
新戦力も活躍したアーセナル【写真:Getty Images】
日本時間8月16日にアーセナル(プレミアリーグ王者)とマンチェスター・シティ(FAカップ王者)のコミュニティ・シールドが行われ、アーセナルが3-0で勝利を収めた。この試合で印象的だったのが、アーセナルの2人の新加入選手だ。ギリシャ代表FWクリストス・ツォリスとブラジル代表MFブルーノ・ギマランイスがチームにもたらしたものを考察する。(文:安洋一郎)[1/1ページ]
アーセナルがコミュニティ・シールドを優勝

トロフィーを掲げるデクラン・ライスとガブリエウ・マガリャンイス【写真:Getty Images】
スコアが動いた開始23秒の時点で、両チームの完成度の差は明らかだった。
昨季のプレミアリーグ王者アーセナルとFAカップ王者マンチェスター・シティによるコミュニティ・シールドは、3-0で前者が圧勝した。
今季でミケル・アルテタ体制8シーズン目を迎えるアーセナルは、チームとして着実に上積みを続けている。
今夏は30代のFWレアンドロ・トロサール(→ベシクタシュ)とMFクリスティアン・ノアゴール(→エヴァートン)を放出した一方、FWクリストス・ツォリス(←クラブ・ブルージュ)とMFブルーノ・ギマランイス(←ニューカッスル・ユナイテッド)を獲得。若返りを図りつつ、中盤には明確なアップデートを施した。
一方、昨季限りで10シーズンにわたってチームを率いたペップ・グアルディオラが退任したマンチェスター・シティは、エンツォ・マレスカを新監督に招聘し、新たなスタートを切ったばかりだ。
ペップ最終年となった昨季から大幅な世代交代も進められており、プレミアリーグ4連覇を達成したチームは過渡期を迎えている。ポスト・ペップの時代でも結果を残すべく、猛スピードでチーム作りを進めている段階だ。
すでに一定の完成度に達しているアーセナルと、チーム作りの真っ最中にあるマンチェスター・シティ。両軍の間にあった完成度の差は、致し方ないものだったと言える。
さて、この試合で目立ったのが、先述したアーセナルの2人の新戦力だ。彼らがデビュー戦からチームに与えた影響を分析する。
デビュー戦から2アシストを記録したクリストス・ツォリス

デビュー戦から2アシストを記録したクリストス・ツォリス【写真:Getty Images】
昨季から、アーセナルは左サイドのバランスに変化が生まれている。
MFトーマス・パーティが所属していた2024/25シーズンまでは[4-3-3]がメインシステムで、保持時にはアンカーの脇に左SBがポジションを取る「偽SB」のタスクが与えられることが多かった。
トーマスが退団し、MFマルティン・スビメンディが加入した2025/26シーズンからは[4-2-3-1]がメインシステムに。中盤の選手が最初からダブルボランチを組むため、左SBには典型的なフルバックに求められる大外でのアップダウンが、攻守におけるメインのタスクとして求められるようになった。
中盤と左SBの選手に与えられるタスクの変化は、左WGにも影響を及ぼしている。
左WGで先発したツォリスは、左SBのDFリッカルド・カラフィオーリらの立ち位置を見ながら、左の大外とハーフスペース付近を状況に応じて使い分けていた。
オフザボールの質が求められるタスクをほぼ完ぺきにこなしたギリシャ代表FWは、ファイナルサードで積極的にボールを引き出す。
すると、28分にはMFマルティン・ウーデゴールのクロスを頭で折り返し、FWカイ・ハフェルツのゴールをアシスト。48分にはインサイドへ切り込みながらウーデゴールにグラウンダーのパスを通し、3点目のシーンを演出した。
相手からすれば捕まえにくいポジションを柔軟に取りながら、ファイナルサードでアクセントとなったツォリス。データサイト『Squawka』によると、チーム最多となる3本のラストパスを通したほか、ペナルティーエリア内でも6回のボールタッチを記録した。
重要な試合で決定的な仕事をしていたトロサールの退団は大きな不安材料だったが、公式戦初戦からギリシャ代表FWがその不安を払拭するようなパフォーマンスを披露した。
チームに溶け込んでいたブルーノ・ギマランイス

アーセナルMFブルーノ・ギマランイス【写真:Getty Images】
8月8日にニューカッスルから加入したブルーノ・ギマランイスは、マイルズ・ルイス=スケリーとボランチでコンビを組むと、公式戦デビュー戦とは思えないほどチームに溶け込んでいた。
前所属時代と同じく右サイド寄りでプレーすると、縦にも横にも広いプレーエリアと非凡なパスセンスを武器に、攻守にわたって多くの局面に顔を出した。
その起用の効果は、キックオフ直後から見られた。
試合開始の笛と同時に勢いよく敵陣へ攻め込んだアーセナルは、左の大外に開いたツォリスがボックス内へクロスを入れた。この場面でブルーノ・ギマランイスはボックス内まで進入しており、彼を警戒したDFニコ・オライリーがマークについたことで、大外のFWノニ・マドゥエケがフリーに。その後のゴールにつながる二次攻撃の起点が生まれた。
守備でも相手SBまで潰しに出るなど、ニューカッスル時代から定評のあった広いプレーエリアを存分に生かして躍動した。
ブルーノ・ギマランイスがデビュー戦から自分のスタイルを体現できたのは、ルイス=スケリーが中盤の底でバランスを保っていたことも大きい。
ニューカッスルでもMFサンドロ・トナーリがアンカーのポジションに入ることで、水を得た魚のようにパフォーマンスのレベルを一段階上げていたように、ブルーノ・ギマランイスはある程度の自由を与えたほうが輝くタイプの選手だ。
彼の存在は、周囲にもプラスの影響を与えていると考えられる。特にトップ下のウーデゴールは、ビルドアップ時にブラジル代表MFが気を利かせながらパスワークに絡むことで、ライン間での仕事に集中できる時間帯が多かった。
45分のシーンを筆頭に、ノルウェー代表MFがライン間から背後へのスルーパスを積極的に狙える場面が多かったのは、ブルーノ・ギマランイスの豊富な運動量があってこそだ。
新加入の2人がいきなり躍動したのは、マンチェスター・シティの守備強度が低かったことも要因の一つだろう。しかし、それ以上に大きかったのは、アーセナルという完成されたチームの設計図が、新戦力を迎えても機能していたことだ。
ツォリスは左サイドで流動的にポジションを変えながら攻撃にアクセントを加え、ブルーノ・ギマランイスは広いプレーエリアを生かして攻守のさまざまな局面に関与した。
個の能力だけではなく、既存のチーム構造の中で新戦力の特徴を最大限に引き出す。これこそが、アルテタ率いるアーセナルが長年にわたって積み上げてきたチームとしての完成度なのだろう。
(文:安洋一郎)
【著者プロフィール:安洋一郎】
1998年生まれ、東京都出身。高校2年生の頃から『MILKサッカーアカデミー』の佐藤祐一が運営する『株式会社Lifepicture』で、サッカーのデータ分析や記事制作に従事。大学卒業と同時に独立してフリーランスのライターとして活動する。現在は『フットボールチャンネル』をはじめ複数のwebメディアや欧州名鑑などに寄稿。12歳からアストン・ヴィラを応援し、プレミアリーグを中心に海外サッカー全般を追っている。Xアカウント:@yoichiro_yasu
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