明治安田J1リーグ第30節、アルビレックス新潟は横浜FCに1-0で敗れ、残留圏に位置する17位横浜F・マリノスとの勝ち点差は8に広がった。試合後、ピッチに顔をうずめたまま動けなくなった田代琉我の背中を押したのは、意外にも主審のひと言だった。悔しさと感謝を胸に、新潟の守護神は必死に前を向く。(取材・文:藤江直人)
裏天王山に敗れたアルビレックス新潟

【写真:Getty Images】
背中に手をあてられた。誰なのかはアルビレックス新潟のゴールキーパー田代琉我にはわからなかった。おそらくはチームメイトが駆け寄ってきたのかもしれない。次の瞬間、声が聞こえてきた。
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「下を向かないで、田代さん。次、また頑張ってください」
驚いて顔をあげた田代の視界に飛び込んできたのは中村太主審の姿だった。新潟の敗戦を告げるホイッスルを鳴り響かせたばかりのレフェリーにうながされる形で立ち上がった田代は、必死に顔をあげながら試合終了のために並んでいた仲間たちの列に加わった。その胸中には感謝の思いが頭をもたげていた。
「レフェリーの方に前向きな声をかけられるというか、試合を終えたばかりの選手に対してそのように言ってもらえるのはなかなかない経験だし、自分のなかでも少し前向きになれたと思っています」
横浜FCのホーム、ニッパツ三ツ沢球技場に乗り込んだ20日のJ1リーグ第30節。キックオフ前の時点で、勝ち点20で最下位の新潟に対して横浜FCは同24で19位。裏天王山とも言われた6ポイントマッチで敗れた瞬間に田代は自陣の中央でひざまずき、さらにピッチに顔をうずめたまま動けなくなってしまった。
中村主審が思わず労いに駆け寄るほど痛々しい姿。泣いていたわけではないと田代が続ける