フットボールチャンネル

エンソ・フェルナンデスは“例外”になれるか。プレミアリーグ「締切日最高額補強」、過去10年で成功は2人

text by 内藤秀明 photo by Getty Images

マンチェスター・シティに移籍したエンソ・フェルナンデスマンチェスター・シティに移籍したエンソ・フェルナンデス【写真:Getty Images】


 マンチェスター・シティは移籍市場最終日の1日、チェルシーからアルゼンチン代表MFエンソ・フェルナンデスを5年契約で獲得した。英『スカイ・スポーツ』などによると、移籍金は英国記録に並ぶ1億2500万ポンド(約271億円)。大きな期待の裏返しとも言える金額だが、過去を振り返ると気になる傾向も浮かび上がる。プレミアリーグにおける「締切日最高額補強」は、新天地で迎えた最初のシーズンに苦戦するケースが目立っている。

プレミアリーグはU-NEXTで全試合独占中継!
断然お得なセットプランも登場「U-NEXTサッカーパック」に加入[PR]

締切日最高額補強、10年で明確な成功例は2人

 2016年から2025年までの10回の夏の移籍市場を対象に、プレミアリーグのクラブが締切日に獲得した完全移籍のうち、各年の最高額となった選手を振り返る。アドオンが設定されている場合には、英主要メディアが報じた最大額も考慮した。

 その顔ぶれを見ると、高額な移籍金が即座の成功につながったケースは意外なほど少ない。

 2018年、エバートンはバルセロナからコロンビア代表DFジェリー・ミナを2719万ポンド(約59億円)で獲得した。同じ日にフラムへ2230万ポンド(約48億円)で加入したアンドレ=フランク・ザンボ・アンギサを上回る、この日のプレミアリーグ最高額の補強だった。しかし、ミナは足の負傷で11月まで先発できず、シーズン終盤にもハムストリングを痛めて離脱。英紙『ガーディアン』はその初年度を厳しく総括している。

 2019年にアーセナルからエバートンへ移ったナイジェリア代表MFアレックス・イウォビも苦しんだ。移籍金は最大3400万ポンド(約74億円)で、この日のプレミアリーグ最大の加入案件だったが、初年度のリーグ戦では1ゴール。『ガーディアン』もシーズン終了後、費用対効果の低い補強だったと厳しく評価した。

 2020年にアーセナルへ加入したガーナ代表MFトーマス・パルティは、アトレティコ・マドリードに4530万ポンド(約98億円)の契約解除金を支払って獲得された。この日のプレミアリーグ最大の移籍だったが、初年度は負傷を繰り返した。『ガーディアン』も翌夏、最初の8カ月間は期待された水準に届かなかったと振り返っている。

 2021年には、ウェストハムがCSKAモスクワからクロアチア代表MFニコラ・ヴラシッチを2680万ポンド(約58億円)で獲得。これも締切日最大の取引だった。しかし、リーグ戦の先発はわずか6試合で1得点。英紙『イブニング・スタンダード』はシーズン終了後、アレックス・クラルと並ぶチーム最大の期待外れとして挙げた。

 さらに金額が跳ね上がったのが2022年だ。マンチェスター・ユナイテッドはアヤックスからブラジル代表FWアントニーを8200万ポンド(約178億円)で獲得。当時、締切日に成立した移籍として史上最高額だった。初年度のプレミアリーグでは25試合4ゴール2アシスト。数字だけを見れば一定の結果を残したものの、巨額の移籍金に見合うインパクトを示したとは言い難かった。翌シーズン序盤、『ガーディアン』は補強そのものを厳しく評価し、10点満点で4点を付けている。


エンソ・フェルナンデスは過去10年の“例外”になれるか

 2023年にマンチェスター・シティへ加入したポルトガル代表MFマテウス・ヌネスも、初年度のプレミアリーグ出場は17試合、654分にとどまった。締切日の最大案件となった移籍金は約5500万ポンド(約119億円)。翌シーズン、英放送局『スカイ・スポーツ』のアダム・ベイト記者は、ジョゼップ・グアルディオラ監督が中央で起用することに確信を持てていない状況を踏まえ、補強そのものへの疑問を投げかけている。

 2024年にはマンチェスター・ユナイテッドがパリ・サンジェルマンからウルグアイ代表MFマヌエル・ウガルテを獲得した。移籍金は基本4210万ポンド(約91億円)で、同日の最高額。加入から約1年後、『ガーディアン』はプレミアリーグのスピードやフィジカルへの適応について厳しい評価を下している。

 そして2025年。リバプールはニューカッスルからスウェーデン代表FWアレクサンデル・イサクを英国記録となる1億2500万ポンドで獲得した。しかし、負傷にも苦しみ、リーグ戦の先発は8試合にとどまった。シーズン終了後、『ガーディアン』は当時の記録的補強だったドイツ代表MFフロリアン・ヴィルツとイサクについて、期待されたほどシーズンの中心的存在にはなれなかったと総括している。

 一方、明確な成功例もある。

 2016年にパリ・サンジェルマンからチェルシーへ3400万ポンド(約74億円)で復帰したブラジル代表DFダビド・ルイスは、アントニオ・コンテ監督が採用した3バックの中央に定着。守備陣の軸となり、プレミアリーグ優勝に大きく貢献した。シーズン終了後には『ガーディアン』が補強成功例の一人として高く評価している。

 翌2017年、アーセナルからリバプールへ移ったイングランド代表MFアレックス・オックスレイド=チェンバレンも成功側に分類できる。基本移籍金3500万ポンドに最大500万ポンドのアドオンが設定された大型補強は、ユルゲン・クロップ監督の下で徐々に存在感を増した。シーズン終盤、UEFAチャンピオンズリーグ準決勝のローマ戦で重傷を負ったものの、それまでのパフォーマンスは『ガーディアン』にも高く評価されていた。

 もちろん、10年間の事例だけで「締切日の高額補強は失敗しやすい」という因果関係まで証明することはできない。負傷、チーム状況、監督との相性など、苦戦した理由もそれぞれ異なる。

 エンソには過去の事例にはないプラス材料もある。現在のシティを率いるエンツォ・マレスカ監督とはチェルシー時代にも共闘し、UEFAカンファレンスリーグとFIFAクラブワールドカップを制した。本人も加入後、再びマレスカ監督の下でプレーできることへの喜びを語っている。

 シティは今夏、中盤の顔ぶれを大幅に入れ替えた。ロドリ、ベルナルド・シウバ、ニコ・ゴンサレスらが退団した一方、エリオット・アンダーソンやアイユーブ・ブアディらを獲得。そこに加わったエンソには、単なる穴埋めではなく、新たな中盤の中心としての働きが求められる。

 ジンクスはあくまでジンクスだ。それでも、締切日に投じられた巨額の移籍金が、少なくとも初年度の成功を保証してこなかったのも事実である。英国記録タイの1億2500万ポンドという価格は、エンソに適応のための長い時間を与えてはくれない。過去10年の傾向を覆すことができるのか。その答えは、これからピッチ上で示すことになる。

(文:内藤秀明)

【関連記事】
今夏の移籍金最高額はエンソの約268億円。トップ10総額は昨夏を上回る約2119億円
プレミアリーグ移籍情報|全20クラブ加入・退団【2026/27シーズン】
プレミアリーグ2026/27|試合日程・結果・順位表・得点ランキング・日本人選手・移籍情報


『フットボールチャンネル』でサッカー最新情報を見よう!
いち早くチェックしたい方は下記リンクから↓↓


【了】

KANZENからのお知らせ

scroll top