
リヴァプール、補強診断【写真:Getty Images】
昨夏、4億8313万ユーロ(約893.7億円)もの移籍金を投じたリヴァプールだったが、無冠に終わり、プレミアリーグでも5位と結果を残せなかった。今季からはボーンマスで結果を残したアンドニ・イラオラを新監督に招聘。再出発を図るクラブは今夏も2億6960万ユーロ(約489.7億円)を投じたが、果たして昨季からの課題は解決されたのだろうか。「獲得」「放出」「計画性」「バランス」「コスパ」の5項目を各20点、計100点満点で採点する。(文:安洋一郎)[1/2ページ]
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489億円を使うもスカッドバランスは整わず

ブラッドリー・バルコラとロナルド・アラウホ【写真:Getty Images】
昨夏に大型補強を敢行したリヴァプールだったが、アルネ・スロット監督の下ではチームのバランスを整えられず、結果を残せなかった。不振を受けて今オフに監督交代を決断し、ボーンマスで結果を残したアンドニ・イラオラを新指揮官に招聘している。
今夏には、18歳のGKルッカ・ブルフマンス(ヘンク)ら若手選手への先行投資も含め、2億6960万ユーロ(約489.7億円)をマーケットに投じた。それでも、スカッドのバランスの悪さは解消されていない。
深刻な問題を抱えているのは右サイドだろう。一昨季までのリヴァプールは、右SBのトレント・アレクサンダー=アーノルドと右WGのモハメド・サラーによるホットラインが、攻撃のカギを握るほど大きな影響力を持っていた。
しかし、昨夏と今夏に両者が退団した一方で、明確に後釜と言える選手は獲得していない。
今夏に即戦力として補強したのは、FWヴィクトル・ムニョス、FWブラッドリー・バルコラ、DFロナルド・アラウホ、DFジェレミー・ジャケの4選手。契約満了でチームを去ったDFイブライマ・コナテの後釜はアラウホとジャケで補えている一方、エースのサラーの明確な後釜は獲得していない。
ムニョスもバルコラも左サイドを得意としている選手だ。つまり、サラー退団によって最も大きな穴が生じた右WGを直接埋めるのではなく、FWコーディ・ガクポやFWリオ・エングモアら既存戦力を含めて左サイドの選手を増やし、そのうち1人を右へ回すことで対応している。
昨季、ドミニク・ソボスライが緊急的に起用されることの多かった右SBには、本職CBのアラウホが定着している。アトレティコ・マドリードとのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)では、ボックス内で見事なアイデアを発揮してアシストを記録したが、こちらも本来のポジションで起用できているとは言い難い。
こうしたいびつな編成の要因の一つとなっているのが、フロント陣の不安定さだろう。昨夏に補強を仕切ったスポーツ・ディレクター(SD)のリチャード・ヒューズはアル・ヒラルへ移籍。その上司にあたるフットボール部門のCEO(最高責任者)マイケル・エドワーズも7月に退任したことで、意思決定権を持つ上層部の方針が定まっていないのだ。
主力流出の一方で、余剰戦力の整理は進まず

フェデリコ・キエーザと遠藤航【写真:Getty Images】
「獲得」が十分に進まなかった一方で、「放出」も思うようには進まなかった。
今夏にはサラー、コナテ、アンドリュー・ロバートソンという3人の功労者が契約満了に伴って退団。さらに、契約を残していたMFカーティス・ジョーンズをインテルに3000万ユーロ(約54億円)の移籍金で放出した。
彼らの放出は給与というコスト面や世代交代を考えると悪くはないだろう。
問題は構想外の選手の整理が進まなかったことだ。FWフェデリコ・キエーザやMF遠藤航は放出候補だったが、彼らの移籍先は決まらなかった。
その結果、必要なポジションの選手が不足する一方で、構想外の選手を抱えるという、スカッド内の偏りが生まれている。
ロバートソンの後釜も獲得せず、昨季は構想外だったコスタス・ツィミカスを改めてスカッドの一員として計算する必要がある。
最終ラインも、本職CBのフィルジル・ファン・ダイク、ジャケ、アラウホの3人を同時に起用するケースが多く、控えのCBは稼働率に明確な課題を抱えるジョー・ゴメスと、長期離脱中のジョヴァンニ・レオーニの2人しかいない。
こうしたバランスの悪いスカッドは編成面で大きな課題を残している。一方で、新監督のイラオラは、時間をかけながら最適解を見つけていくことができる指揮官でもある。
イラオラは前職のボーンマスで、就任から9試合連続でプレミアリーグ未勝利を経験しながらも、シーズン途中からチームを大きく立て直し、最終的には余裕を持って残留に成功。昨季も冬にエースのアントワーヌ・セメンヨが引き抜かれる状況にありながら、リーグ戦18試合無敗という記録を作った。補強だけに頼らず、選手の配置や戦術を調整しながらチームを作ることができる監督だ。
選手のコンバートやチーム戦術の微調整も、その特徴の一つだ。例えば、昨季後半戦の無敗街道では、シーズン前半戦をオールコートマンツーマンで戦っていたことで背後のスペースを使われる場面が増えたため、CBのジェームズ・ヒルを後方のカバー役として残す形に変更。これがチーム全体のバランスを整えることにつながった。
こうした微調整を得意とするイラオラが監督として機能すれば、シーズンが進むにつれてチームは良くなっていくはずだ。問題は、彼のアグレッシブで高い運動量を求めるフットボールを、中2〜3日の過密日程でも継続できるかにある。