サッカー日本代表の中村敬斗【写真:田中伸弥】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)に臨むサッカー日本代表は5月31日、W杯前最後の実戦となるアイスランド代表との壮行試合に1-0で勝利した。負傷のためW杯メンバーから外れた三笘薫、南野拓実を欠く中、中村敬斗は前半を左ウイングバック、後半は左シャドーでプレー。得点こそなかったものの、攻撃の起点として存在感を示し、W杯本番へ向けた新たな攻撃の形を感じさせた。
三笘薫不在の左サイドで見せた新たな可能性
森保ジャパンにとって、アイスランド戦は単なる壮行試合ではなかった。
前日の会見で森保一監督は、「W杯に向けて、チーム全体のコンディションを上げていくことを狙いのひとつに考えています」とし、怪我明けの遠藤航や板倉滉、冨安健洋ら、これまで出場時間の短かった選手を起用しつつも、勝利にこだわる姿勢を示していた。
そして、FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)開幕を目前に控える中、負傷離脱した三笘薫や南野拓実ら主力たちの穴をどう埋めるのか。新たな起用方法を模索する場でもあった。
その中で存在感を放ったのは中村敬斗だろう。
前半は左ウイングバック、後半は左シャドー。ポジションを変えながらも攻撃の中心としてボールを引き出し、何度もチャンスに絡んだ。
開始早々には久保建英との連係からゴール前へ進入。ゴールにはならなかったものの、アイスランドの引いて堅く守る5バックを崩す場面を何度も生み出した。
中村自身も手応えを口にする。
「これだけ引いた相手に対して崩したシーンもあったので、プラスじゃないですか。最後の質のところだけだったので。あんまりここで絶好調というよりかはまだ本番まで時間があるので、そこにピークを持っていけたらいいかなと思います」
特に印象的だったのは、左シャドーで先発した伊東純也との関係性だった。
中村が所属するスタッド・ランスでもともとプレーしてきた2人は、距離感良く立ち位置を変えながらパス&ゴーを繰り返し、相手守備陣を揺さぶった。
「伊東選手とはランスで連係しているので、連係の部分はすごく良かったと思いますし、何回も崩したシーンがあった。お互いコンディションという部分ではもっともっと上げていくことが必要ですけど、フィーリングとしては良かったのかなというふうに思います」
実際、隣り合う選手とのポジションチェンジを交えながら、日本は左サイドで幾度もチャンスを創出した。
前半のアディショナルタイムには、伊東と久保建英が左サイドへ流れて絡み、中村がクロスを供給。ゴール前で反応した冨安のボレーシュートはGKに阻まれたものの、日本が狙いとしていた形だった。
中村も「あの場面は完全に崩せていた」と自信をのぞかせた。
後半に向けては、さらにシャドー同士の流動性を高めることも共有していたという。
「自分のやるべきことは変わらない」

国内合宿で汗を流す中村敬斗【写真:編集部】
「相手が5バックを敷いていると、シャドーのレーンを越えて数的優位を作らないと難しい場面が多い。後半に入るときは久保選手と、(レーンを越えて)連係していこうと話していました」
得点には結び付かなかったものの、相手守備を動かしながら崩していく形は、本大会へ向けた収穫のひとつだった。
W杯では、ここまで左サイドの攻撃を支えてきた三笘薫と南野拓実を揃って欠くことになる。左サイド攻撃で鍵を握る中村は国内合宿でこんなことを語ってもいた。
「今年はどちらかが毎回いたので、両方いないのは初めて。シャドーとは良い関係性を築くのが大事だと思っています。僕がシャドーの可能性もありますけど、自分が出たポジションで近いポジションの選手とは良い形で崩せたらいいなと思います。自分のやるべきことは変わらない」
森保監督が前日会見で「誰が出ても勝つことを目的・目標に考えていきたい」と話していたように、この試合においても、中村は自身のやるべきことを遂行した。
自身に求められる役割についても明確だ。
「アシスト、起点だったり、ゴールに繋がるプレーで助けられたらいいなと。それだけです。ただ、その前にチームの土台であるハードワークや守備をしっかりやって、自分の色を出せたらいいかなと思います」
スタッド・ランスで14得点を記録した25歳は、この日、得点やアシストこそなかったものの、左ウイングバックと左シャドーの両方で機能し、周囲と連係しながら攻撃を活性化させた。
三笘・南野不在という不安材料を抱える日本代表にとって、中村が見せた柔軟性と存在感は大きな収穫だったと言えるだろう。
W杯開幕まで残された時間はわずかだ。だが、アイスランド戦の90分は、中村が森保ジャパンの左サイドに新たな可能性をもたらしたことを示す時間でもあった。
(取材・文:竹中愛美)
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