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コラム 7時間前

ローマで育ち、ローマを愛し続けてきた男の忠誠――大幅減俸でも契約更新、ペッレグリーニが追う新たな夢【コラム】

ASローマ ロレンツォ・ペッレグリーニ
ASローマ ロレンツォ・ペッレグリーニ【写真:Getty Images】



 契約満了から1カ月余り。ASローマは8日、ロレンツォ・ペッレグリーニとの契約更新を発表した。現地報道によれば、契約は1年で、さらに1年の延長オプションが付く。年俸は従来の約420万ユーロから約250万ユーロへ大幅に減額されたという。ユヴェントスをはじめ複数クラブから関心を寄せられても、その心が揺らぐことはなかった。ローマで育ち、ローマを愛し続けてきた男は、なぜ“永遠の都”に残る道を選んだのか。その決断の背景と、新シーズンに懸ける新たな夢を追う。(文:佐藤徳和)[2/2ページ]

ローマ人にとって、クラブへの愛は街への忠誠でもある

ASローマ
ASローマ【写真:Getty Images】


 なぜ、それほどまでにローマ生まれの人間は、このクラブに、そしてローマという街に魅了されるのか。

 ローマ人のローマという街に懸ける思いは、計り知れないものがある。街の経済的な発展よりも、過去から受け継いできた遺産に誇りを持ち、それを胸に生きることを選んできた人々だ。

 約2700年前に創建されたと伝えられる古代ローマの街と、今も共に生きている。クラブへの思いは、ローマという街への忠誠でもあるのだ。

 ペッレグリーニの契約更新を巡り、クラブに所属するイタリア人選手たちが、大きな愛情を示していた。

 ASローマで9シーズン目を迎えるブライアン・クリスタンテともう一人のローマっ子、ニッコロー・ピジッリは、ペッレグリーニについて、「新契約を願っている。僕らは、ロレンツォを両手を広げて待っている」と述べていた。

 トスカーナ州ポンテデーラ生まれのジャンルーカ・マンチーニは、ローマの虜になった一人だ。古代ローマとその市民の栄光と誇りを表す「SPQR(ローマの元老院と市民)」の文字をタトゥーに入れ、ローマ人としての“洗礼”を自らに施している。

 マンチーニは8月4日、イタリア紙『ラ・ガッゼッタ・デッロ・スポルト』のインタビューで、「ローマは私の心と血の中に入った。私はタトゥーが大好きで、昨年12月に、もしUEFAチャンピオンズリーグに行けたらタトゥーを一つ入れようと自分に約束していた。『SPQR』はとても美しい言葉であり、私とこの街、そしてクラブとの結びつきを凝縮している」と話した。

 また、ペッレグリーニについては、「彼がいないことをとても強く感じている。彼は人生の親友だ。彼がいないことはみんなが感じている。早く合流できることを願っている。ロッカールームの中で重要な存在であり、プレーヤーとしても私たちに大きな力を与えてくれる」と語り、イタリア人選手3人が、ペッレグリーニの早期契約更新を願っていたことを明かしている。

 さらに、チェリクがユヴェントスに移籍した直後には、ローマのサポーター・グループの一つが、トリゴーリアの近くに横断幕を掲げ、ペッレグリーニとの新契約締結を呼びかけていた。

「間違いを犯すことは、誰にでもある……。それを繰り返すのは、杜撰ということだ。ロレンツォをしっかりつなぎ止めておかなければならない」

ブーイングを浴びても変わらない、ガスペリーニが認めた価値

ASローマ ロレンツォ・ペッレグリーニ
ASローマ ロレンツォ・ペッレグリーニ【写真:Getty Images】


 これほどまでにペッレグリーニの新契約が先送りされたのは、ペッレグリーニが複数年契約を望んでいたからとされている。
 
 一方、クラブは1年契約に固執。最終的にペッレグリーニ側が折れ、クラブの要求が通る形となった。また、ガスペリーニ監督が、ペッレグリーニの新契約を強く後押ししたことも付け加えておかなければならない。

 確かに昨シーズンのペッレグリーニは、ASローマでデビューした最初のシーズンを除けば、リーグ戦での出場数はキャリア最少となる24試合に留まった。とりわけ、太もものケガに悩まされ、シーズンを通してプレーできないことが多かった。得点も4ゴールに終わった。

 しかし、そのうちの1点は、宿敵SSラツィオとの一戦で決めた決勝ゴール。デルビーでの通算得点は4ゴールに伸ばした。クオリティーの高さと勝負強さは健在である。

 オリンピコではサポーターからブーイングを受けることもあった。では、彼を批判した者たちに問いたい。今のASローマに、ペッレグリーニ以上にチームのために戦える選手を獲得できると言えるのだろうか。

 2024年の欧州選手権を前に、イタリアの至宝、ロベルト・バッジョは、「ペッレグリーニがアッズーリの10番にふさわしい」と語ったほどだ。

 問題は、ここ数シーズンにわたって悩まされている筋肉系のケガだ。現在も右太ももの大腿直筋に問題を抱え、トリゴーリアで回復トレーニングを行っている。

 全体練習への合流は15日以降となる見込みで、25日の開幕節、本拠地オリンピコでの一戦への出場も難しいと予想されている。まずはコンディションを整え、万全な状態でシーズン開幕を目指したいところだ。

「自分がどのレベルなのか知りたい」 愛するローマで挑む新たな夢

ASローマ ロレンツォ・ペッレグリーニ
ASローマ ロレンツォ・ペッレグリーニ【写真:Getty Images】


 昨年11月、ASローマ専門メディア『Il Romanista』によって、ロングインタビューが行われた。ペッレグリーニは、「サッカー選手としての今の夢は何か」との最後の質問に、こう答えている。

 少し間を置いて、「私の夢は、自分がどのレベルの選手なのかを知ること。私の夢はASローマでプレーすること、そしてASローマとともに優勝することだった。それを実現できた私は幸運に恵まれた。優勝は常に夢だ。それも、このユニフォームを身に纏って……。でも、私のローマ人としての精神とは、何があってもASローマを愛することだ」と語っている。

 ASローマは昨シーズン、終盤に5連勝の3位でフィニッシュ。8年ぶりとなるUEFAチャンピオンズリーグ出場権を手にした。世界最高峰の舞台への切符を手にし、ペッレグリーニが語った「自分がどのレベルの選手なのかを知ること」が可能となった。しかも、それを愛するジャッロロッソのユニフォームを着て実現できるチャンスを得られたのだ。

 もはや、ペッレグリーニにとって選択肢は一つしかなかった。自らの夢を叶えられる舞台が、そこにあるのだから。

(文:佐藤徳和)

【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru

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