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コラム 3時間前

セリエA・B・C1すべてで得点王。代表歴ゼロ、それでもイタリアサッカー史に残る“プロヴィンチャの英雄”イゴール・プロッティの生涯【コラム】

イゴール・プロッティ
58歳で亡くなったイゴール・プロッティ氏【写真:Getty Images】



 イタリアサッカー史で、セリエA、セリエB、セリエC1のすべてで得点王に輝いた選手は、わずか2人しかいない。その一人、イゴール・プロッティが6月19日、58歳で亡くなった。A代表に一度も招集されず、強豪クラブでは定位置を築けなかった。なぜプロッティは、A代表に届かなかったにもかかわらず、人々の記憶に残る存在となったのか。ゴール、仲間、家族、そして最後まで守り抜いた信念から、その生涯をたどる。(文:佐藤徳和)[2/2ページ]

盟友ルカレッリが捧げた、最後の言葉

イゴール・プロッティ
リヴォルノのマフラーを掲げるイゴール・プロッティ氏【写真:Getty Images】


 今夏、USリヴォルノのスポーツディレクターに就任した弟アレッサンドロとともに、8年ぶりに指揮官の座へ復帰したクリスティアーノは、盟友の死を悼んだ。

「兄弟よ、安らかに眠ってくれ。天国では親父さんとの再会を楽しんでほしい。でもそのあとには、『天国』のクルヴァ・ノルドにいる仲間たち、リヴォルノや他クラブのサポーターで、君を愛しながらもここ数年で先に旅立ってしまったみんなにも会って、よろしく伝えてくれ。そして何より、明日は天上からスタジアムを見下ろし、この街が君に捧げる当然の敬意と愛情を存分に味わってほしい。すでに君がいなくなってしまい寂しく思う。この負けず嫌いが……」

 プロッティは他界する約1か月前に、愛娘であるノエミさんの結婚式に参列していた。

「君は決して諦めなかった。傷ついたライオンのように娘をバージンロードへとエスコートした。そして、それはまるでコモとのプレーオフ決勝2試合のようだった。足を引きずりながらも、その場に立ち続けた。最後の最後まで、人は戦い続けるものだから」

 杖をつき、家族に支えられながら、娘の挙式を見届けていた。その姿は、全身がぼろぼろになりながらも、最後まで尊厳を失わない百獣の王のようであった。がんは、すでに脊椎にまで転移していた。

 プロッティは後日、イタリア紙『コッリエーレ・デッラ・セーラ』のインタビューで結婚式を振り返っている。

「どうしても出席したかったんだ。そして、自分の足で歩いて娘を祭壇まで送りたかった。息子のニコラス・フラヴィオに支えてもらいながら、それを実現することができた」「家族全員にとって、本当に、本当に大切な結婚式だったから」

 多くのイタリア人と同じように、家族を大切にするプロッティは、信念を貫いた孤高の人でもあった。

 セリエBのACメッシーナに在籍していた当時、このようなエピソードがある。ACメッシーナには、ユヴェントスに移籍し、後に1990年ワールドカップでイタリア代表の“サルヴァトーレ(救世主)”となるトトー・スキッラーチの後継者として迎えられていた。

 1年目に12得点、2年目には9得点を挙げ、1991年夏にはセリエAのクラブからもオファーが届いた。それでも、プロッティはACメッシーナを見捨てなかった。

「契約がある以上、それを守るのが当然だ。契約とは、そのためにあるものだから」

 これだけのキャリアを残しながら、SSラツィオとSSCナポリを除けば、ビッグクラブでプレーする機会には恵まれなかった。そうした強豪でも輝くことはできなかったが、プロヴィンチャのクラブの数々で愛された理由は、ゴールで歓喜をもたらしただけではないだろう。また一人、イタリアのサッカー界は、かけがえのない人物を失ってしまった。

【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru

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