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コラム 6時間前

トッテナムはなぜ大型補強しても勝てない? 深刻な得点力不足の正体とは【プレミアリーグを読む】

トッテナム・ホットスパー
プレミアリーグ開幕4試合でノーゴールに終わっているトッテナム・ホットスパー【写真:Getty Images】



 今夏に3億6635万ユーロ(約677.4億円)を投じ、サンドロ・トナーリやマテウス・フェルナンデス、サヴィオらを獲得したトッテナム・ホットスパー。しかし、2026/27シーズンは開幕4試合を終えて未勝利、無得点と苦しいスタートになった。大型補強を敢行したにもかかわらず、なぜ結果が出ないのか。xGやセットプレーを分析すると、「4試合連続無得点」の裏にある攻撃面の課題と、それ以上に深刻なスパーズの問題が浮かび上がる。(文:安洋一郎)[2/2ページ]

両ワイドの連係不足と9番不足

トッテナムのペドロ・ポロ
北中米W杯優勝に貢献したペドロ・ポロの不在や9番タイプのFW不足が影響している【写真:Getty Images】



 オープンプレーでの課題を挙げるなら、両ワイドの連係不足だろう。

 左SBのアンドリュー・ロバートソンは開幕戦から精度の高いクロスを供給している。しかし、左WGとして先発する機会が多いマティス・テルの球離れの悪さも相まって、その持ち味をチームの武器にするまでには至っていない。

 右サイドでは、ペドロ・ポロがW杯に出場した影響もあり開幕戦を欠場。第4節も負傷で欠場しており、最大のストロングポイントとも言える彼のチャンスメイクも鳴りを潜めている。

 両ワイドの連係が固まっていないことに加え、人材不足も重なり、相手のSBとCBの間、いわゆる「ポケット」への侵入が十分にできていない。結果として、中央のゴールデンゾーンまでボールを運ぶ回数も減っている。

 その上、9番タイプのストライカーがソランケしかいないことも懸念材料だ。昨季のチーム得点王だったリシャーリソンはプレミアリーグの登録メンバーから外れ、マルムシュもどちらかと言えば2トップに適性がある選手だ。

 前線で起点となりながら、ゴール前で迫力を出せる選手が実質的に1人しかいない。大型補強によって戦力は大幅に増強された一方、攻撃の最後の局面には依然として明確な弱点が残されている。

生命線となるセットプレーで迫力を失った正体

トッテナム対エヴァートン
昨季まで強みとしていたセットプレーにも陰りが…【写真:Getty Images】



 さらに、昨季は明確な武器だったセットプレーの迫力を失ったことも、開幕から無得点が続いている要因だ。

 昨季のスパーズはプレミアリーグだけで、セットプレーから19ゴールを決めていた。

 これはデ・ゼルビ就任以降も変わっておらず、彼が指揮を執った7試合で決まった8ゴールのうち、半分の4ゴールがセットプレーから生まれている。

 昨季から今季にかけてセットプレーコーチのアンドレアス・ゲオグルソンは留任している。しかし、開幕から4試合にわたって得意のセットプレーが鳴りを潜めていることにも、明確な理由がある。

 1つは、チームで最も多くのキッカーを務めていたポロが2試合欠場したこと。MFジェームズ・マディソンのコンディションも万全ではないことを踏まえると、スペイン代表DFの不在はセットプレーに大きな影響を与えた。

 2つ目はターゲットの不足だ。昨季の公式戦でチーム2位タイの7得点を記録したMFジョアン・パリーニャがローン契約の満了に伴い退団。チーム4位タイの6得点を記録したDFクリスティアン・ロメロも完全移籍でチームを去った。

 特に前者は、残留という目標に向けて守備的に戦った昨季終盤のデ・ゼルビのチームにおけるキーマンとも言える存在だった。ハードな潰しに加え、身長190cmという長身を生かしたゴール前での迫力も備え、デ・ゼルビ体制でも2ゴールをセットプレーから決めていた。

 昨季の最終節で決まったゴールもセットプレーからのパリーニャの得点であり、彼に対する依存度は高かった。

 一方で、昨季7得点を決めたファン・デ・フェンや、開幕からファーサイドに良いフィーリングで飛び込んでいるファン・ヘッケもいる。ただ、中盤の選手でこれだけ高さを出せる選手はいない。

 仮にこの後ポロがフル稼働したとしても、昨季よりセットプレーからの得点が減る可能性は十分にある。

得点力不足よりも深刻な課題

トッテナムのサポーター
トッテナムはホームでなかなか勝てず。ハーフタイムや試合後のブーイングは恒例だ【写真:Getty Images】



 オープンプレーやセットプレーからの得点は、昨季から在籍している既存戦力と新戦力が噛み合えば、精度を高めることができるだろう。

 現状は毎試合のようにスタメンが大きく変わっていることからも分かるように、最適解を探している最中だ。まだ結果が出ていないこと自体を、過度に心配する必要はない。

 デ・ゼルビの解任論も、あまりに時期尚早だ。

 しかし、ここまでの問題をすべて合わせても、今季のスパーズが本当に向き合うべき課題は別にある。

 それが、ホームで勝てないことだ。

 トッテナム・ホットスパー・スタジアムでの成績不振は、アンジェ・ポステコグルー政権から続いている。2025年以降のリーグ戦におけるホーム成績は5勝8分17敗と、大きく負け越している。勝率に換算すると、わずか16%しかない。

 ハーフタイムや試合後のブーイングは恒例となっており、これはデ・ゼルビ体制でも大きくは変わっていない。トーマス・フランク前監督の時代ほど雰囲気が悪くないとしても、ホームで結果が出ない状況が続けば、選手たちがプレッシャーを感じる環境になっている可能性はある。

 もちろん、ブーイングを力に変えられる選手やチームもあるだろう。しかし、スパーズの場合は、少なくとも過去2シーズンのホーム成績を見る限り、そうした形にはなっていない。

 17位に沈んだ昨季も、アウェイのみの成績では6位だった。総合順位を大きく押し下げた要因の一つが、ホームで勝ち点を積み上げられなかったことにある。

 上位進出を目指すクラブにとって、これは看過できない問題だ。

 仮に今後、スパーズが再び上位争いに加わるのであれば、トッテナム・ホットスパー・スタジアムを「要塞」に変えなければならない。

 大型補強によって、戦力そのものは大きく変わった。しかし、選手を入れ替えただけでチームが強くなるわけではない。

 無得点という目に見える問題は、連係の成熟や新戦力の適応によって改善される可能性がある。一方で、ホームで勝ち切れないという問題は、単純な選手補強だけでは解決できない。

 2シーズン連続17位という現実を変えるために必要なのは、ゴールだけではない。本拠地で勝つことを当たり前にすること。

 その環境とチームの在り方そのものを変えられるかが、今季のスパーズにとって最大のテーマになる。

(文:安洋一郎)

【著者プロフィール:安洋一郎】
1998年生まれ、東京都出身。高校2年生の頃から『MILKサッカーアカデミー』の佐藤祐一が運営する『株式会社Lifepicture』で、サッカーのデータ分析や記事制作に従事。大学卒業と同時に独立してフリーランスのライターとして活動する。現在は『フットボールチャンネル』をはじめ複数のwebメディアや欧州名鑑などに寄稿。12歳からアストン・ヴィラを応援し、プレミアリーグを中心に海外サッカー全般を追っている。Xアカウント:@yoichiro_yasu

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