
ジャンフランコ・ゾラ【写真:Getty Images】
“マジックボックス”の異名で知られ、ナポリやチェルシーで活躍したジャンフランコ・ゾラが、クラブ・イタリア育成部門の新たな柱に就任した。現役時代はアッズーリで思うような結果を残せなかった希代の名手が、今度は若き才能を育てる立場から母国の再建に挑む。イタリアサッカーの未来を託されたゾラの軌跡と、新たな使命に迫る。(文:佐藤徳和)[2/2ページ]
W杯出場はわずか12分…英雄ゾラがアッズーリで味わった残酷な運命

イタリア代表 ジャンフランコ・ゾラ【写真:Getty Images】
1994 FIFAワールドカップ(W杯)では、決勝トーナメント1回戦のナイジェリア代表戦で63分から途中出場。
しかし、75分に相手選手へのタックルで退場を命じられた。ゾラにとっては同大会で最初にして最後の出場となり、ワールドカップでプレーした時間はわずか12分に終わった。
UEFA EURO 1996(欧州選手権)では、招集外となったロベルト・バッジョに代わるエースとして期待された。だが、準々決勝進出が懸かったグループステージ最終節のドイツ代表戦でPKを失敗。
イタリア代表は0-0で引き分け、1勝1分け1敗でグループステージ敗退に終わった。ゾラとアッリーゴ・サッキ監督には厳しい批判が向けられた。
2026年に2度目となるイタリア代表監督に就任したロベルト・マンチーニも、現役時代は代表でクラブほどの輝きを放てなかった一人だ。1990年のFIFA W杯ではイタリア代表メンバーに選出されたものの、本大会で出場機会はなかった。
クラブでは輝かしい実績を残しながら、イタリア代表では本来の力を発揮しきれなかったという点で、マンチーニとゾラには共通点があると言えるだろう。
それだけに、イタリア代表に懸ける思いは強いはずだ。ただし、マンチーニに関しては、一度の裏切りがあったことを指摘しておかなければならない。
「118%増」が示す“ゾラ効果” イタリア再生へ、マエストロに託された使命

ジャンフランコ・ゾラ【写真:Getty Images】
では、そのゾラにはどんな役割が求められるのか。まずは、アンダー世代の代表チームからA代表へ移行する際の負担を和らげ、A代表の若返りを後押しすることとなる。
また、育成年代のテクニカルコーディネーターであるマウリツィオ・ヴィッシディと連携し、各年代代表チームの育成システムの構築に取り掛かる。
ヴィッシディは、2010年からテクニカルコーディネーターを務め、育成年代の強化に努めてきた人物だ。
近年では、U-17イタリア代表が2024年、2026年の欧州選手権で優勝し、U-19も2023年大会で欧州を制するなど、結果を残してきた。
しかし、イタリアの育成年代では、指導者がドリブルを好まず、シンプルなプレーを求めることが少なくない。それゆえ、イタリア人選手にドリブラーが育ちにくいことが、かねてから指摘されている。
そうした状況を改善するためにも、ドリブルの“マエストロ”であったゾラが指名されたことにも納得がいく。
ゾラは、2023年2月からレーガ・プロ副会長を務め、“ゾラ効果”はすぐに現れた。24/25シーズンのセリエCでは、22/23シーズンと比べ、自クラブの育成部門で成長した選手をトップチームで起用した数が118%増加している。
彼らの出場時間も大幅に増加し、プラス91%を記録した。こうした育成部門出身選手の起用が、イタリア人選手が激減しているセリエAでも、ゾラのコーディネーター就任によって期待されている。
だが、今夏のセリエAのメルカートでも、外国人選手の獲得が大きな話題となっており、すでにイタリア代表への関心は低下している。
リーグが開幕すれば、各クラブにおけるイタリア人選手の数が明らかになるが、現時点では昨季と比べて増加する兆候はない。ゾラには、イタリアサッカーの未来を左右する、困難な仕事が待ち受けている。
(文:佐藤徳和)
【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru
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