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コラム 2か月前

【英国人の視点】サッカー日本代表が新たな最終ラインを構築するとき。「渡辺剛は試合を通して…」「鈴木淳之介は対人で…」

シリーズ:英国人の視点 text by ショーン・キャロル photo by Shinya Tanaka

 サッカー日本代表は14日、キリンチャレンジカップ2025でブラジル代表と対戦し、3-2で逆転勝利を収めた。歴史的快挙の中で、これまで固定できていなかったDF陣が躍動したことで、冨安健洋や伊藤洋輝などの不在により厳しいやりくりを強いられてきた最終ラインの起用法に、動きが生まれるかもしれない。(取材・文:ショーン・キャロル)

頭を悩ますサッカー日本代表DF陣の選考

サッカー日本代表の渡辺剛と鈴木淳之介
【写真:田中伸弥】

 日本代表が火曜日にブラジル代表を相手に3-2で逆転勝利を収めた試合は、しばらくの間語り継がれるだろう。しかし、興奮が落ち着けば、森保一監督は、来年夏のFIFAワールドカップ26本大会で真にインパクトを残すために、守備面での改善がまだ必要であることを認識するはずだ。

 9月にアメリカ合衆国代表とのアウェイ戦で0-2と敗れた際や、先週金曜日に大阪でパラグアイ代表と2-2で引き分けた際にも2失点している。そして、サムライブルーは今回のブラジル代表戦の前半でも再び守備面で脆さを見せた。前半を0-2で折り返したのも、驚きではなかった。

 日本代表は後半に見事な巻き返しを見せ、2022年のFIFAワールドカップカタール2022のドイツ代表戦やスペイン代表戦を彷彿とさせるような信じがたい逆転劇を再現した──今回はあくまで親善試合であり、相手のセレソンもベストメンバーではなかったが──とはいえ、こうした「前後半で別のチーム」のような戦い方を繰り返すわけにはいかず、試合開始から後半のような安定感を発揮する必要がある。

 森保監督も歴史的勝利後の記者会見で、「より高いレベルで試合に勝っていくためにはやはり失点は減らさないといけないかなと思います」と述べたように、この点を認識している。しかし、ここ12カ月はセンターバックの選考に頭を悩まされ続けてきた中で、有望な組み合わせの芽が見え始めている。

「戦力としては大きな違いがあると思いますけど…」

 監督が最後に同じ3バックを連続起用したのはちょうど1年前の10月で、サウジアラビア代表戦とオーストラリア代表戦の連戦で町田浩樹、板倉滉、谷口彰悟を起用した。守備陣の固定化ができていないことは、明らかに問題を引き起こしている。

 先週のパラグアイ戦後、鈴木彩艶は「自分的にはやっぱりどんな選手であろうとやることは変わらないと思っています」と、選手の入れ替えが自分に与える影響を否定したが、実際には毎試合違うディフェンダーとプレーするよりも、常に同じ顔ぶれと組む方が安心感はあるだろう。

「もちろん今怪我してる選手たちは、代表の中でもビッグクラブって言われているようなところに所属してて、やっぱりそこは代表としてはすごい強みだったと思う。

 彼らがやっぱり常に試合には出てたんで、そういう部分で彼らがいないっていうのはもちろん、戦力としては大きな違いがあると思いますけど。

 それでもやっぱりここに来ている以上、みんないい選手が揃ってると思います。もっと自分たちはチームとしてもっとうまくできるんじゃないかなと思います」

 とパラグアイ代表戦後に鎌田大地が語ったように、負傷離脱中の選手たちは代表の戦力として大きな存在だった。

 理想を言えば、冨安健洋、伊藤洋輝、板倉滉の3バックが揃えば、経験、フィジカル、安定感の全てを兼ね備えた布陣になる。しかし3人が同時に先発したのは、2024年2月のアジアカップ準々決勝・イラン代表戦(伊藤は4バックの左SBとして出場)が最後であり、それ以降は板倉だけが9月のメキシコ代表戦まで継続的に出場していた。一方で冨安は出場したのはわずか1試合で現在は無所属、伊藤も2024年夏にバイエルン・ミュンヘンに加入して以降はケガに悩まされている。

 こうした状況を踏まえると、森保監督は理想の3人にこだわるのではなく、残りの試合で新たな守備ユニットの構築に集中すべき時期だろう。

「渡辺剛は試合を通して…」「鈴木淳之介は対人で…」

 ブラジル代表戦では序盤に不安定さを見せたが、日本代表のDF陣は試合が進むにつれて鎌田の言う「質の高さ」を示し始めた。渡辺剛は試合を通して成長を見せ、1年ぶりの代表出場となった谷口は落ち着いたプレーで存在感を示し、鈴木淳之介は対人での強さを発揮しつつ、国際舞台での自信も深めていた。

「今日の3人のセンターバックと、これまで中心だった怪我をしている選手たちを比較すると、谷口(彰悟)はもちろんカタールW杯にも出場しているので経験はありますが、全体的に言えばやはり経験値が違います。

 ただ、3月にワールドカップ出場を決めてからは怪我もあった中で、選手層を広げようという意図もありました。その中で、選手たちは試合を重ねるごとに自信を深め、質を発揮してくれています。

 今日の試合でも後半は前半に比べて1対1の場面が多かったですが、よく戦ってくれたと思います。前半よりも、これまでの試合よりも、今日の後半のセンターバックのパフォーマンスは良かったと思います」

 と森保監督が語るように、まだ課題はあるものの、その課題を克服する唯一の方法は、選手たちにプレー時間を与えることだ。テストの時期は終わりに近づいており、そろそろ信頼できる新たなファーストチョイスの3バックを定める時期に来ているのかもしれない。

(取材・文:ショーン・キャロル)

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【了】

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