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ドイツと日本では、いまだ埋められない差が存在している。ボール奪取者自身がどのようにプレーすべきかを、ドイツ・ブンデスリーガで7年半プレーした酒井高徳を例に説明する。そして、ドイツサッカーの根本にある「BoS理論」を知り尽くす筆者が、日本サッカーに存在する根本的な問題に切り込んでいく。(文:河岸貴)
『サッカー「BoS理論」 ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法』
カンゼン・刊
河岸貴・著
ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法論「BoS(ベーオーエス)理論」(Das Ballorientierte Spiel:ボールにオリエンテーションするプレー)が足りていない日本サッカーの現状に警鐘を鳴らす。ドイツ・ブンデスリーガの名門シュトゥットガルトで指導者、スカウトを歴任した著者が、日本のサッカーの現状を直視しながら、「BoS理論」におけるボール非保持時の部分、「Ballgewinnspiel:ボールを奪うプレー」の道筋をつけた一冊。
プレッシャーが弱い場合にどうするか?
3 ボール奪取者のプレー態度(相手のプレッシャーあり/なし)
話を本筋に戻します。3では、1「Erster Blick in die Tief」(エアスター・ブリック・イン・ディ・ティーフ=最初に前方を見る)の項で述べたボール奪取後のボール保持者の状況を考えた前線の受け手のプレー態度ではなく、ボール奪取者(保持者)自身どうプレーすべきかを具体例で説明したいと思います。
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プレッシャー下の場合、前述したレヴァークーゼン対ケルン戦の2点目のように、ボール奪取者には足元で受ける選手のサポートが必要です。一か八かのクリア気味のボールで背後を狙うのではなく、ボールを受けにくる味方を素早く見つけ、出来る限りボールを繋ぎます。一方でボール奪取者がすぐにゲーゲンプレスを受けない、比較的プレッシャーの弱い場合はどうプレーすべきでしょうか。
その好例は、2025年のJ1第14節、ヴィッセル神戸対ファジアーノ岡山の33分のプレーです。神戸陣内の左サイド深くから神戸のスローインから始まります。
岡山はスローインに圧縮した陣形で構えます。前方に長く出されたスローインは競り合いで五分五分になり、それを岡山が拾い中央のFWに送ろうとします。狭い局面から出されたそのダイレクトパスはズレてしまい、ボールにしっかりとオリエンテーションして構えていた神戸の右サイドバック(SB)酒井高徳へのプレゼントパスになります。

【図5-1】オープンスペースにテンポあるドリブルで可能な限り前進
酒井は間髪入れずにボールを前へ運びます(図5-1)。躊躇なく前進し、3人に囲まれた時点でワントップの佐々木大樹の足元に鋭い縦パスを送り、佐々木はダイレクトで並走していた右ウイング(WG)のエリキにパス、エリキはGKと1対1になりますが、残念ながら得点にはなりませんでした。
ここでは酒井の動きを中心に解説します。ボール非保持時の逆サイドのSBとしてのポジショニングは素晴らしいものでした。日本ではSBに限らず、ボール非保持時における逆サイドの選手たちのポジショニングに意図を感じず、「BoS」とは程遠いものです。