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コラム 8時間前

GKの“偽装負傷”をどう防ぐ? プレミアリーグなどで新制度を試験導入、その仕組みと背景を解説【コラム】

シリーズ:コラム text by 安洋一郎 フリーライター photo by Getty Images
ジャンルイジ・ドンナルンマ
マンチェスター・シティ所属GKジャンルイジ・ドンナルンマ【写真:Getty Images】



 2026/27シーズンのプレミアリーグで、GKの「戦術的タイムアウト」を防ぐための新ルールが試験的に導入される。負傷を装って試合の流れを止め、監督が選手へ指示を送る時間を確保する。こうした行為への対策として設けられた規則だ。なぜプレミアリーグは新ルール導入に踏み切ったのか。その背景には、昨季に大きな議論を呼んだ複数の事例があった。(文:安洋一郎)[1/2ページ]

北中米W杯でも話題を集めた新ルールの導入

イングランド代表 W杯
ハイドレーションブレイク時のイングランド代表【写真:Getty Images】


 FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)で話題を集めたのが、時間稼ぎを減らし、プレーのテンポを向上させることを目的とした新ルールだ。

 その代表例が、スローインとゴールキックにおける5秒カウントダウン(主審が意図的な遅延と判断した場合に視覚的な5秒カウントを開始し、時間内に再開しなければ、スローインは相手ボールのスローイン、ゴールキックは相手のコーナーキックとなる)である。

 他にも、交代の10秒ルール(交代ボード表示後、退く選手は原則10秒以内にピッチ外へ出なければならず、超過した場合は投入される選手がプレー再開後、少なくとも1分が経過した後の最初の中断までピッチに入れない)や、負傷治療後の1分待機(重傷を除き、ピッチ内で治療を受けたフィールドプレーヤーは、プレー再開後、原則1分間はピッチ外で待機する)など、時間稼ぎを防ぐためのルールが追加された。

 これらは一定の効果があったと言えるだろう。前後半の中間に3分間のハイドレーションブレイクが設けられたことで、従来より約3分長いアディショナルタイムとなることが想定されていたが、長さが批判を浴びたカタールW杯と比較すると、明らかに減少していた。

 そして、2026/27シーズンのプレミアリーグでは、北中米W杯で効果を発揮した新ルールに加え、GKの「戦術的タイムアウト」を防ぐための新たな規則が試験的に導入されることが承認された。

試験的に導入される新ルールの内容

プレミアリーグ 新ルール
【写真:Getty Images】


 この新ルールは、GKが負傷したふりをして試合の流れを遮る行為への対策とされている。

 7月27日にプレミアリーグが発表した声明には、「Pro Ref(審判を統括する組織)、イングランドサッカー協会(FA)、プレミアリーグ、EFL、WSLフットボール、ナショナルリーグが共同で推進するこの試験導入は、イングランドの男子および女子のプロサッカー全試合で実施される予定であり、GKの負傷が試合の勢いを損なったり、試合のペースを遅らせたり、戦術的な指示を行う機会を作り出したりするために利用されてきた状況に対処することを目的としている」と記されている。

 GKは、常にピッチに立ち続けなければ競技が成立しない特殊なポジションだ。そのため、GKが負傷を装って時間を稼ぐ行為は、フィールドプレーヤーとは異なり、メディカルスタッフによる治療を受けてもピッチ外へ出る必要がないという競技規則を逆手に取った手法だった。

 GKが時間を稼ぐことで、相手の勢いを止めるだけでなく、テクニカルエリアで監督から指示を受けるための時間も生まれていた。

 その対策として、GKの負傷によって試合が中断された場合、監督は「フィールドプレーヤーの中から1名を指名」し、その選手に直ちにピッチを離れるよう指示する必要がある。指名された選手は、プレー再開後、少なくとも1分間はピッチ外で待機しなければならない。

 ただし、GKに対するファウルやフィールドプレーヤーとの衝突によって治療が必要となった場合や、出血を伴う場合には、このルールは適用されない。

 この試験的な新ルールの導入によって、スポーツ上の優位性につながる可能性を排除しつつ、真の負傷に対しては引き続き適切な医療処置が施されるという。

ルールが導入された背景と具体的な事例

ロベルト・サンチェス チェルシー
チェルシー所属GKロベルト・サンチェス【写真:Getty Images】


 この新ルールが導入された背景には、昨シーズンに起きた具体的な事例があった。

 最も大きな反響を集めたのが、2025年11月に行われたマンチェスター・シティ対リーズ・ユナイテッド(3-2)での出来事だ。

 試合後半、リーズが優勢だった時間帯に、GKジャンルイジ・ドンナルンマが倒れて治療を要求。その間にジョゼップ・グアルディオラ監督が他の選手たちへ指示を出す時間が生まれていた。

 試合後、リーズのダニエル・ファルケ監督は「試合を中断させるための偽の負傷」だと強く批判。同クラブはFAカップ準決勝のチェルシー戦(0-1)でも、GKロベルト・サンチェスが治療を要求したことで試合の勢いを削がれており、こうした一連の出来事がルール追加の大きなきっかけになったことは間違いない。

 また、2026年3月に行われたアーセナル対ブライトン(1-0)では、GKダビド・ラヤが1試合で3度倒れて試合を止めた。これに対し、ブライトンのファビアン・ヒュルツェラー監督は「プレミアリーグでGKが1試合に3回も倒れるのを見たことがあるか?」「時間稼ぎを防ぐルールを導入すべき」と強く批判していた。

 これらに共通していたのは、GKが座り込んでいる間に選手たちがテクニカルエリアに集まり、監督から指示を受け、治療が終わると何事もなかったかのようにプレーへ復帰していた点だ。

 北中米W杯で導入された「負傷治療後の1分待機」は、フィールドプレーヤーによる同様の時間稼ぎを抑制するうえで一定の効果を発揮した。今回の新ルールは、その考え方をGKにも広げたものと言える。 

 時間稼ぎを減らし、試合本来の流れを守るという今回の試みは、今後のフットボールの世界基準となるのだろうか。プレミアリーグでの成果に注目したい。

(文:安洋一郎)

【著者プロフィール:安洋一郎】
1998年生まれ、東京都出身。高校2年生の頃から『MILKサッカーアカデミー』の佐藤祐一が運営する『株式会社Lifepicture』で、サッカーのデータ分析や記事制作に従事。大学卒業と同時に独立してフリーランスのライターとして活動する。現在は『フットボールチャンネル』をはじめ複数のwebメディアや欧州名鑑などに寄稿。12歳からアストン・ヴィラを応援し、プレミアリーグを中心に海外サッカー全般を追っている。Xアカウント:@yoichiro_yasu

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