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J2 2か月前

「ゴリさんに呼ばれて…」堀田大暉抜擢の舞台裏。30歳のベガルタ仙台デビュー、1週間前の出来事を森山佳郎監督は見ていた【コラム】

シリーズ:コラム text by 小林健志 photo by Getty Images

 ベガルタ仙台は9月20日、明治安田J2リーグ第30節でモンテディオ山形と対戦し、3-1で勝利した。開幕からリーグ戦全試合に出場してきたGK林彰洋が欠場という緊急事態でゴールマウスに立ったのは、前節までベンチ入りすら叶わなかった堀田大暉だった。アカデミー時代を過ごしたクラブに今季30歳で戻って来た苦労人は常に良い準備を続けていた。(取材・文:小林健志)

紆余曲折を経て、堀田大暉がべガルダ仙台に加入するまで

ベガルタ仙台 堀田大暉

【写真:Getty Images】

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「負けはおろか引き分けすら許されない」

 試合前にベガルタ仙台の森山佳郎監督が選手の前でこう語ったみちのくダービー。前半に先制を許すも、後半、MF相良竜之介のゴールで追いつき、さらにはキャプテンのMF郷家友太、FW宮崎鴻もゴールを決めて、3-1で快勝した。

 歓喜に沸く仙台サポーターの歌声がとどろき、勝利を喜ぶ選手たちの輪の中に、今季初出場のGK堀田大暉の姿があった。GK林彰洋がコンディション不良で欠場という緊急事態の中、前半失点はしたものの、左足の正確なキックから決定機を演出するなど自身の持ち味も見せて、勝利に貢献した。

 現在30歳の堀田は、地元・宮城県仙台市出身。加茂FCからベガルタ仙台ジュニアユースに入った時は小柄な選手だったが、正確な左足のキックで攻撃の起点になれることと、確実なシュートストップを武器に頭角を表し、ユース昇格を果たした。

 ユース時代は現在J1の鹿島アントラーズでプレーするDF千田海人らとプレー。高校3年時、それまでグループステージ突破を一度も果たしたことのなかった日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会で、初のグループステージ突破、ベスト8進出を果たし、歴史をつくった代の一人だ。

 しかし、トップ昇格は果たせず、東海大学に進学。東海大学で活躍し、仙台に練習生として呼ばれたこともあったが、大卒での仙台入りは叶わなかった。そして、2017年に隣県のJ3クラブ、福島ユナイテッドFCでプロキャリアをスタートさせた。ルーキーイヤーはケガもあり出場は無かったが、2年目からレギュラーに定着。持ち味の左足のキックとシュートストップはJリーグの舞台でも通じることを証明した。

 そして、2020年、福島と提携を結ぶJ1の湘南ベルマーレへ完全移籍する。しかし、湘南では出場機会が無く、2022年4月、当時J2のファジアーノ岡山に加入する。ここで好パフォーマンスを見せレギュラーに定着すると、同年5月には岡山の選手としてプロになって初めてユアテックスタジアム仙台のピッチに立った。

 仙台のGKはユースの後輩である小畑裕馬(現・アビスパ福岡)。仙台ユースGK対決となった試合は、互いにゴールを許さず0-0の引き分けに終わった。翌2023年も岡山でレギュラーとしてプレーしたが、昨年はGKスベンド・ブローダーセンがレギュラーとなり、堀田はサブGKとなった。チームはJ1昇格を果たしたが、堀田は地元である仙台への完全移籍を決断する。

 今年1月に行われた新加入会見で堀田は「2013年にユースを卒業したぶりにこのベガルタ仙台のエンブレムを背負って戦えることをとても光栄に思っていますし、すごく嬉しいです。その気持ちを熱いプレーに変えてみなさんの前で勝利に貢献する姿を見せたいですし、僕が子どもの頃、夢を与えてくれた先輩方のように、今度は僕が今の子どもたちに夢を与えられるプレーをスタジアムで披露したいと思います」と地元の子どもたちへの思いを語った。こうして30歳にして13年ぶりに仙台のユニフォームに袖を通すことが叶った苦労人である。

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