【写真:Getty Images】
2025/26シーズンをプレミアリーグ10位で終えたチェルシーが、大きな転換点を迎えている。クラブはシャビ・アロンソ新監督を「マネージャー」として招聘し、フロント主導だった強化体制を見直した。若手主体の補強路線からベテラン獲得へと舵を切った背景には何があるのだろうか。新指揮官に大きな権限を託した狙いとは。(文:安洋一郎)[2/2ページ]
レバークーゼンでの成功体験

無敗優勝を達成したレバークーゼン【写真:Getty Images】
シャビ・アロンソがベテラン選手を重宝したチーム作りを行うのは、これが初めてのことではない。2022/23シーズン途中から指揮を執ったレバークーゼンでも同様のアプローチでチーム強化を進めた。
若手選手を育成して売却するサイクルでチーム強化を図っていたレバークーゼンは、2007/08シーズン以降、補強した選手の平均年齢は23歳を下回る状態が続いていた。
しかし、シャビ・アロンソ体制2季目の2023/24シーズンに獲得した選手の平均年齢は23.8歳まで上昇した。当時30歳だったジャカとヨナス・ホフマンを夏に、冬には当時31歳のボルハ・イグレシアスを獲得している。
若手選手の土台があるチームに経験豊富なベテラン選手を加えるのは、今夏のチェルシーと同じケースである。レバークーゼンでは同シーズンにブンデスリーガの無敗優勝を達成するなど、補強方針の転換がピッチ上での成功につながった。
今季のチェルシーは欧州カップ戦がないため、他の強豪と比較するとトレーニングの時間を多く確保することができる。
スペイン『Mundo Deportivo』や『AS』によると、シャビ・アロンソはスター選手が揃うレアル・マドリードでも高強度のトレーニングを長時間行っていたという。そうした指導がチェルシーでも行われることが予想される。
ロシニアー前監督はラストマッチとなった4月21日のブライトン戦後の会見で「選手の態度が容認できない」とコメントしていた。
前指揮官のこうした発言からも、選手たちのトレーニングへの取り組み方を含め、メンタル面に課題を抱えていたことが伺える。
そういったチームに高強度のトレーニングを植え付けるのは難しいかもしれないが、その改善に大きく貢献すると期待されるのが、ジョーダン・ヘンダーソンのようなベテラン選手だ。
同選手は今夏のFIFAワールドカップ2026(北中米W杯)のイングランド代表にも名を連ねた。
その理由についてトーマス・トゥヘル監督は「トレーニングを複数のグループに分けて行る場合、ジョーダンがいるグループには背中を向けていても大丈夫なんだ。彼がそのグループのすべての基準を面倒見てくれる。ジョーダンが基準を設定し、声を出してリードし、他の選手がついてくる」と、練習の基準になることを明かしていた。
スカッドが多いチェルシーにおいて、彼のようなリーダーシップを発揮できる存在は、チームにとって大きな意味を持つだろう。
シャビ・アロンソをマネージャーとして招いた懸念点

チェルシーのシャビ・アロンソ監督【写真:Getty Images】
一方で懸念点がないわけではない。その一つがマネージャー制とチェルシーの文化の親和性だ。
ロマン・アブラモヴィッチ体制で2000年代前半から急速に力をつけたチェルシーは、ジョゼ・モウリーニョやカルロ・アンチェロッティ、アントニオ・コンテ、トーマス・トゥヘルら旬の監督へ次々と交代しながら強化を図ってきた。
最長の政権は第一次モウリーニョ体制の約3年2ヶ月だった。
こうした監督交代を積極的に行いながらタイトルを争うことがクラブ文化になりつつあるチェルシーにおいて、監督が強い権限を持つことがプラスに働くかどうかは限らない。
フロントが中長期的な視点で強化を進める「ヘッドコーチ制」の方がクラブ文化との相性が良いのは過去の実績を見れば明らかだ。
マネージャー制を敷く場合は、長期政権を前提とするクラブに適している。
現在のプレミアリーグで最も在任期間の長いアーセナルのアルテタと2番目に長いアストン・ヴィラのエメリはいずれも補強に対する強い権限を持っており、彼らの意向がスカッドにも反映されている。
しかし、彼ら2人がチェルシーのシャビ・アロンソと異なるのが、両者ともに就任当初は「ヘッドコーチ」だったということ。ピッチ上でのパフォーマンスで結果を残したことを受け、クラブからの絶対的な信頼を集めた上でマネージャーとしての権限を与えられた。
ピッチで結果を残す前にマネージャーの役割を与え、その上でこれまでのフロントが培ってきた補強方針から逸脱するリクルートがリスクであることは間違いないだろう。
一方で、従来の方針を転換してまで、チェルシーのフロントはシャビ・アロンソ新監督にクラブの未来を託したとも言える。
まず注目されるのは、欧州カップ戦のない2026/27シーズンでどれだけ結果を残せるかだ。そして、仮に思うような成績を残せなかった場合でも、フロントがどこまで忍耐強く新体制を支えられるかが問われる。
シャビ・アロンソがチェルシーの新たなクラブ文化を築けるのか。その答えは、新シーズンから示されることになる。
【著者プロフィール:安洋一郎】
1998年生まれ、東京都出身。高校2年生の頃から『MILKサッカーアカデミー』の佐藤祐一が運営する『株式会社Lifepicture』で、サッカーのデータ分析や記事制作に従事。大学卒業と同時に独立してフリーランスのライターとして活動する。現在は『フットボールチャンネル』をはじめ複数のwebメディアや欧州名鑑などに寄稿。12歳からアストン・ヴィラを応援し、プレミアリーグを中心に海外サッカー全般を追っている。Xアカウント:@yoichiro_yasu
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