
日本代表の塩貝健人【写真:Getty Images】
日本代表の塩貝健人が9月24日、ウルグアイ代表戦で待望の代表初ゴールを決めた。今年3月にA代表へ初招集され、北中米W杯にも出場したものの無得点に終わり、クラブでも苦しい時期を過ごした。1-1で迎えた後半アディショナルタイム、上田綺世のスルーパスから決勝点を奪った21歳は試合後、自身のプレーを振り返り、結果を追い求めるだけではない成長への意識を口にした。
「点が、点がとなるとボールしか見えなくなる」。塩貝健人が語った自身の課題
塩貝健人にとって、ここまでの半年間は決して平坦なものではなかった。
今年3月のイギリス遠征でA代表に初招集され、北中米W杯のメンバーに選出されたが、無得点に終わった。大会期間中にはブラジル代表について発した言葉が注目を集め、批判を含めてさまざまな反応が寄せられた。
所属するヴォルフスブルクも昨季ドイツ2部へ降格。クラブでゴールが生まれないなか、なぜ今回代表に招集されたのか、という声にもさらされた。
塩貝自身、「すごく悔しい思いだったり、日々を過ごした」と振り返る。だからこそ、代表で結果を残したいという思いは強かった。
ウルグアイ戦でも、その姿勢は随所に表れた。83分から途中出場すると、狭い局面からドリブルで仕掛けにいった。その後にもスルーパスに抜け出し、相手DFに囲まれながらも果敢にシュートまで持っていこうとした。
だが、いずれもフィニッシュまではいけず、ともすれば、数的優位を活かせない、味方を活かすプレーを選択できないと言われてもおかしくはなかった。
それでも、最後に結果を手にした。
1-1で迎えた90+1分。右サイドの伊東純也からボールを受けた塩貝は、中央の上田綺世へシンプルに預ける。そのまま前へ走り出すと、上田から絶妙なスルーパスが届いた。GKと1対1になった塩貝は右足でゴールへ流し込み、日本代表初ゴールとなる決勝点を奪った。
積極的に仕掛け続けた末にたどり着いたゴール。ただ、塩貝はそれだけで自身のプレーを肯定しなかった。
「本当に試合に出続けるためには、ああいうところは改善していかなきゃいけないポイントだと思うし、名波(浩)さんだったり、長谷部(誠)さんからも『もっとシンプルにやってもいいんじゃないの』と指示をもらえたし、選手の中でも言われた。
『点が、点が』となるとボールしか見えなくなって、実際にあのシーンでも外が見えていなかったので、そこは僕の改善できるところだと思う。このゴールだけで満足せずにそういうところをしっかり改善できるように、まだ3試合あるので、どんだけチャンスがあるかわかんないですけど、また違った部分を見せれたらなと思います」
課題は明確だ。ゴールへの意識が強くなるほど、自分の周囲にいる味方が見えなくなる。仕掛けること自体が問題なのではなく、仕掛けるべき場面と、シンプルに味方を使う場面を見極めること。その判断力が、今後さらに出場時間を増やしていくためのポイントになる。
そして、その部分を決勝点のアシストという形で間近に見ていたのが上田だった。
上田綺世が語った「思考力」。塩貝健人が見せる強気な姿勢の裏側

「メディアでは結構強気なことを言ったりとか、振る舞いもそういうふうに見えることはあると思うんですけど、彼は頭もいいし、考えながらサッカーをやってるなって僕には伝わってくるし、いろんなことを何でも吸収して自分の力にしようっていう、そういうがむしゃらな姿勢はすごい。僕はそうなのかなって勝手に思ってる」
メディアの前では強気な言葉を発し、振る舞いもそう見えることがある。だが、上田が見ているのは、その表面だけではない。
「その前はドリブルして、自分で仕掛けて、そこもがむしゃらにやってましたけど、そこを考えながら冷静に判断できるところもそうだし、ああやって身体能力がありつつも、そこまで背が高くない。でも、それでもやっぱりヨーロッパで活躍できているのは思考があってこそだと思う」
実際、決勝点の場面で塩貝が見せたのは、直前までとは違うプレーだった。自ら突破を試みるのではなく、上田に預けて動き直す。結果として、その判断が自分をフリーにし、ゴールへとつながった。
その上田を、塩貝は「ライバル」だと表現する。試合後には、上田が3点目を決めた後の姿にも刺激を受けた。
「上田選手がああやって3点目を決めて、涼しい表情をしてたんで、そういう意味では俺ももっとこの1点で喜んでる場合じゃないし、もっともっと上手くなって、もっと点を取れるようになりたいなと思ってます」
さらに、自らの決勝点を生んだプレーを振り返りながら、上田から吸収すべきものを口にした。
「簡単にやるからこそ自分がフリーになれることもあると思う。上田選手に落として、自分がフリーでもらうプレーをもっと増やせればいいと思う」
「もっと仕掛けたい」、「もっと点を取りたい」という強烈な欲を持ちながら、その欲だけに突き動かされるのではなく、自分に足りないものを認め、周囲から吸収しようとしている。
塩貝が口にしたのは、ゴールを決めた喜びよりも、自身への課題だった。
「もう僕はボールウォッチャーになって使えなかったっていう表現が正しいと思うんで、そこは課題だと思う。本当に映像を見返して、うまい選手はこのチームにもいっぱいいるので、そこは改善できるところだと思うので、この期間を無駄にせずにやっていければなと思います」
日本代表では4試合目にして、待望の初ゴール。だが、塩貝にとっては到達点ではなく、むしろここから先へ進むための一歩だ。
ゴールへ向かう積極性はそのままに、預けて動く、周囲を見る、状況に応じて判断する。自らの強みを失わずに足りない部分を吸収していく――。代表初ゴールを決めた21歳は、喜びに浸るよりも早く、次に身につけるべきものへ視線を向けている。
(取材・文:竹中愛美)
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