3か月に及んだリハビリ生活を乗り越え、ようやく戦列に戻ってきた。ガンバ大阪の佐々木翔悟は、東京ヴェルディ戦でJ1初ゴールを記録。しかし本人が何より喜んだのは得点ではなく、無失点で前半を終えられたことだった。AFCチャンピオンズリーグ(ACL2)決勝に間に合わなかった悔しさを胸に刻みながら迎えた復帰戦。左利きCBの反撃が、ここから始まる。(取材・文:高村美砂)
「何よりも嬉しい」佐々木翔悟の記念すべきゴール
J1百年構想リーグ・プレーオフラウンド第1戦、ホームでの東京ヴェルディ戦を終え、取材エリアに現れた佐々木翔悟のバッグからは、おさまり切らない記念すべきJ1初ゴールを決めた記念ボールが顔を出していた。
そのボールを叩きながら背後を通り過ぎた一森純が「これで家でも自主練できるな!」と声を掛ける。また、一足早く取材エリアを後にした福岡将太も「翔悟のゴールが何よりも嬉しい」と表情を緩ませた。
「2月15日の名古屋グランパス戦(J1百年構想リーグ第2節)でともにケガをしてしまってからずっと翔悟とはリハビリ仲間だったから。同じポジションでライバルでもあるけど、可愛い後輩ですしね。彼が今日、ゴールを決めた姿はめちゃめちゃ嬉しかったですし、復帰を目指す僕自身にとっても大きなモチベーションになりました。
僕自身はまだ部分合流をした段階なので今シーズンの公式戦復帰は厳しそうだし、再発でもしたら戻るのに時間がかかる年齢だということへの自覚もあるので。しっかりと最後まで焦らずに自分の体と相談しながらやっていこうと思っていますけど、翔悟の今日の姿は、また勇気を持って前に進んでいく上での力に変わりそうです。
僕らがいるスタンドの方を見てガッツポーズしてくれたのも嬉しかった!」(福岡)
一森も、福岡も、佐々木にとっては今シーズンの序盤から続いた長いリハビリ生活を共にしてきた仲間だ。
それに対して佐々木も、初ゴールの喜びを口にした上で、記念ボールの意外な使い方を教えてくれた。
「マジで、ヤバいなと思うくらい…」
「ようやく決められたのは良かったですけど、それ以上に自分の出ていた前半をゼロに抑えられた方が嬉しいです。個人的には復帰戦ということもあり、また、練習試合もしていない状況だったので、最初から45分の出場と決まっていましたが、その中でとにかく失点しないように、ということを第一に考えていました。
今シーズンのリーグ戦は少し失点も多かった中で、ホーム最終戦をなんとかゼロで締めくくりたいと思っていました。(前半に関しては)そこが達成できてホッとしています。ゴールはおまけです。ギン(池谷銀姿郎)がしっかり折り返してくれました。
もらった記念ボールは…愛犬のオモチャにします(笑)。家には犬が遊ぶ用のおもちゃボールはあるんですけど、せっかくだから本物のボールで贅沢に遊ばせて…というか一緒に遊ぼうと思います」
とはいえ、彼にとっては、約3ヶ月ぶりの公式戦ということもあってだろう。自身のプレーについては「ぜんぜんダメ。試合勘も全くなかった」とも続けた。
「マジで、ヤバいなと思うくらい試合勘がなくて、全然ダメでした。キックもほとんどミスばっかで、全然ダメ。頭で考えている通りに体が動かないところもたくさんあったし、練習でもフルピッチではやっていなかったからこそ、今日もピッチがすごく広く感じたし、強度のところも公式戦になると全然違うなと思いながらプレーしていました。
ただ、今シーズンのうちに1つ公式戦に出るという段階は踏めたので。ここから時間を伸ばしていければ、って感じですけど、あと1試合でシーズンが終わっちゃいますからね。コンディションもようやく上がってきて、試合にも出られたのに、またオフに入ってしまうのが残念です。
こればっかりは仕方がないので、まずは次の試合もしっかり戦った上で、来シーズンに向けた準備をするしかないと思っています」
間に合わなかったACL2決勝。そこで得た刺激とは
イェンス・ヴィッシング新監督のもとで始まった今シーズン。ガンバに加入して2年目を迎えた佐々木は、公式戦2試合目となったAFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)2025/26で先発に抜擢。安定したパフォーマンスを示すと、続くJ1百年構想リーグ第2節・名古屋戦でも先発のピッチに立った。
序盤から中谷進之介、三浦弦太、福岡、横井佑弥らと、熾烈なセンターバック争いを繰り広げてきた中で、この時点で2試合以上続けて公式戦に出場していたのは中谷と佐々木のみ。チームで唯一の左利きセンターバックとして、また抜群の精度を誇るキックを武器に、ポジション争いで一歩前に出るかと思われたが、67分に足の違和感を訴えピッチを後に。右ハムストリング肉離れと診断され、戦線離脱を余儀なくされた。
以来、「ケガをしない体づくり」を意識しながら、リハビリと向き合うだけではなく筋トレ等にも取り組みながら戦列復帰を目指してきた。
チームへの全体合流は5月上旬。その中では、目前に控えた5月16日のACL2決勝、アル・ナスル戦へのメンバー入りを懸命に目指したが、それは叶わなかった。
「順調にリハビリが進んできた中で、なんとかACL2に間に合わせたいという一心で、トレーナーにも相談し、本当はもうちょっと時間をかけてやった方がいいかもな、っていうリハビリも最短で取り組んで、予定より少し早めに復帰させてもらったりもしたんですけど、無理でしたね。そんなに甘くなかったです。
なので、チームの優勝についても…嬉しくはあるんですけど、正直、優勝した実感もないし、その力になれなかった自分への悔しさしかないです。
ただ、決勝でのシンくん(中谷)、弦太くん(三浦)のパフォーマンスには刺激をもらったというか。厳しい連戦を最後まで戦い抜いた二人の姿を見ながら、自分ももっと試合に出たいな、という気持ちを大きくさせてもらいました。なので、あとは自分もやれるぞ、ってところを示すだけだと思っています」
その決意も胸に臨んでいたヴェルディ戦。ホームサポーターの歓声のもと、J1初ゴールの瞬間を祝福するチームメイトにもみくちゃにされながら噛み締めた喜びは、再び彼の体を駆け抜けたであろうピッチだからこそ味わえる興奮は、きっと佐々木にとって、ここからの反撃の狼煙になる。
(取材・文:高村美砂)
【著者プロフィール:高村美砂】
雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。
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