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エムバペはなぜ中国で大炎上した? 「独裁者」ジョークが招いた異例の騒動。絶大な人気が裏目に出た理由

text by 編集部 photo by Getty Images

キリアン・エムバペ
レアル・マドリードFWキリアン・エムバペ【写真:Getty Images】



 レアル・マドリードに所属するフランス代表FWキリアン・エムバペが、中国で猛烈な批判を浴びている。なぜ、自身を「独裁者」になぞらえたインターネット上のジョークへの言及が、これほど大きな騒動に発展したのか。[1/2ページ]

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「確か、中国の独裁者だったと思う」

 問題となったのは、レアル・マドリードの同僚オーレリアン・チュアメニが司会を務めるフランスのトーク番組『The Bridge』のインタビュー映像だ。

 同インタビューのなかでキリアン・エムバペは、自分を題材にしたインターネット上の画像や動画、いわゆる「ミーム」のうち、最も面白かったものを尋ねられ、「確か、中国の独裁者だったと思う」と、自身の顔を歴史上の人物に合成した画像について言及した。

 その人物とは、1949年に中華人民共和国の建国を宣言した毛沢東だった。エムバペは友人とのやり取りでもこの画像を使用していると語ったが、その発言が中国のSNS「微博(Weibo)」などで拡散され、批判が殺到した。

 そもそも、エムバペはパリ・サンジェルマン(PSG)時代から、クラブの経営や人事にまで強い影響力を持っていると噂されてきた。

 こうしたイメージを皮肉り、歴史上の独裁者の顔をエムバペに置き換えたミームがSNS上で流行。2026年春にはTikTokなどでも人気を集め、さまざまな歴史上の人物を使った画像が拡散されていた。

 今回の発言も、そうしたミームのひとつに言及したものだった。

 しかし、中国では単なるネット上のジョークでは済まされず、スポンサー企業が相次いで契約を打ち切り、ラ・リーガの試合中継にも影響が及ぶなど、騒動はサッカービジネス全体に波及している。


なぜ毛沢東へのジョークは御法度なのか?

 なぜ、今回の「独裁者」発言はこれほど大きな問題に発展したのだろうか。その理由のひとつに、中国における毛沢東の特別な位置づけがあると考えられる。

 毛沢東は1949年に中華人民共和国の建国を宣言した指導者であり、現在も中国共産党の歴史的正統性を象徴する存在だ。中国の公式な歴史観では「偉大な指導者」として位置づけられており、「独裁者」という評価とは大きく異なる。

 中国では革命の英雄らの名誉を保護する法律も整備されており、政治的に重要な歴史上の人物を侮辱するような表現は、単なるジョークでは済まされない場合がある。

 実際、中国では海外のスポーツ選手や関係者による発言が政治的な問題として受け止められ、競技そのものや商業活動にまで影響が及んだ例もある。

 2019年、当時アーセナルに所属していたメスト・エジルが、中国の新疆ウイグル自治区における人権問題を批判した際には、中国国営テレビが同クラブの試合中継を取りやめた。

 同年には、NBAのヒューストン・ロケッツ幹部が香港の抗議活動への支持を表明し、中国でNBAの放送やスポンサー契約に大きな影響が生じたこともあった。

 一方、今回のエムバペは、彼らのように政治的な主張を行ったわけではない。

 それでも騒動がここまで拡大した背景には、中国におけるエムバペ自身の絶大な知名度と、広告塔としての影響力もあると考えられる。


中国中にエムバペの広告が…絶大な人気が裏目に

 中国では、エムバペはファンから「亀亀(グイグイ)」という愛称でも親しまれ、多くの企業が広告塔に起用するスターだった。

 飲料大手の東鵬飲料(Eastroc Beverage)は、2026年4月にエムバペをブランドアンバサダーに起用。同年のFIFAワールドカップに合わせて大々的な広告キャンペーンを展開した。

 さらに、乳業大手の蒙牛乳業(Mengniu Dairy)ではリオネル・メッシとともに広告に出演。乳製品メーカーの妙可藍多(Milkground)もエムバペを起用していた。

 しかし、問題の映像が拡散された27日、これら3社は相次いで提携終了を発表。微博では、東鵬飲料の契約解除に関する話題の閲覧数が4億回近くに達した。

 さらに、微博ではエムバペのボイコットを呼びかける話題がトレンド入りし、本人の顔が印刷された商品の撤去を求める声も上がった。

 中国のSNS「小紅書(RedNote)」では、エムバペの公式アカウントが投稿禁止となり、新たにフォローすることができなくなるなど、騒動はSNS上での活動にも影響を及ぼしている。

 スポンサー各社にとって、こうした批判が自社の商品への不買運動に発展するリスクは無視できない。

 中国では過去にも、政治的な問題をきっかけに不買運動が広がり、企業活動に深刻な影響が及んだ例がある。

 中国で広く知られ、多くの商品の顔になっていたからこそ、その発言も大きな注目を集めた。エムバペの商業的な価値の高さが、皮肉にも騒動の影響を拡大させる一因となったのかもしれない。

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