イタリア代表に、アフリカにルーツを持つ選手が増えている。モイーズ・キーンをはじめ、近年はA代表だけでなく、U-21やU-19といった育成年代でも多様な背景を持つ選手たちが存在感を示すようになった。一方、同じ欧州の強豪であるフランスやドイツとは、その歴史的背景や移民事情が大きく異なる。外国籍住民の数だけでは説明できない、各国代表の顔ぶれの違い。植民地支配の歴史や人口移動、国籍制度を手がかりに、イタリアサッカーの変化を読み解く。(文:佐藤徳和)[2/2ページ]
ドイツ代表も…
イタリアは19世紀末から第二次世界大戦期にかけて、現在のリビア、エリトリア、ソマリア、エチオピアなどを支配した。フランスと比べると、アフリカでの植民地支配が本格化した時期は遅く、支配した地域も異なっていた。
こうした歴史的な違いが、両国の移民の背景や人口構成に影響してきた可能性がある。
一方、ドイツも近年、多様なルーツを持つ選手が代表に加わっている国の一つだ。
ドイツ代表は2014年にW杯を制したものの、2018年と2022年大会ではグループリーグで敗退。2026年大会でも決勝トーナメント1回戦で敗れ、早期敗退となった。
こうした状況のなか、2026年夏に満を持してユルゲン・クロップが代表監督に任命された。だが、UEFAネーションズリーグ(リーグA・グループ2)では1勝2分け1敗と、結果を出すことはできなかった。
すると、SNSでは「ドイツ人らしさが足りない」「白人らしさが足りない」との声が挙がった。
クロップは、セルビア代表との対戦を前にした記者会見で「そもそも、こういう人たちについて考える理由はない。私の考えを彼らに奪われることもない。日常生活では愚かなことに費やす時間はないし、ソーシャルメディアに費やす時間もない」と心ない声を一蹴した。
ドイツでは、アンゲラ・メルケル政権下の2015年、難民危機を背景に人道的な受け入れが重視された。その後、難民受け入れをめぐる政治的対立が深まり、難民申請の審査や送還などの制度も段階的に厳格化されている。
ドイツ連邦統計局(Destatis)によると、2025年末のドイツの人口は約8,347万人で、欧州連合(EU)加盟国の中で最多だ。外国籍住民は約1,243万人で、総人口の約14.9%を占める。外国籍住民の割合はイタリアやフランスより高い。
ただし、外国籍住民には欧州各国の出身者も含まれ、この統計だけでアフリカ系住民や代表選手のルーツを説明することはできないが、ドイツ人選手の名前に、アフリカ系のみならず、東ヨーロッパ系や中東系と想起させる名前が多く目につくのも頷ける数字だ。
今後も増えていく?
ドイツは、前述の難民危機にあった2015年には114万人を、ウクライナ・ロシア戦争勃発後の2022年には146万人もの純移民(純移民数、のちに出国した人の数を除く)が記録しているが、2025年は約24万人まで減少している。
イタリアの純移民数は2020年に約15万人だったが、現在は約35万人にまで達している。
イタリア代表にアフリカにルーツを持つ選手、あるいはイタリア以外にルーツを持つ選手が比較的少なかった背景には、フランスとの植民地支配の歴史の違いや、ドイツとの近年の人口移動の規模の違いなど、複数の要因が関係している可能性がある。
ただし、代表チームの選手構成は、移民の数だけで決まるものではない。国籍取得の制度、競技人口、選手の育成や発掘の仕組みなども関わっている。
それでも、イタリアはA代表だけでなく、U-21やU-19といった育成年代でも、多様なルーツを持つ選手の存在感は増している。
とりわけ、アフリカ系選手は多くなっているのは事実だ。
今後もアフリカ系選手の増加傾向は変わらないだろう。
(文:佐藤徳和)
【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru
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