
北中米W杯で決勝トーナメント進出を果たせなかった韓国代表【写真:Getty Images】
2026 FIFAワールドカップ(北中米W杯)におけるアジア勢9か国は3勝9分17敗。全チームがラウンド32で敗退した。出場枠拡大の恩恵は限定的で、欧州勢との差は依然として歴然。「アジア枠は多すぎる」との声もあるが、ジャンニ・インファンティーノ会長は64か国への拡大すら視野に入れ、来年の会長選も揺るがない支持基盤を固めている。(文:佐藤徳和)[2/3ページ]
「アジアの9枠は多すぎ」

北中米W杯の欧州プレーオフで敗退したイタリア代表【写真:Getty Images】
「『48枠』となった末に、すぐさま『王政復古』に戻ったようなもの」
イタリア語で「48(quarantotto)」は数字だけでなく、「大騒動」や「大混乱」を意味する慣用表現でもある。1848年にイタリア各地で起きた暴動に由来する言い回しだ。
つまり、「48チーム制で大騒ぎしたものの、結局は元に戻った」という皮肉を込めた表現であり、物議を醸した出場枠拡大を痛烈に揶揄しているのである。
リーカリ記者は、「アジアの9枠は多すぎで、ヨーロッパの16枠は少なすぎる」と訴える。32か国に出場枠が設けられた2022年大会でヨーロッパの枠は、13枠であった。
今大会は、欧州予選で2枠、プレーオフで1枠、計3枠が増えただけであった。3枠の増加は、アジアの増加分と全く同じ数であるのだ。
さらに、「もしアジアに9枠をそのまま与え続けるなら、それこそが“スキャンダル”である。アジア勢は大会からほぼ跡形もなく姿を消した」「受け入れがたいのは、今やあらゆることが公平になっているのに、一つだけ例外があるということだ」と続ける。
その例外とは、組み合わせ抽選である。
「大会は48チーム制のままで構わない」

大陸間プレーオフを勝ち抜いたイラク代表【写真:Getty Images】
同氏は「組み合わせ抽選は、FIFAランキングで決められている。もう地政学に左右される時代ではない」と訴える。つまり、地理的なバランスを考慮して出場枠を配分するのではなく、FIFAランキングに基づいて大陸ごとの出場枠を決めるべきだと主張している。
最後に「そして大会は48チーム制のままで構わない。120分までもつれる接戦が続いていることが、『巨大化したワールドカップ』が十分成立していることを証明している」と、48チーム制には一定の理解を示す。
一方で、「何かを変えようじゃないか」と呼びかける。
「例えば、大陸間プレーオフをもっと増やせばいい。どの国が出場に値するのかは、各大陸ではなくピッチの上で決めればいい。ワールドカップは、見本市ではないのだから」
大陸間プレーオフは、すでに導入されているシステムだ。今大会では、アフリカのコンゴ民主共和国が、ニューカレドニアに勝ったジャマイカとの決勝戦を制し、パス1の出場権を獲得した。
イラクは、スリナムを破ったボリビアとのファイナルで勝利を収めてパス2の出場権を得ている。この最後の切符獲得の機会を「欧州諸国にも与えられるべきだ」と持論を展開している。
ただ、今大会で欧州プレーオフを勝ち抜いた4か国のうち、決勝トーナメント進出を果たしたのは、イタリアとのプレーオフ決勝を制して本大会出場を決めたボスニア・ヘルツェゴビナだけだった。
そのボスニアもラウンド32でアメリカ合衆国に0-2で敗れ、姿を消している。予選を苦しみながら突破したチームが、本大会で躍進することの難しさを示す結果と言えるだろう。
「インファンティーノの立場は揺るがない」

ドナルド・トランプ大統領とジャンニ・インファンティーノ会長【写真:Getty Images】
やはり、出場国は32か国が理想であると強く訴えるべきではないだろうか。その上で、欧州にも大陸間プレーオフの機会を設けるべきではないか。
しかし、国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティーノ会長は、スイス・メディア『ブルースポーツ』のインタビューで、64か国体制導入の可能性について「今回のW杯が終わった後、関連委員会で検討する」と言明している。
「W杯は欧州や南米だけでなく事実上全世界のための大会だ。すべての国がW杯出場の夢を見るべき」と主張した。
元に戻すどころか、さらなる拡大を目指しているというのだ。もはや、インファンティーノ会長がその座にある限り、この拡大路線は続きそうである。そうなると、その流れを止めるにはインファンティーノ会長の退任を待つしかない。しかし、その可能性も高いとは言えない。
イギリス・メディア『BBC』のデール・ジョンソン氏が説明する。
「インファンティーノの立場は揺るがない。実際には、その逆だ。インファンティーノは世界中の多くのサッカー協会から支持を集めているのだ。その大きな理由が、FIFAによるサッカー普及支援策にある。
インファンティーノ体制の『FIFA Forward』プログラムは、世界各地でサッカー振興プロジェクトに資金を提供してきた。さらに、W杯を48チーム制へ拡大したことで、これまで出場の可能性がほとんどなかった国々にも門戸を開いた。
今大会を見れば、アジアや北中米カリブ海地域(CONCACAF)は、世界のトップレベルと互角に渡り合うには、まだ課題が多いことも明らかになった。それでもインファンティーノは、多くの国々に『夢』を与えた。これまでW杯出場を現実的に考えられなかった国々が、本大会に手が届く可能性を得たのである」