
サッカー日本代表の吉田麻也【写真:編集部】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)を目前に控えた日本代表が、モンテレイで調整を進めている。環境への順応と暑熱対策という明確な狙いを持った合宿だが、その過程でベテラン選手の存在があらためて注目されている。順調とは言い切れない準備の中で、経験豊富な選手たちの役割が大きな意味を持ち始めている。(取材・文:元川悦子)[2/2ページ]
「泣きながら話しているのを見て…」

カタール大会でスペイン代表から歴史的勝利を挙げたサッカー日本代表【写真:編集部】
とりわけ、第2戦のコスタリカ代表戦に敗れた後、第3戦のスペイン代表戦で逆転突破を目指すべく、行われた選手ミーティングで「俺たちはここで終わるようなチームじゃない」と川島が涙ながらに発言したことは、多くの選手たちの心に響いた。
「自分は永嗣さんの隣にいましたけど、泣きながら話しているのを見て、グッときました。自分たちはやらなきゃダメなんだと湧き上がるものを感じました」と前田大然も神妙な面持ちで話したが、これがスペイン代表戦での「三笘(薫)の1ミリ」と歴史的逆転勝利につながったと言われている。
こうした成功例とは対照的に、ベテランが不在だった大会は惨敗している。その象徴が2006年ドイツ大会と、2014年ブラジル大会の2大会だ。
前者では、中田英寿の良き相談役として支えていた三浦淳宏らが落選。後者でも主力から信頼を寄せられていた中村憲剛らが選外となり、初戦での敗戦後に立て直すことができなかった。
第2次森保ジャパンに目を向けても、2024年1〜2月のアジアカップで日本はベテラン不在で敗退を喫している。
同大会もイラン代表、イラク代表に敗れ、まさかのベスト8止まりに終わったが、キャプテンの遠藤航、年長者となった板倉滉、冨安健洋らだけでは悪い流れを払拭しきれなかった。
最終局面で求められるベテランの力

サッカー日本代表の長友佑都【写真:Getty Images】
この経験を通して、森保監督も「ベテランは必要不可欠」という考えに至ったのだろう。次の2024年3月シリーズから長友を呼び戻したのが、まさにその思いを如実に表している。
実際、長友が合流してからの日本は再び上昇気流に乗り、最終予選はかつてないほどの強さを見せつけた。
その長友がW杯メンバーに入るのは当然のなりゆきだ。そこに加えて吉田を再合流させたのは、モンテレイ入りしてから「何かが足りない」と感じたからではないか。
確かに、遠藤が全体練習に合流できず、キャプテン不在というのはチームにとってマイナス要素が大きい。そこで前キャプテンの吉田が引き締まった空気を作ってくれれば、チームはいい方向に行きそうだ。
レジェンドコーチたちがズラリと並んでいたとしても、やはり現役のベテラン選手は他のメンバーにとって身近な存在。ピッチ内外でさまざまなことを相談できる点も、大きな強みと言える。
そんな長友と吉田の2人がフル稼働して、オランダ代表戦までに最高の状態を作り上げることができれば理想的である。
一部では批判的な声もあるようだが、大会後に「やっぱりベテランの力は必要だった」と言われるような好結果を強く求めたいものである。
(取材・文:元川悦子)
【著者プロフィール:元川悦子】
1967年、長野県生まれ。94年からサッカー取材に携わり、ワールドカップは94年アメリカ大会から2022年カタール大会まで8回連続で現地に赴いた。「足で稼ぐ取材」がモットーで、日本代表は練習からコンスタントに追っている。著書に『U-22』(小学館)、『黄金世代』(スキージャーナル)、「いじらない育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(NHK出版)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)などがある。
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