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鈴木彩艶は元パルマの先輩・中田英寿を超えたのか? 英国で評価高まる日本人GKの現在地

text by 内藤秀明 photo by Getty Images

アストン・ヴィラGK鈴木彩艶
アストン・ヴィラGK鈴木彩艶【写真:Getty Images】



 アストン・ヴィラ所属の日本代表GK鈴木彩艶が、英国で“英雄”になりつつある。10月24日のプレミアリーグ第8節、ヴィラは開幕7連勝中だったマンチェスター・シティを2-1で破り、英放送局『TNTスポーツ』は勝因として、鈴木と同僚のDFマティ・キャッシュによる「英雄的な守備」を挙げた。日本人GKとして新たな歴史を切り開く鈴木だが、その実績は、かつて同じパルマでプレーした元日本代表MF中田英寿と比べて、どこまで到達しているのだろうか。(文:内藤秀明)

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中田と鈴木、それぞれの道のり

 英誌『フォーフォーツー』は今年6月、鈴木のパルマ加入について、「日本が海外に送り出した中で最も偉大とも言える選手」の足跡をたどる移籍と紹介していた。その選手こそ、2001年からパルマでプレーした中田英寿だ。

 中田がペルージャへ移籍したのは、日本代表がワールドカップ(W杯)に初めて出場した1998年の夏だった。当時「世界最高峰」と呼ばれたセリエAのデビュー戦でユヴェントスから2ゴールを奪い、2000年1月にはローマへ引き抜かれる。

 2001年5月6日、2位ユヴェントスとの首位攻防戦では、0-2で迎えた後半に同僚のイタリア代表FWフランチェスコ・トッティに代わってピッチに立つと、79分にミドルシュートで1点を返し、アディショナルタイムの同点ゴールにも絡んだ。ローマはこの2000/01シーズン、18年ぶりのスクデットを手にしている。

 その夏、中田は2840万ユーロ(当時の報道による推定額)の移籍金でパルマへ移った。英サッカーメディア『プラネット・フットボール』によれば、当時のアジア人選手として史上最高額で、同メディアの試算では現在の移籍市場の相場で6400万ポンドに相当するという。

 パルマでは定位置を確保し切れなかったものの、加入1年目にはコッパ・イタリア決勝第1戦のユヴェントス戦で、アディショナルタイムにボレーシュートを叩き込んだ。敵地で奪ったこの1点がものを言い、パルマは第2戦を1-0で制してタイトルを手にする。その後はプレミアリーグのボルトンなどを経て、2006年に29歳で現役を退いた。



 中田がパルマへ移ってから25年。日本人選手が欧州でプレーするのは珍しくなくなった。ただ、GKとなると話は別だ。

 鈴木は2024年夏にパルマへ加入し、セリエA史上初の日本人GKとなる。加入後は正GKとしての地位を確立し、2シーズンにわたってプレーした。

 そして今年8月19日、パリ・サンジェルマン(PSG)への移籍が破談となった後、3000万ユーロに最大500万ユーロのボーナスを加えた移籍金でヴィラへ移ったと報じられている。

 プレミアリーグ史上初の日本人GKとなった鈴木は、加入後から正GKに定着し、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のリーグフェーズでも先発。男子の日本人GKとして初めて同大会の舞台に立つ快挙を成し遂げた。

 10月24日のマンチェスター・シティ戦では、好セーブでチームの勝利に貢献。さらに試合後、キャッシュは鈴木の足元の技術を絶賛し、加入直後の練習では中盤の選手を獲得したのかと思ったほどだったと明かしている。

中田超えの条件は欧州でのタイトルか

 改めて両者を比べると、移籍金の額面では、基本額3000万ユーロと報じられた鈴木が中田の推定2840万ユーロをわずかに上回る。

 ただ、相場の上昇を考えれば、パルマが中田に払った額の重みは別格だ。中田は日本人選手がまだ少なかったセリエAで、スクデットとコッパ・イタリアを手にした。一方の鈴木は、日本人GKの前例がない舞台で、CLを戦うクラブの最後尾を任されている。

 両者はポジションも時代も異なるため、単純に優劣をつけることは難しい。しかし、欧州のトップレベルで残した実績という点では、現時点で中田に分があるだろう。

 鈴木が今後、中田を超える存在として評価されるための条件の一つが、欧州での主要タイトル獲得だ。

 鈴木自身も浦和レッズ時代にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)制覇を経験している。2022年大会では4試合に出場し、クラブのアジア制覇に貢献した。ただ、欧州ではまだ主要タイトルを獲得しておらず、その点では中田との間に差がある。

 もっとも、それを手にする環境は整っている。ヴィラを率いるウナイ・エメリ監督はUEFAヨーロッパリーグ(EL)で通算5度の優勝を誇り、2025/26シーズンにはヴィラに30年ぶりのタイトルをもたらした。



 カップ戦にめっぽう強い指揮官のもとなら、鈴木が正GKとしてトロフィーを掲げる可能性は十分にある。

 また今夏、PSGへの移籍が実現寸前まで進んでいたように、欧州のビッグクラブから評価される存在にもなっている。今後、ヴィラで実績を重ねれば、さらなるステップアップの可能性も広がるだろう。

 もちろん、中田が築いた実績はタイトルだけでは測れない。日本人選手が欧州で活躍すること自体が珍しかった時代に、セリエAの強豪クラブで結果を残し、その後の日本人選手の海外進出に大きな影響を与えた功績がある。

 ただし、鈴木も日本人GKとして前例のなかった領域に踏み込み、プレミアリーグやCLで新たな歴史をつくり始めている。

 中田英寿を完全に超えたと評価するには、まだ時間が必要だろう。それでも、24歳にして欧州のトップレベルで正GKを任されている鈴木の歩みは、十分に比較の対象となるものだ。

 日本人選手の可能性を世界に示した中田から25年。鈴木が日本人GKの新たな基準をどこまで引き上げるのか、今後の活躍が注目される。

(文:内藤秀明)

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