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コラム 2週間前

数年前は“俺が俺が”。今は違う。サッカー日本代表の堂安律は変わった。「自分が0点でも…」らしくない思いを抱く理由【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

 サッカー日本代表は18日、国際親善試合でボリビア代表と対戦して3-0で快勝した。この試合で途中出場ながら勝利に貢献したのが堂安律。数年前の彼なら、おそらく2試合連続のスタメンでないことにストレスを抱えていただろう。しかし、今は違う。良い意味で、堂安らしくない思いが芽生えてきた。(取材・文:元川悦子)[1/2ページ]
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14日のガーナ代表戦からスタメン7人を変更

堂安律 日本代表
【写真:Getty Images】

 2025年の日本代表ラストマッチとなった11月18日のボリビア代表戦。ご存じの通り、森保一監督就任からAマッチ100試合目ということで、選手たちも「勝利でお祝いしたい」と高いモチベーションでこの一戦に挑んでいた。

 指揮官は14日のガーナ戦から7人を変更。南野拓実、久保建英ら主軸を残し、そこに前回出番なしだった遠藤航、鎌田大地、板倉滉ら主力級が復帰。最近出番が少なかった前田大然や菅原由勢らも陣取る形になった。

 戦前の予想では、堂安律がシャドウにスライドするといった見方もあったが、今回はベンチスタート。背番号10は仲間の戦いを注意深く見守った。

 開始早々の2分に鎌田のスルーパスから小川航基がDFの背後に抜け出し、GKと1対1になるビッグチャンスをいきなり作った日本。序盤から敵を圧倒しそうな迫力を押し出し、4分には首尾よく先制点を奪う。

 中盤で菅原が相手に寄せ、遠藤が奪ったボールを久保に展開。右サイドからドリブルで切り裂き、マイナスクロスを上げたところに飛び込んだのが鎌田だった。

 胸トラップから左足で余裕を持ってゴールを奪い、幸先のいい一歩を踏み出したのだ。

「前半はちょっと後ろが重く感じた」

「チームとしてあそこが空くというのは分析でもやっていたので、ボランチですけど、ああいうところに何回か入っていくのが大事だと思った」と本人も話したが、日本代表に来ると鎌田は点を取れる。

 キーマンの一撃でチームは勢いに乗った。

 しかしながら、その後、徐々にプレスがハマらなくなり、日本らしい戦いができなくなってしまう。

 右ウイングバックの菅原がイエローカードを受け、森保監督もリスクに目を向けるのと同時に、攻撃活性化の必要性を感じたという。そこで1-0で折り返した後半頭から堂安を投入する。

「前半はちょっと後ろが重く感じた。由勢はサイドバックの選手なんで、相手についていく意識が強かった。それを捨てて、(3バック右の板倉)滉君に渡しながら前に出ていくプレーが必要だと思いながら外から見ていた」と背番号10は鋭い戦術眼で分析。より高い位置を取ってギアを上げようとしたのだ。

 堂安のそういう意図は感じられたが、相手も反撃に打って出たこともあって60〜65分はなかなか日本らしい攻めを繰り出せない。森保監督は停滞感を打破すべく、67分に3枚替えを決断する。

 上田綺世、町野修斗、中村敬斗を入れて前線の顔ぶれを総入れ替えした。

 この采配がズバリ的中。直後の71分に勝利を引き寄せる2点目を奪う。

堂安律の考え方は大きく変わった

 板倉から堂安に展開。その堂安は、中村敬斗がペナルティエリア右をタテに走り込んだところに絶妙のボールを送り、そこから背番号13がマイナス気味にゴール前へ展開した。ここに町野が飛び込んで左足を合わせたのだ。

「あれはチームとしての1つの決まりごと。ニアゾーンを使っていくのは完全にハマりましたし、中のマチのゴール前での嗅覚も出た場面だった」と堂安もしてやったりの表情を浮かべた。

 この7分後には上田綺世の鋭い抜け出しからの横パスを中村が持ち込んで3点目。日本は節目のゲームを3-0で制した。

 堂安自身も2022年カタールワールドカップ(W杯)を彷彿とさせるジョーカー起用で、森保体制69勝目に貢献した。

 2025年をいい形で締めくくるとともに、2026年W杯イヤーに弾みをつけることに成功した。

 11月2連戦の堂安はガーナ戦で先発し、2024年6月のシリア戦以来、1年5か月ぶりのゴールをゲット。勝利に貢献すると、今回も切り札として異彩を放った。

 ただ、第1次森保体制の頃の彼だったら「2試合連続スタメンで使われないのは納得いかない」「連続ゴールを取れなかった」と自分のパフォーマンスにフォーカスし、苛立ちを覚えただろう。

 だが、今は「チームが勝つことが全て」という考え方へ完全にシフト。2026年北中米W杯で頂点に立つことしか考えていないのだ。

 堂安は神妙な面持ちでこう話す。

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