FIFAワールドカップ出場を3大会連続で逃したイタリア代表は、大きな転換期を迎えた。しかし、その再建への第一歩となるはずだった新体制づくりは混迷を極める。会長交代、パオロ・マルディーニの招聘、ジョゼップ・グアルディオラへの接触、アンドレア・ピルロ就任目前での破談、そしてマルディーニの電撃退任――。混乱の末、1081日ぶりにロベルト・マンチーニがアッズーリの指揮官へ復帰した。イタリア代表の監督人事は、なぜここまで迷走したのか。その舞台裏を時系列で振り返る。(文:佐藤徳和)[2/2ページ]
ピルロは白紙。さらにはマルディーニも…
27日、ピルロの代表監督就任が白紙となる。ピルロは、『Instagram』で代表監督候補から外れたことを公表した。
「関係するすべての機関、FIGC、そしてすべての方々への敬意から、私はこれまで沈黙を守ることを選んできた。しかし、26日夜、私がイタリア代表監督候補ではなくなったことを知り、いくつかの点を明らかにすることが必要だと考えた。私は現役選手として、そして今は監督としてのキャリアを通じて、常に働いてきた国々の法律と、自ら結んだ契約を全面的に尊重して活動してきた。
論争の対象となっているプロフェッショナルな協力関係は、アラブ首長国連邦での私の仕事の過程で生まれたものであり、商業的かつスポーツ的な性質のみに基づくものである。この協力関係に政治的な意味を持たせることは、私が一度も表明したことのないもので、また私自身が抱かない思想を、私に押し付けているものだ」
この時点で、ピルロが代表監督に就任する可能性は潰え、監督選考は振り出しに戻った。ピルロは政治的な意図はない商業的な活動だったと説明したものの、ロシア企業との関係を持つ彼に好意的な印象を抱いた人は、多くなかっただろう。
ロシアの侵攻を受けるウクライナ人で、ピルロの元チームメートでもあるアンドリー・シェフチェンコは、かねてからピルロの活動を批判していたという。ピルロには、戦争によって苦しむ友人シェフチェンコの立場や感情を、少なからず慮る必要があったのかもしれない。
さらに、衝撃が走る。マルディーニとレオナルドが辞任を表明。テクニカルディレクターとアドバイザー就任から、わずか16日での退任劇であり、早くもプロジェクトが崩壊した。
ピルロの代表監督就任の可能性が消え、マルディーニとレオナルドは、チアゴ・モッタを候補に挙げた。2人は、若い指揮官をイタリア代表監督に推していたが、2人の要求が受け入れられず、FIGCとの双方合意による契約解除へと至った。
マルディーニは、23日の会見の場で、「イタリアが必要としている時に、断るのは難しい。我々は、FIGCの改革プロジェクトがどれほど困難で、長い道のりになるかを十分理解している」と語っていたが、あまりにも短い道のりで、FIGCに別れを告げることとなってしまった。
マンチーニ就任には厳しい声も…
28日、ついにイタリア代表の新体制が発表された。ロベルト・マンチーニがアッズーリの代表監督に復帰することが正式に決定。また、テクニカルディレクターには、元ローマ指揮官のクラウディオ・ラニエーリが就任することも発表された。
しかし、マンチーニに対する世論の風当たりは強い。その最大の理由は、2023年8月4日にイタリア代表監督を電撃辞任した過去にある。
年俸2500万ユーロ(約46億円)という破格の条件を提示したサウジアラビア代表監督に就任するためだったとされているからだ。
2020年の欧州選手権でイタリアを頂点へ導いた功績を評価する声もあるが、金銭的な理由によって母国の代表監督の座を離れたマンチーニに対しては、「アッズーリを見捨てた」と見る批判的な意見が圧倒的に多い。
マンチーニ率いる“アッズーリ2.0”の初陣は9月25日に迎える。舞台はローマのスタディオ・オリンピコ、対戦相手はベルギーだ。
さらに10月2日には、敵地スタッド・ド・フランスでフランスとの一戦が待ち受けている。準備期間はあまりにも短い。限られた時間の中で、マンチーニは再びイタリアを勝利の道へ導くことができるのか。
(文:佐藤徳和)
【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru
【関連記事】
イタリア代表の崩壊はメディアの責任でもある。セリエAの外国人偏重起用問題を報じない…いや、報じられない理由【コラム】
イタリア代表の新監督はどうなる? 候補に挙がる5人とは。「再建ではない。破壊すべき」意外な大物の名前も【コラム】
セリエAなのにイタリア人がいない…。なぜ優秀な若手が育ちにくいのか。「今の限界を招いてしまった」大きな誤解とは【コラム】
【了】



