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現地で見た日本代表。ブラジル戦の真の姿。W杯優勝への形ははっきりしていない。次の4年間で積み上げるべきもの【現役分析官の着眼点】

シリーズ:現役分析官の着眼点 text by 宮下白斗 photo by Getty Images

日本代表
ブラジル代表に敗れた日本代表【写真:Getty Images】



 日本代表は、優勝5回を誇るブラジル代表を相手にあと一歩まで迫った。前半は5-4-1のローブロックで相手の攻撃を受け止め、佐野海舟のゴールで先制。しかし後半、カルロ・アンチェロッティ監督の修正によって流れは一変し、終了間際の逆転弾で夢は潰えた。日本は何を出し尽くし、何が足りなかったのか。現地ヒューストンで見た光景と試合映像の分析から、ブラジル戦の意味と次回大会へ向けた課題を考える。(文:宮下白斗)[2/2ページ]

ブラジル戦の最大出力は…


日本代表は全力を出し尽くしていた【写真:Getty Images】



 これまでの相手の中で最も優れた攻撃を行ったこの試合後半のブラジルを相手に、苦しい状況を脱せなかったのはある種必然的であった。

 中村、前田ら攻撃陣の主力を先発に並べたために、彼らが疲労した後半に攻め手を失ったとも言える。

 ただし、彼らのスタメン起用の結果として前半リードを奪い、途中から菅原、鈴木らで守備を固めて先行逃げ切りのプランを半分描けていたことも確かであるし、一概に選手起用が失敗だったと言うことはできないだろう。

 シャドーに怪我人が続出した上、スウェーデン戦のような一進一退の試合で鈴木唯人、後藤、塩貝といった選手たちが出場機会を得られず、この試合後半の選択肢となりづらかったことは痛かった。

 ただし、それらがあってのブラジル戦である以上、この試合の最大出力は限定的なものとならざるを得なかった。

 だからこそ、この試合単体で見た時には、日本代表は持っていた全てを出し尽くしていたと思うのだ。

 統率された守備ブロックで相手の攻撃を抑え込み、カウンターやセットプレー、ビハインドでは積極的な選手交代を絡めて得点を狙う。

 この日本代表が強豪相手に選んできた戦い方で前半は狙い通りに戦うことができた。

 次の大会への道筋を示す意義ある試合であったことは間違いない。

次の4年間に求められるもの


75分 自陣から押し返す機会を得るが、伊東の位置が低くプレスに出られない



 日本代表がもう一歩先に進むために、ブラジル戦から得られる教訓は何か。

 これからの4年間を担う日本代表に求められる戦術面の重要事項は、守り方のアップデートだ。

 ローブロックの守備もオランダやブラジルを倒すには必要だが、それを軸とする戦い方で自ら試合の流れ、主導権を手繰り寄せることは難しい。

 ペナルティエリアがすぐそこに迫る位置まで下がって守り続けていては、日本は決勝トーナメントで勝ち進めないだろう。

 劣勢を脱し2点目を取るためには、ブロックからプレスに移行して相手を押し返し、敵陣で守備ができるようにならなければならない。

 今大会の日本に欠けていたのは、5-4-1状態から前へ、ローブロックからミドルブロック・ハイプレスへと押し返すための仕組みだった。

 例えばこの75分の場面では、大会を通して見られた「逆サイドのシャドーの位置の低さ」がよく現れている。

 ボールがある左サイドでブラジルにバックパスをさせ、シャドーの前田がパスを受けたダニーロに素早く寄せる。

 ダニーロはさらにマルキーニョスへと下げ、上田が呼応しプレッシャーに行く。

 しかし伊東は低い位置にいて二人に連動できなかったためガブリエルには圧がかからず、ブラジルに回避されてしまう。

 前田と上田のプレスによって得たブラジルを後退させる機会を逃してしまったのだ。

 5-4-1の状態から前に出るには、逆サイドのシャドーがあらかじめ少し高く位置し、味方のボランチとのギャップ、相手SBを気にしつつも相手のCBを狙える距離にいないといけない。

 パスが出される前からプレスに行く構えを見せ、相手に楽にサイドを変えさせないことでプレスに移行するためだ。

 20分の場面ではこれができている。

能動的な守備へ


20分 ローブロックから前へ出て左サイドでボールを奪う。逆サイドの伊東が良い位置を取っていた



 前の場面と同じく日本の左サイドでダニーロに対し前田が寄せた時に、この場面では逆サイドの伊東が前へ出て、ガブリエルへのパスを牽制している。

 ダニーロから受けたマルキーニョスは、伊東がいるためガブリエルへ渡してサイドを変えることをためらい、もう一度ダニーロへボールを戻す。

 ダニーロに対して既に近い距離にいる前田が強く圧をかけ、合わせて中村が一列前へジャンプ。ギマラインスへ寄せてマイボールのスローインを獲得した。

 逆サイドのシャドーの立ち位置が良く相手CBを狙えていれば、相手はサイドを変えずに同サイドにボールを返すのでプレッシャーがかかりやすくなる。

 それでも相手が狙われているCBにパスを出したり、バックパスを選択すれば、一気にプレスをかけて陣地を押し返すことができる。

 ただ、このような優れた連動で5-4-1ブロックからプレスに出る場面はブラジル戦ではこの一度のみしかなく、オランダ戦でも非常に少なかった。

 ほとんどの場面ではプレスに出る機会を逃しており、それが5-4-1の状態で守り続ける展開につながった。

 前述の通り今大会は自陣で引いて守ることを受け入れており、プレスをかける試み自体が少なかった。

 ライン間へのパスコースの管理、アンカーの選手のケアなど、相手の前進を確実に防ぐことが優先されており、確かにどの相手も日本のブロックに苦戦していた。

 だが、それでも長時間続けると失点をゼロに抑えるのは至難の業であることが今大会の結果を見てもわかる。

 ブラジル相手にはギリギリまで粘ったものの2失点、オランダ戦の2失点目もブロックを崩されている。

 相手の攻撃を受け止めるだけではなく、自分たちが前へ出てボールを奪いに行き、その能動性によって自ら試合の流れを変える。

 ローブロックで相手の攻勢を凌ぎチャンスをうかがう守備から、ブロックの位置を上げてプレスをかけ、高い位置で奪う守備へ。

 このアプローチの転換は、次のW杯に向けて間違いなく必要になる。

 ブラジル戦、日本は今大会採用した堅い守備ブロックを軸としたプランの持つ力を最大限引き出して戦ったと思う。

 優勝に手の届くチームがどんな形をしているか。北中米大会を終えた今の時点でそれをはっきり描くことはまだできない。

 しかし、そのステージに到達するまでの階段をもう一段、二段登るために、より能動的に守り、相手の強みを受け止めるだけでなく自分たちの強みで上回ることは必須条件だろう。

 日本がW杯で優勝するために。

 筆者もこの日ヒューストンで目にしたものを糧にし、この舞台を目指して自らの置かれた環境で日々努力を重ねたい。

(文:宮下白斗)

【著者プロフィール:宮下 白斗】
2006年4月26日、大阪府生まれ。13歳から試合分析ブログを書き始め、高校入学と同時にスクールコーチとして福山シティFCに加入。その後2年間トップチームコーチを担当した。高校卒業後ウェールズのサウスウェールズ大学のフットボールコーチング学部に入学し、現在は現地のアカデミーで分析官兼コーチをしている。

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【了】

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