フットボールチャンネル

「警察がサッカー協会を占拠」一体何が? FIFA理事の会長“解任”、ジブチで政府介入の異常事態

text by 編集部 photo by Getty Images

スレイマン・ハッサン・ワベリ氏
ジブチサッカー連盟会長であり、FIFA理事会のメンバーでもあるスレイマン・ハッサン・ワベリ氏【写真:Getty Images】



 アフリカ東部のジブチで、警察がサッカー連盟本部に入り、FIFA理事を務める会長らを退去させる異例の事態が起きた。資金管理をめぐる対立の末に“解任”が決議されたが、会長側は政府による不当介入だと反発している。

欧州サッカーはU-NEXTで!
断然お得なセットプランも登場「U-NEXTサッカーパック」に加入[PR]




FIFA理事の会長“解任”を巡る異常事態

 アフリカ東部の小国ジブチで、異例の事態が起きている。

 警察がジブチサッカー連盟(FDF)の本部に入り、会長や職員らを建物から退去させた。その後に開かれた臨時総会では、会長と執行部の「解任」が決議された。

 その会長は一国のサッカー協会を率いているだけの人物ではない。国際サッカー連盟(FIFA)の主要意思決定機関であるFIFA理事会のメンバー、スレイマン・ハッサン・ワベリ氏だ。

 一方、FDF側は解任を認めていない。臨時総会は正規の手続きを踏んでおらず、警察を伴った政府による不当な介入だとして、FIFAとアフリカサッカー連盟(CAF)に報告している。FIFAとアフリカサッカー連盟(CAF)に報告。

 実際、10月6日時点でFIFA公式サイトは、現在もワベリ氏をFDF会長、そしてFIFA理事として掲載している。

 国内の資金管理をめぐる問題から始まった対立は、国際サッカー界を巻き込む騒動へと発展している。

 ジブチサッカー界で、一体何が起きているのか。

 ワベリ氏はFDF会長を務める一方、CAF執行委員会、FIFA理事会にも名を連ねるアフリカサッカー界の有力者だ。

 ジブチ代表は、7月20日に発表された最新のFIFAランキングで196位。ワールドカップ本大会への出場経験もないが、その協会トップであるワベリ氏はFIFA理事として、世界のサッカー行政の中枢に名を連ねている。

 対立の背景にあるのが、FDFの資金管理をめぐる問題である。

 通信社『AFP』が入手した2024年の政府監査報告では、FDF本部の建設契約をめぐる業者選定や価格設定などに問題があったと指摘された。さらに英紙『The Guardian』によると、警察は約50万ポンドにのぼる現金支出についても調査を進めている。

 AFPによれば、FDFにはFIFAとCAFから年間100万ドル以上が提供されているという。


 一方、ワベリ氏は不正を否定し、FIFAから提供された資金については、FIFAの監視で不正の兆候は確認されていないと反論している。

 ただ、国内ではワベリ体制への反発が強まっていた。今年9月には複数のクラブがワベリ氏と執行部の退陣を要求。政府側もFDFに臨時総会の開催を求め、対立は一気に表面化した。

 そして10月5日、事態は異例の展開を迎える。警察がFDF本部に入り、ワベリ氏や職員らを建物から退去させた。その後に開かれた臨時総会では、ワベリ氏と執行部の解任が決議され、暫定委員会が設置された。

 ただし、争いはこれで決着したわけではない。ワベリ氏側は、総会そのものが正規の手続きを踏んでいないとして決議を認めず、政府による不当な介入だとFIFAとCAFに訴えている。

 つまり今回の騒動は、単なる協会内の権力争いではない。資金管理の透明性を求める政府側と、加盟協会の独立性を重視するFIFA側の論理がぶつかっている。

 政府がサッカー協会の資金管理を調査すること自体は不自然ではない。一方でFIFAは、加盟協会が政府を含む第三者から独立して運営されることを厳格に求めている。

 しかし、ここで一筋縄ではいかないのが、加盟協会に独立性や適切な組織運営を求めるFIFA自身も、長年にわたってその統治のあり方を問われてきたということだ。

 FIFAでは、2015年に表面化した「FIFAゲート」をはじめ、その後も要人による汚職や資金管理をめぐる問題が繰り返し浮上してきた。

 もっとも、ワベリ氏について同様の不正が認定されているわけではなく、本人も疑惑を否定している。

 ただ、今回の問題はFIFAの組織統治とも無関係ではない。ワベリ氏はFIFA理事としてインファンティーノ会長と直接関わり、2022年にはパリでジブチへの支援などを協議している。

 そのインファンティーノ氏を巡っては、2026年ワールドカップでアメリカ代表FWフォラリン・バログンの出場停止処分の執行が停止された際、ドナルド・トランプ米大統領が事前に同氏へ見直しを求めていたことが明らかになり、FIFAの懲戒手続きの独立性を巡って議論を呼んだ。

 加盟協会への政治介入を厳しく禁じる一方、その内部統治や資金管理の透明性をどこまで担保できるのか。

 ジブチで起きている今回の騒動は、一国のサッカー協会だけの問題ではない。誰が加盟協会を監督し、誰がFIFAの中枢を監督するのか。ワベリ氏を巡る一件は、FIFAが今も抱えるガバナンスの難しさを改めて浮かび上がらせている。

【関連記事】
マンC騒動で考える「経営の透明性」。ドルトムントの仕組みはプレミアでも通用するのか?【サッカーとお金】
マンCに違反認定。でも「オーナーの金」は悪なのか? 巨大資本が変えたプレミア、「FFP」が生まれた背景とは【サッカーとお金】
マンC、プレミアリーグの“選手”から賠償請求も 複数選手がすでに弁護士へ相談、有罪認定覆せなければ法的措置も



『フットボールチャンネル』でサッカー最新情報を見よう!
いち早くチェックしたい方は下記リンクから↓↓




【了】

KANZENからのお知らせ

scroll top