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「全てはジーコから始まった」元監督も驚く日本代表の成長と進化。上田綺世は移籍市場で人気者になる【北中米W杯コラム】

チュニジア代表に勝利した日本代表
チュニジア代表に勝利した日本代表【写真:Getty Images】



 日本代表が、またしても世界に強烈な印象を残した。FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)グループステージ第2戦でチュニジア代表に4-0と完勝。2006年大会から勝てていなかった“第2戦の壁”を突破しただけでなく、アジア勢としてW杯史上初となる1試合4得点も記録した。イタリアのメディアやレジェンドたちは、この勝利をどう見たのか。元日本代表監督パウロ・ロベルト・ファルカンの言葉も交えながら、サムライブルーへの評価を読み解く。(文:佐藤徳和)[2/2ページ]

「全員で守り、全員で攻撃する」

ファルカン
元日本代表監督のファルカンは日本代表の成長ぶりを語る【写真:Getty Images】



 アントネッリが「ボールを失った時のプレッシングも素晴らしい。ボールを奪われると、すぐさま相手にプレスを掛けてくる」と言及すると、グラツィアーニと同じく1982年スペイン大会優勝メンバーのマルコ・タルデッリも日本の強さを分析した。

「そこが重要な点だ。彼らは全員で守り、全員で攻撃することに非常に長けている。相手に決定機が訪れた場面でも、ペナルティエリア内外を含めて、10人で守っていた。本当に驚異的なシーンだった。これこそ多くのチームが求めることだ。彼らは本当にグループの力で戦っている。フオリクラッセ(スーパースター)はいないかもしれないが、非常に素晴らしい選手が揃っている」

 日本を褒め称えたタルデッリは、1982年のW杯スペイン大会決勝の西ドイツ戦で決勝ゴールを決めた、イタリアの英雄の一人だ。

 ゴール後の咆哮は、イタリア代表のシンボリックな一つとして、今なお語り継がれる。そんなレジェンドからも惜しみない賛辞が送られた。

 そして、ローマにスクデットをもたらし、日本代表元監督のパウロ・ロベルト・ファルカンは、「どれほど日本代表はあなたが監督を務めた時から成長したのか」とのアントネッリの問いに対して、こう答えた。

「とても、とても成長した。彼らは、戦術的な組織づくりに問題を抱えていた。明確な考えもなく、攻撃をしていた。

 その後、全てはジーコから始まった。まず選手として日本でプレーし、その後は監督として日本代表を指揮した。今の日本代表を見ると、もはやかつての日本代表ではない。まるで別のチームを見ているようだ。それほどまでに成長した」

 ファルカンは1994年広島アジア大会で日本代表を率いたものの、準々決勝で韓国代表に敗れたために、解任された。

 ただ、小倉隆史や前園真聖、岩本輝雄ら多くの若手有望株を代表に抜擢し、新時代の扉を開いた指揮官でもあった。

 さらに、アントネッリは、元日本代表指揮官であったイタリア人監督の名前も挙げ、「今の日本があるのは、アルベルト・ザッケローニのおかげでもある。彼に拍手を送ろう。ザックはアジアカップを制した」と話し、ゲストと収録観覧者を含めスタジオ全体が拍手に包まれた。

謙虚さと献身性への評価


ロッカールームを清掃してスタジアムを去る姿は今や当たり前に【写真:Getty Images】



 日本代表への称賛は終わらない。

 アントネッリが、SNSで話題になっている動画、森保一監督がイングランド代表FWハリー・ケインとのセルフィーについて触れ、観客席を掃除するファンやロッカールームを綺麗にする選手たちといった、日本の教育が素晴らしいと評した。

 ロッカールームを綺麗にする日本代表選手の習慣については、ザッケローニもかつて、『Rai』の人気番組『Che tempo che fa』にゲスト出演し、「驚かされる行為だった」と語っており、その行為は今では、世界の多くの国でも紹介されている。

 ジャーナリストのフェデリーコ・ルッフォは、ケインとのセルフィーを終えた後に、満面の笑顔を浮かべる森保監督についてこう話した。

「この動画が、日本人がどれほど謙虚であることを物語っている。おそらく、これこそが我々イタリア人に欠けているものだ。そして、この謙虚さは、プレーにも表れている。チームはコンパクトで、10人で動き、10人で戻る。さらに、全員が驚くほどで、信じられないようなテクニックを備えている。

