
北中米W杯を戦うポルトガル代表【写真:Getty Images】
ポルトガル代表の編成上の生命線は、長らく守備的MFが担ってきた。だが北中米W杯を戦う現在、ウイング陣の充実ぶりが逆にその生命線を脅かしている。ヴィティーニャを中心に据えた「パリ・サンジェルマン方式」が、同国の基盤だ。ただしそれは41歳のクリスティアーノ・ロナウドの扱いという、もうひとつの難題と表裏一体でもある。(文:西部謙司)[2/2ページ]
PSGにみる、ヴィティーニャ・システム

パリ・サンジェルマンでプレーするヴィティーニャ【写真:Getty Images】
CL史上、レアル・マドリードに次いで連覇を達成したPSGは現代の偉大なチームとなった。そしてヴィティーニャは不可欠な存在として君臨している。
PSGには守備的MFがいない。位置的に中盤の底にいるのはヴィティーニャだ。ビルドアップの中枢であり、すべてのパスを受けようとする絶対的司令塔。ボールを失わず、1対1で優位性のあるヴィティーニャの存在が、PSGに対する相手チームのプレッシングを無効化している。
PSGの守備はマンツーマン。ボール保持力が圧倒的なので守備機会そのものが少なく、押し込んでいるので前進守備がメインになる。体格やパワーに恵まれなくても俊敏性でカバーしやすい。
ヴィティーニャ、ジョアン・ネベスは小柄だが、それがマイナスにはなっていない。高い保持力が前提。いわばヴィティーニャの強みによって、ヴィティーニャの弱点をカバーしている。
ポルトガルがPSG方式に振り切るなら、守備的MFはマストではなくなる。ジョアン・ネベスがヴィティーニャの相棒としてここまで全4試合でピッチに立っているのはそのためだろう。
かつて強力な代表チームは単独クラブをベースにしていた。近年でも2010年優勝のスペインはバルセロナ、14年優勝のドイツはバイエルンがベースだった。自国に圧倒的な強豪クラブがある数少ない例だが、現在のスペインもほぼバルセロナである。
注目される大一番での采配

ポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウド【写真:Getty Images】
では、PSGはフランス代表のベースかといえばそうではない。
外国籍選手が大半を占めていて、マンチェスター・シティがイングランド代表の母体にならないのと同様である。しかし、PSGはポルトガルの基盤にはなりうるのだ。ジョアン・ネベス、ヌーノ・メンデス、ゴンサロ・ラモス、そしてヴィティーニャがいる。
ポルトガルがPSG方式に踏み出すなら、ネックになるのがロナウドだ。41歳のロナウドにウスマン・デンベレの守備はできない。
ロナウドは依然として優れたゴールゲッターでありポルトガルの生きる伝説。アルゼンチン代表におけるリオネル・メッシのような存在だ。
けれども実質的に不可欠なのはヴィティーニャであり、両者を天秤にかければ戦力的には圧倒的にヴィティーニャである。ここまでのロナウドは全4試合でピッチに立ち、そのうち3試合はフル出場だ。ゴンサロよりも優位性を与えられているのは明らかだろう。
しかしハイプレスは必要だ。ヴィティーニャ・システムを続けるのならボール保持率は落とせないからだ。
PSG方式は戦術上の難しさ、ロナウドを外す世論を敵にしかねない決断を伴う。ただ、次の相手は今大会で一度もポゼッション率60%を下回っていないスペインだ。
チームとロベルト・マルティネス監督にとって北中米W杯最大の山場だが、どのような判断を下すのか注目される。
(文:西部謙司)
【著者プロフィール:西部謙司】
1962年9月27日生まれ、東京都出身。学研『ストライカー』の編集記者を経て、02年からフリーランスとして活動。95年から98年までパリに在住し、ヨーロッパサッカーを中心に取材。現在は千葉市に住み、ジェフ千葉のファンを自認し、WEBスポーツナビゲションでは「犬の生活」を連載中。サッカーダイジェスト、フットボリスタなどにコラムを執筆中。『ちょいテク 超一流プレーヤーから学ぶちょっとスペシャルなワザ』監修(カンゼン)、「サッカー右翼サッカー左翼」(カンゼン)、近著に『戦術リストランテⅣ』(ソル・メディア)、「ゴールへのルート」(Gakken) 、共著の『サッカー日本代表の戦術が誰でも簡単に分かるようになる本』(マイナビ)、『FCバルセロナ』(ちくま新書)がある。
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