
コミュニティシールドを制したアーセナル【写真:Getty Images】
プレミアリーグ王者のアーセナルは、今夏の移籍市場でも大きな存在感を見せた。昨夏ほど多くの選手を加えてはいないが、確かな質を備えた選手を獲得した。そこにはどのような意図があり、今夏の補強はチームの課題を解決するものだったのか。「獲得」「放出」「計画性」「バランス」「コスパ」の5項目を各20点、計100点満点で採点する。(文:安洋一郎)[1/2ページ]
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即戦力を求めた夏

アーセナル加入主力選手【写真:Getty Images】
昨季、22年ぶりのプレミアリーグ優勝を果たしたアーセナル。スカッドの平均年齢も26〜27歳 と、全盛期を迎えている選手や、これからさらに脂が乗ってくるであろう選手が多く、ミケル・アルテタ体制での「積み上げ」が実りつつある。
今季もリーグ2連覇に加えて、複数のタイトル獲得が至上命題となる中、今夏は8人の新戦力を加えた昨夏ほどの大型補強には動かなかった。
それでも左WGにクリストス・ツォリス、中盤にブルーノ・ギマランイス、CBにエズリ・コンサを獲得。特に後者の2人の加入には、これまでのアルテタ体制における補強戦略とは異なる意味合いがあるだろう。
これまでのアーセナルは、「若い監督」と「若い選手」を軸に長期的な強化を進めるプランを採ってきた。大金を投じて獲得した選手も基本的には20代中盤までの若手が多く、すでに完成された選手を獲得するケースは稀だった。
それが今夏は、ニューカッスル・ユナイテッドとアストン・ヴィラで長期的に主力を務めていた20代後半の2人を獲得。適応に要する時間が少ない彼らを、FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)明けのシーズンに加えられたのは非常に大きいだろう。
中盤はデクラン・ライス、マルティン・ウーデゴール、ミケル・メリーノ、マルティン・スビメンディ、マイルズ・ルイス=スケリーと、一見するとギマランイスを獲得せずとも十分に回るだけの選手が揃っているように思える。しかし、新加入のブラジル代表MFを含めた6人のうち5人がW杯に出場しており、昨季までの勤続疲労に加えて今オフの短さを考えれば、欧州カップ戦が始まってからの過密日程でチームを助ける存在になるだろう。
問題は、この分厚い選手層をアルテタ監督が使い分けられるかどうかだ。「完璧主義者」でもある同監督は、ほぼすべての試合でベストメンバーを採用して戦う傾向にある。
しかし、シーズン終盤にかけて過密日程となる中で特定の選手に負担が集中し、失速するというのが一昨季までの流れだった。そうした中で、「ベストメンバーを複数パターン作れる」ようにした昨季からのフロントの補強戦略は、監督を助けるという意味でも見事だと言える。
数少ない懸念点は?

レアンドロ・トロサール&ガブリエウ・マルティネッリ【写真:Getty Images】
一方で、懸念点があるとすれば、レアンドロ・トロサールとガブリエウ・マルティネッリの2人が退団した左WGだろう。
現状では、今夏に加入したツォリスを一番手とし、トップ下との兼業になるエベレチ・エゼ、本職が右WGのノニ・マドゥエケを含めた3人を起用するプランがあると考えられる。
しかし、今夏の当初のプランでは、ツォリスに加えてイングランド代表MFモーガン・ロジャーズの獲得も目指していた。アストン・ヴィラとのクラブ間交渉では移籍金に大きな隔たりがあり、最終的にロジャーズは1億1700万ポンド(約234億円)という英国人史上最高額の移籍金でチェルシーへ移籍した。
この時点で、アーセナルが左WGにプラスアルファの戦力を加えたかったことは明らかだろう。ロジャーズも本職は左WGではないが、現在のアーセナルはリッカルド・カラフィオーリが敵陣で幅を取る役割を担っており、インサイドで強烈な個性を発揮できる選手を求めていたと考えられる。
ツォリスとエゼは十分すぎる戦力と言えるかもしれないが、プレミアリーグの強度をフルシーズンにわたって主力として経験したことがないツォリスへの負担は大きくなるだろう。
すでに第2節のアストン・ヴィラ戦では、素早く寄せてくる右サイドの相手DFに大苦戦を強いられており、より経験豊富なエゼがどれだけ負担を減らせるのかも重要になる。
ウィリアン・サリバが長期離脱中のCBは、コンサが完璧に穴を埋めると予想される。しかし、もう一つ懸念があるポジションを挙げるとすれば、GKだろう。
正GKのダビド・ラヤとサブのケパ・アリサバラガでは、プレーの幅があまりにも違いすぎる。前者はショットストップに加えて、クロスへの対応や両足を使ったディストリビューションも最高峰のレベルにある一方、後者はいずれの能力でも劣る。
アーセナルの戦い方は、ラヤがいることを前提に作られている。ここがケパに変わるだけで、一気にチームとしての完成度が落ちる可能性がある。今夏に加入したイラン・メリエでも解決される問題ではないだろう。
そのため、ラヤをどこまで安定して起用できるのかという点は、今季も焦点になるだろう。