 それからちょっと指摘したいのは、今見たゴールで日本は2試合で3点目となるヘディングでのゴールを決めている。平均身長は恐らく1メートル68ぐらいしかないのに。これもまた彼らがどれほど組織されていて、どれほど優れているかを物語っている。

 しかも、前の試合では、オランダ相手に2得点している。オランダは、ペナルティエリアの中で、簡単にやられるような相手では決してない。だからこそ、こうしたすべてが『謙虚さの物語』を物語っている。本当に彼らからは学ぶことがたくさんある」

 すでにお気づきであると思われるが、この評価にはいくつか事実誤認が含まれている。

 欧米では日本人は小柄というイメージが先行しがちだが、現在の代表チームは必ずしもその限りではない。

 W杯出場48か国中36位と平均身長自体は高くはないものの、8度目の出場となる今大会では、初めて平均身長が1メートル80を超え、かつての日本代表と比べて着実な大型化が進んでいる。

 また、ヘディングによる得点はオランダ戦とチュニジア戦で、それぞれ1得点だ。

 それだけ、体格で劣る日本が長身揃いのオランダを相手に見せた粘りと競り合いの強さを見せ、より強い印象として受け止められた可能性がある。

 謙虚さ、献身性、そしてクリーンな戦いぶりも日本の特徴だろう。

 2試合を終えた時点で、レッドカードはもちろん、イエローカードも1枚も受けていない。監督にとっては、いかに計算の立つチームであるかが分かる数字だ。

 一方で、警告の少なさは時として「戦っていない」と映ることもある。

 例えば、2014年ブラジル大会のグループステージ第2戦、ギリシャと0-0で引き分けた試合では、ギリシャが4枚のイエローカード(うち1人は2枚目の警告で退場)を受けたのに対し、日本には警告者が一人もいなかった。

 その姿勢が、一部では闘争心に欠けると受け取られたこともあった。

 しかし、日本人の特性は、内に熱い闘志を秘めながらも、常に冷静さを失わずに戦える点にある。日本人にとっては当たり前の価値観かもしれないが、欧米人から見れば決して当然なものではない。

 感情に流されることなく、最後の最後まで諦めずに戦い続ける。その姿にイタリア人だけでなく多くの欧米人が感銘を受けているのは、日本人が持つ独特の精神文化に理由があるのかもしれない。

移籍市場を動かすサムライブルー

日本代表FW上田綺世
上田綺世は移籍市場で人気銘柄に?【写真:Getty Images】



 番組内では、移籍市場に詳しいニコロー・スキーラが、上田の市場価値と移籍の可能性に触れた。

「今なら少なくとも3000万ユーロの価値はあるだろう。というのも、W杯が始まる前の時点で、すでにプレミアリーグのクラブが獲得に向けて接触していたからだ。そして今大会での活躍もあり、当然ながら関心はさらに高まることになるだろう」

 さらに「日本人記者たちが、イタリアのクラブの可能性についても話していた。例えばミランだ。現在クラブは再編を進めているところだが、マッシモ・カルヴェッリCEO(代表取締役)とルベン・アモリム新監督が、補強候補となる選手のプロフィールを選定していくことになる」と語っている。

 さらに、スタッド・ランスでプレーする中村敬斗についても触れた。

「ローマは、攻撃的な両サイドのウィンガーを探しており、その中で中村の獲得を検討している」

 そして、こう続けている。

「この日本代表は、本当にタレントが多い。誰かが、セリエAでプレーすることになるかもしれない。中田英寿がプレーした時代のように」

 日本代表でプレーする選手がセリエAに移籍する可能性についても語っている。

 サムライブルーが勝ち進むにつれ、移籍市場を賑わすニュースが相次ぐことは間違いないだろう。

 今後、これまで想定されていなかったようなビッグクラブが、日本人選手の獲得に関心を示しているという報道が出てくる可能性もある。

 だが、選手たちの関心は、あくまで“世界制覇”でしかない。まだ、彼らは何も勝ち取っていない。

 本当の戦いはこれからはじまる。

(文:佐藤徳和)

【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru

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【了】

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