明治安田J2リーグ第36節、ジェフユナイテッド千葉は藤枝MYFCと1-1のドローに終わり、昇格へ向けて手痛い一戦となった。2日の北海道コンサドーレ札幌戦に続き、2試合連続ゴールを決めた石川大地は悔しさをあらわにした。チームのタスクをこなしながらも、ゴールへの執念を取り戻したストライカーは、残り2試合で理想を体現するために、さらなる結果を求めてピッチに立つ。(取材・文:菊地正典)
守備的な相手に苦戦したジェフユナイテッド千葉

【写真:Getty Images】
11月2日の北海道コンサドーレ札幌戦後、石川大地は悔しがっていた。
チームは5-2で大勝した。自身は度重なる負傷による7試合の欠場を経て復帰してから7試合目で約5カ月ぶりにゴールを決めた。
一見、何を悔しがる必要があるのか、という試合である。
「それよりも、2点目を取れなかったのが悔しかったんです」
ストライカーらしい考えだ。チャンスがあれば、全て決めたい。チャンスがなくても、自分でどうにかしたい。どんな状況でもその考えは変わらない。
だから、その1週間後、11月9日の藤枝MYFC戦後の心境は、聞かずとも容易に想像できた。
藤枝戦では1点ビハインドの15分にPKで同点ゴールを決めた。PKを取ったのは田口泰士だったが、すぐに蹴りたいと思った。カルリーニョス・ジュニオも蹴りたそうにしているのは分かったが、自分が蹴りたいと主張した。ストライカーとして、ゴールを決められるチャンスを手放したくはなかった。
自身2試合連続のゴール。チームもここから逆転勝利に向かっていくはずだった。
しかし、その同点ゴール以降、チームも石川もゴールを奪えぬまま試合終了を迎える。
残留を争う相手は、最終ライン5枚と中盤4枚でブロックを敷き、ボールを奪っても前に蹴ったボールをFWが追うだけ。超がつくほどに守備的な戦いだった。本来はボールを保持する、ビルドアップからパスをつなぐ攻撃的なスタイルを信条とするはずの藤枝なのだから、そこまで守備的に戦ってくると想定するのは難しかった。
「メンバーを見たときに…」
「予想していなかった出来事ですし、準備はしていませんでした」
だが、石川はそれを言い訳にはしない。
「メンバーを見たときにあり得るという話はしていましたし、起こり得ることが起きたと思います。自分たちはシュートも打っていますし、しっかり決めなければいけないシーンが多かったと思います」
この試合でジェフユナイテッド千葉が打ったシュートは22本。今季チーム最少タイの5本にとどまった藤枝の4倍以上に上る。
その中で石川は、チーム2番目の髙橋壱晟、イサカ・ゼイン、カルリーニョス・ジュニオの倍以上となる7本ものシュートを放った。
その数字は、石川の意識の変化による成果である。
札幌戦までの出場26試合で石川が放った総シュート数は、Jリーグの公式記録で36本。1試合平均1.38本にとどまる。時間が限られる途中出場の試合とスタメン出場したものの29分にケガで退いた6月28日のカターレ富山戦を除いても、1試合平均シュート数は1.63と微増するに過ぎない。
それに比べて藤枝戦での石川のシュート本数は飛躍的に増えているが、その理由は相手の守備的な戦いに限らない。
「これまでは与えられたタスクに頭が行きがちだったのもあります」
千葉での石川は単にストライカーとしての働きを求められているわけではない。守備で前線からのプレスのスイッチ役になるだけでなく、攻撃でも時にポジションを下げてボールを受け、ポストプレーや前を向いたあとの展開で後ろと前をつなぐ役割もこなしている。
そして、千葉の攻撃は基本的に、速い。
「そういう意識は絶対に失わないように…」
「速い攻撃の中で自分が下がってスルーパスを出したりすると、なかなかゴール前に行くのは難しいですよね」
戦術のうえで誰かがこなさなければいけない役割であり、石川が器用にこなせるからこそ与えられた役割でもあるのだが、それによってゴール前に入る回数やシュート数が制限される。
それを良しとはしなかった。
「もう1回考え直して、ゴールに対する姿勢を出そうと意識したことによって、最近はゴール前に入っていける回数も増えたと思いますし、札幌戦もゴールを取れたと思います。そういう意識は絶対に失わないように出していきたいです」
スタメン復帰した第30節の愛媛FC戦から札幌戦まででも、平均シュート数は2.5本に増えた。負傷前にはスタメン出場しながらシュートを打っていない試合が5試合あったが、復帰以降の試合では必ずシュートを打っている。
藤枝戦もシュート本数はもとより、例えば髙橋のクロスをまずはスルーしながら、相手の間をうまく抜け出しながらゴール前に飛び出し、カルリーニョスのシュートに触れて押し込もうとした50分のプレーは、ゴールへの意識、意欲が表れていた。
だからこそ、悔しかった。勝利できなかったのだから当然だが、7本ものシュートを打ちながら、50分の決定機を含めて決められず、チームを勝利に導けなかった自分が腹立たしかった。
「結局はゴールだと思います」
「前節の札幌戦以上に悔しい、というのが最初に来ます。PKで決めはしましたけど、前の選手としてチャンスはありましたし、そういうところで決め切ってチームを勝たせられるようにならなければいけない。そういう責任を感じる試合でした」
ゴールへの意識を強くしたからといって、チームのタスクを疎かにするつもりはない。この試合でもゴール前に張りつくのではなく、あらゆるポジションに顔を出し、パスの経由地になりながらブロックを組む相手を何とか崩そうとした。
その2つを両立させてこそ、チームを勝たせられる選手になれると石川は信じている。
「FWとして一番はゴール。チームに一番求められているのも、結局はゴールだと思います。例えば、自分が試合に出ていない状況でFWが点を取っていなかったら『俺を使えよ』と思うでしょうし、みんなもそう思うと思います」
だからゴールは取らなければならない。「でも……」と石川は続ける。
「どちらかに比重が傾くのではなく、自分の理想はどちらも100と100で完璧にできること。自分がしっかりと攻撃の組み立てに参加して、前線からのプレスもプレスバックもして、なおかつ点も取る。それが全部できれば選手としての価値も上がっていきますし、チームを勝たせられるはずです」
極めて高い理想だが、追わないわけにはいかない。無理だと諦めたら終わりだ。
それは、今季のチームの目標についても同じであるはず。まずは今季のリーグ残り2試合。石川はチームを勝たせるために理想を追い求める。
(取材・文:菊地正典)
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