
【写真:Getty Images】
サッカー日本代表は18日、キリンチャレンジカップ2025(国際親善試合)でボリビア代表と対戦し、3-0の勝利を収めた。ガーナ代表戦に続きスタメン出場した久保建英は、開始早々に鎌田大地のゴールをアシストし、違いを見せつけた。挫折を味わったカタールワールドカップ(W杯)から3年。森保ジャパンの中核へと登り詰めた24歳は、次のW杯へ静かに闘志を燃やしている。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ]
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「日本代表に来ると…」
摩訶不思議な感覚、と表現すればいいだろうか。森保ジャパンに招集され、日の丸を背負って国際Aマッチのピッチに立つたびに、ポジティブな思いに駆られていると久保建英は屈託なく笑う。
「日本代表に来ると、何か得点に関われるかなと思って試合に入れているので」
ボリビア代表と国立競技場で対峙した、18日の年内最後の日本代表戦。前半開始を告げるホイッスルが鳴り響いて間もない4分に、久保のなかで脈打ってきた感覚が現実のものになった。
敵陣の右サイドで菅原由勢と相手選手が争ったこぼれ球に、キャプテンの遠藤航が敵味方の誰よりも素早く反応した直後。ワンタッチパスを右タッチライン際で受けた久保が迷わずドリブルを開始した。
左斜め前方へどんどん加速。フリーの状態でペナルティーエリア左外のポケットを深くえぐった久保は、そのままの体勢から利き足とは逆の右足をひと振り。山なりの軌道のクロスを供給した。
マイナス方向へ放たれたボールの標的はファーサイド。視線を一度も足元に落とさなかった久保は、ボランチの位置からフリーで走り込んできた鎌田大地の存在をしっかりと視認していた。
「トラップしてもらえるようなボールを…」
「普段は中を見ずにクロスを上げるケースが多いんですけど、珍しく余裕があったなかで、鎌田選手が入ってきたのも見えていたので。クロスのスピードとして、速いボールだとあそこからダイレクトでシュートを打つのはちょっと無理だと思ったので、トラップしてもらえるようなボールを蹴ろう、と」
もっとも、狙いはわずかに上へずれた。それでも鎌田は跳びあがった体勢から胸でボールをトラップ。ワンバウンドした後の落ち際に左足を合わせて、ゴール右隅へ先制ボレーを決めた。久保が続ける。
「チームでも『えぐったときはマイナス』と話していましたし、それこそ鎌田選手からも『マイナスに出してくれ』と何度か言われていました。狙い通りではなかったけど、鎌田選手が素晴らしかったですね」
2023年3月に船出した第2次森保ジャパンで、久保のアシストは出場26試合で16に到達。ゴール数の6を加えた得点関与数22で、6得点15アシストで21の伊東純也を抜いてトップに浮上した。
「周りのみんなが僕の特徴を引き出してくれている、というのも大きいかもしれないですね」
チームメイトへ感謝した久保だったが、堂々の数字を残すまでには紆余曲折があった。
第1次森保ジャパンが発足して2年目の2019年6月。18歳になった直後のエルサルバドル代表戦でデビューを果たした久保は、FC東京からスペインの名門レアル・マドリードへと移籍した衝撃とも相まって、金田喜稔さんがもつ「19歳119日」の代表最年少ゴール記録の更新が期待された。
しかし、待望の初ゴールが生まれたのは2022年6月10日のガーナ代表戦だった。出場17試合目。21歳と6日で決めた一撃に、久保は「いやぁ、長かったですね」と苦笑している。
「何でいつも自分だけ」
「このまま一生、入らないんじゃないかと。代表に関しては、本当にそう思っていました。周りの選手たちがゴールを決めるたびに『自分がそのポジションにいたらよかったのに』とか、僕が放ったシュートが相手にブロックされるたびに『何でいつも自分だけ』と思うようになっていたので」
ガーナ代表戦の4日前に行われたブラジル代表戦では、リザーブのまま0-1の敗戦を見届けた。
「正直、何で試合に出してくれないんだ、と。僕が出たら日本はもっとやれていたと思ったけど、試合に出ていない僕がそれを言ったところで、ただの負け惜しみにしかならないので」
悔しさを胸中に封印した久保は、直後にレアル・ソシエダへ完全移籍。延べ4チームに期限付き移籍を繰り返したそれまでの3シーズンから一転して、すぐに相性も抜群だと実感できた新天地で、腰をすえてプレーに打ち込める環境を手にしたなかで、2022年11月のワールドカップ(W杯)・カタール大会代表メンバーに選出された。
「いまの僕のコンディションならば、自分を押し通せるくらいの個の力があるだろう、と。たとえ我を通したとしても、チームメイトのみんなも認めてくれるだろうと思っていました」
大きな自信を秘めて臨んだカタールの地で待っていたのは挫折だった。ベスト16で大会を終えた直後。久保は「自分にとっては、半分は黒歴史みたいなワールドカップでした」と自虐的に振り返っている。
森保ジャパンが後半にあげた2ゴールで逆転勝ちし、世界を驚かせたドイツ、スペイン両代表とのグループステージで先発した久保は、ともにハーフタイムでの交代を告げられている。クロアチア代表とのラウンド16に至っては、体調を崩して無念の欠場を余儀なくされた。久保はさらにこんな言葉を残している。