サッカー日本代表は14日、ブラジル代表との国際親善試合に臨む。10日に行われたパラグアイ代表戦を2-2で引き分け、3戦未勝利が続く中、過去13戦勝利したことのないサッカー王国相手との重要な一戦となる。遠藤航や守田英正が不在の中、チームの舵取り役を担う鎌田大地には、鋭い戦術眼でチームを勝利に導くことが求められる。
(取材・文:元川悦子)
未だ勝利したことがないブラジル代表との重要な一戦

【写真:加藤健一】
FIFAワールドカップ(W杯)26・北中米大会本番まで8か月。サッカー日本代表に残されたテストマッチは大会直前を含めても7試合程度しかない。
2026年3月にイングランド代表との試合が組まれるという報道もあるが、W杯優勝国との対戦は今日14日に東京スタジアム(味の素スタジアム)で行われるブラジル代表戦が唯一となる可能性もある。
日本としては、過去13回戦って0勝2分け11敗と大苦戦しているサッカー王国との大一番で爪痕を残し、「2026年W杯優勝」という大きな目標が実現可能であることを明確に示さなければならない。
今回の日本はキャプテン・遠藤航を筆頭に主力級の負傷者が続出している。そうした状況の中、森保一監督は現有戦力のベストメンバーを送り出すしかないだろう。
攻撃陣は絶対的エースへと上り詰めた上田綺世を1トップに起き、2シャドウに南野拓実と久保建英、左右のウイングバック(WB)に伊東純也と堂安律、ボランチに鎌田大地と佐野海舟という陣容で戦うことになりそうだ。
鎌田に関しては、左足首負傷からの回復途上にある久保の状態次第では、シャドウの一角でスタメンもあり得るが、いずれにしても彼がスタートから出場し、中盤の主軸としてチームをけん引するのは間違いないはずだ。
その鎌田が率先してやらなければならないのが、チームの戦い方の統一だ。
「個のデュエルで勝つことも大切ですけど…」
「(ブラジル代表戦は)自分たちが前からプレスに行ってできるかというのと、自分たちがトライしてきたことがどれだけできるのかが分かる試合。僕らはまだまだブラジルの選手より個の能力が足りていない部分が多い。
個のデュエルで勝つことも大切ですけど、チームとして戦うこと、戦術の部分を本当に100%に近い状態で表現しないと勝てる相手じゃない。選手全員の共通意識が大事なんじゃないかと思います」
本人も前日練習後にこう語っていたが、11人の中でズレが生じたら、10日に0−5で大敗した韓国代表の二の舞にならないとも限らない。
前から行くのか、引いて守るのか。そこをしっかりと考えながら緻密に対応していくことが肝要なのだ。
「各選手、いろいろな意見があって、殴り合いにいくべきなのか、殴り合って勝てるレベルに今の日本がいるのか、それとも引いてやっていくのかというのは、チームとしてもちろん、各選手で話し合いをしています。
ただ、忘れてはいけないのは、自分たちのスタイルというのはそもそも何なのかということ。カタール(W杯)で成功した引き込んで仕留めることも自分たちのスタイルですし、ここ最近積み上げてきたボールを回すのも自分たちのスタイル。それは1つではないし、勝てばいい。そのための選択をしたい」と堂安も冷静に言う。
その方向性を定める舵取り役は、普段なら、遠藤や守田英正が主に担当する。だが、彼らが不在である以上、今回は鎌田がやるしかない。
「結局、どうやって点を取るのかという部分は…」
彼は戦況を見ながら的確に判断を変えられる数少ない存在。傑出した戦術眼と読みを強豪相手に堂々と発揮して、チームを正しい方向へと導いていくこと。それが今回の重要なタスクと言っていい。
パラグアイ代表戦後にも「今日の守備の感じだとブラジル戦では大量失点してしまう」と危機感を募らせていた彼なら、慎重に物事を運ぶはず。その調整力はチームの大きな武器になるだろう。
そのうえで、日本代表はブラジル代表からゴールをもぎ取る術を見出さなければいけない。
「上のレベルになると完全に崩し切って点を取るのは難しい。ボールを奪ってからのカウンターをもっと鋭くしないと。結局、どうやって点を取るのかという部分はまだまだ足りてない。そこが明確になったのはよかった」
これは鎌田が9月のアメリカ代表戦後にコメントしていたこと。ブラジル代表相手に点を取ろうと思うなら、ショートカウンターを繰り出す機会を虎視眈々と狙っていくのが近道だ。
「チームの共通認識としては…」
「カウンターを仕掛ける時のポイント?ボールを取った後に逆サイドの10番(シャドウの片方)を狙うことじゃないですか。チームの共通認識としては、10番のところにどうやってうまくパスを出せるか。
そこに入った後に自分たち、前の選手がスプリントで追い越していくのが大事になってくると思います」と鎌田は自分がボランチに入る前提で効果的な形をイメージしている様子だった。
そういう話ができるのも、所属するクリスタルパレスで日々、カウンターから得点する形を刷り込んでいるからに違いない。今季の鎌田はボランチを主戦場にしているが、ボールを狩り取って縦への攻撃の起点になることも少なくない。
9月27日のリバプール戦を見ても、鋭いボール奪取から彼自身も前線の深い位置まで侵入。そこにラストパスが来ていたら1点につながった惜しい場面が散見された。
そういった感覚を日本代表に持ち込むことができれば、ブラジル代表を奈落の底に突き落とすゴールをお見舞いすることも決して夢ではない。
「明日分かるんじゃないですか」
実際、鎌田はFIFAワールドカップ26(W杯)アジア最終予選(3次予選)では小川航基と並ぶ4ゴールを挙げ、チーム得点王に輝いている選手。ハイレベルな得点能力を森保監督も高く評価しているはずだ。
12日の千葉・夢フィールドでのトレーニングでも、ペナルティエリア付近から放ったミドルシュートを次々とネットに突き刺していたが、ゴール前からでも、遠目からでも、打てるチャンスがあったらどんどんアタックしていい。
そういうアグレッシブな姿勢が王国からゴールを奪うきっかけになるのだ。
「ブラジルのレベルは、今までやってきたチームよりまた1つ、抜けていると思います。(自分たちとの差が)明日分かるんじゃないですか」とも彼は前日練習後に話したが、日本としては差が小さければ小さいほどいい。
仮に個々のレベル差があったとしても、それを出させないような組織的守備、効果的なカウンターやセットプレーからの攻めを見せられれば、未勝利記録に歯止めをかけられるかもしれない。
そうなるように、背番号15には“圧倒的な違い”を見せてほしい。鎌田なら日本の歴史を変えられるはずだ。
(取材・文:元川悦子)
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