心は、テニス一色だ。カルチョは、このまま忘れ去られてしまうのだろうか。(文:佐藤徳和)[2/2ページ]
子供たちが強いものに惹かれるのは当然
イタリア・テニス・パデル連盟(FITP)の売上も、驚異的な伸びを見せており、2020年には、4700万ユーロ(約86.9億円)であったが、2025年には、イタリア・サッカー連盟(FIGC)の売上、2億ユーロ(約370億円)を追い抜き、2億3000万ユーロ(約425億円)を記録している。もはや、テニス人気は天井知らずだ。
イタリアのテニス界は今、絶頂期を迎えている。世界ランキング(5月18日現在)には、1位に君臨するシンネルのほかにも、11位にはロレンツォ・ムゼッティ、12位フラヴィオ・コボッリ、16位ルチャーノ・ダルデーリと20位以内に4選手も擁している。いずれも24歳と若く、これからもしばらくは“イタリアの時代”が継続していくはずだ。
イタリアのテニス人気の兆候は、シンネルがブレイクする前からあった。マッテオ・ベレッティーニが2021年には、イタリア人としてウィンブルドンで初の決勝進出を果たしている。
テニスの競技人口(連盟登録者数)は、2000年には12万9000人でしかなかったが、2025年には126万人へと急増。現在約150万人のカルチョの競技人口に迫る猛烈な勢いである。
子どもたちが強い者に惹かれるのは当然だ。イタリアの子どもたちの多くが、3大会連続でW杯本大会出場を逃したアッズーリに背を向け、時代の寵児となっているシンネルに憧憬を抱いている。
スタジアムでは汚い野次が飛び交い、暴力的で、お金にまつわるダーティーな話題が絶えないカルチョに嫌悪を抱く人たちも少なくない。
黄金時代を迎えているのはテニスだけではない。F1にはイタリア待望のニュースターが誕生した。ボローニャ生まれの19歳、アンドレア・キミ・アントネッリだ。
中国GPでは、史上2番目の若さで優勝。またイタリア人としてのF1優勝は、2006年のジャンカルロ・フィジケッラ以来、20年ぶりの武勲となった。
さらに勢いは止まらず、初優勝から3連勝。長いF1の歴史において、伝説的ドライバーですら成し遂げられなかった記録である。これから、この若者も、カルチョ人気を脅かす存在となることは間違いないだろう。
(文:佐藤徳和)
【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru
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