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コラム 2026.10.4 11:41

マンC騒動で考える「経営の透明性」。ドルトムントの仕組みはプレミアでも通用するのか?【サッカーとお金】

ドルトムント サポーター
ドルトムントを後押しするサポーター【写真:Getty Images】



 マンチェスター・シティの財務規則違反を巡る問題は、クラブに入る資金の実態を誰が、どのように確かめるのかという問いを突きつけている。その視点から注目したいのが、ブンデスリーガ唯一の上場クラブ、ボルシア・ドルトムントだ。外部から資本を受け入れながら、経営の主導権を会員組織に残し、財務情報を公開する。その仕組みと限界から、クラブ経営の透明性を考える。(文:川﨑ゆうき)[2/2ページ]

ドルトムントの経営戦略はマネできるのか?

マンチェスター・シティ スタジアム
エティハド・スタジアムに掲げらられる獲得タイトル【写真:Getty Images】


 では、この仕組みをイングランドでも転用できるのか。

 まず、既存の所有者が持つ経営の支配権を会員側へ移すには、所有者との合意や株式取得の資金などが必要になる。外部資本と会員主体の運営を両立させる仕組みは参考になっても、現在の所有関係をそのまま導入するのはいくつものハードルがある。

 株式上場も、すべてのクラブに適した選択とは限らない。トッテナムは2011年に上場廃止を発表した 。同クラブはその方針を決定した際、スタジアム拡張に向けた資金調達の面で、上場が制約になっていると説明している。(出典:英国の上場企業に関するデータサイト『Investegate』)

 アーセナルの例も示唆的だ。同クラブの株式は小規模な株式市場で売買され、ファンを含む少数株主も保有していた。

 しかし2018年、筆頭株主のスタン・クロエンケ氏が、アリシェル・ウスマノフ氏の約3割の株式を買い取ることで合意し、保有比率は9割を超えた。残る少数株主の株式は、英国の買収ルールに基づく強制的な取得の対象となった(出典:英スポーツメディア『スカイスポーツ』)。

 抗議の意味で売却を拒んでいたファンも手放さざるを得ず、株式の取引も終了した。株式を買い集めれば経営を握れる構造では、ファンが株主として関わり続けることは難しい。株式の保有と経営の支配権を切り分けたドルトムントとは対照的だ。

 その一方でイングランドでは、所有形態の変更とは別に、経営への監視を強める動きが進んでいる。2025年に成立したサッカー統治法に基づく独立規制機関は、クラブの財務の持続可能性などを監督するために設けられた。

 また、プレミアリーグには、オーナーと関係の深い企業などとの取引が、公正な市場価値に基づいているかを審査するルールがある。この仕組みは2021年に導入されており、今回のシティへの裁定に先行するものだ。

 ドルトムントの仕組みを一式で移植するのは難しい。それでも、いかにして経営の健全性を確保するのか、不正の動機を抑制するためにどのような仕組みを作るべきかの問いは共有できるはずだ。

 上場という選択肢が現実的でないとしても、それぞれのクラブの歴史や所有形態に合った、実効性のある監視システムの策定は進むかもしれない。

(文:川﨑ゆうき)

【著者プロフィール:川﨑ゆうき】
都内のラジオ局で番組制作に従事した後、ライターへ転身した。音楽メディアのチーフ・エディターを歴任し、現在は様々な媒体に寄稿する。ロシア語能力検定と審判ライセンスは3級。

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