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横浜F・マリノスのホーム最終戦で物静かな谷村海那が心震えた。最終節へ不敵な笑み。「それを楽しみに頑張ります」【コラム】

シリーズ:コラム text by 竹中愛美 photo by Getty Images

 横浜F・マリノスは11月30日、明治安田J1リーグ第37節でセレッソ大阪と対戦し、3-1で勝利した。前節、J1残留を決めたマリノスにとって、消化試合ではあったが、ホーム最終戦を今季初の4連勝で締めくくれたことはファン・サポーターへ最良のプレゼントとなっただろう。今夏、加入した谷村海那の中でも胸にくるものがあったようだ。(取材・文:竹中愛美)

谷村海那がホーム最終戦で心動かされたこと

横浜F・マリノス 谷村海那

【写真:Getty Images】


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 ホーム最終戦でも「海那」コールは響き渡っていた。

 今季最多42665人のファン・サポーターの歓声は谷村海那の中で特別なものがあったようだ。 

「試合前から何万人が入るというのを大体聞いていて、それが楽しみできょうはプレーしていました」

 大島秀夫監督からは「寡黙で口数が多くない」といったような表現をされ、人見知りと評されることもあるが、本人曰く「結構おしゃべりで慣れたらしゃべる」という27歳は報道陣の前ではやはり、それほど口数は多くない。
 
 それはこの日もそうだったが、言葉以上にしっかりと心に来るものがあったのだなと感じた発言があった。

「アップのときとかも声援がすごかったですし、ここら辺(胸あたりを指す)が震えるっていうか、そんな感じになります」

 前節の京都サンガF.C.戦でJ1残留を確定させた今節のセレッソ大阪戦は、いわば消化試合だ。それでもファン・サポーターが4万人以上も駆けつけてくれることは当たり前の状況ではない、そうわかっているからこそ言葉にも力がこもる。

「本当に声援が力になりますし、自分たちの戦う姿を見に来ているので、そこを自分たちは出すだけなので、本当にきょう勝てて良かったなと思います」

 谷村は、2020年に当時JFLのいわきFCに加入し、クラブのJ3昇格、J2昇格に貢献。昨季は38試合に出場し、18得点を挙げ、J2ベストイレブンに輝いた。

 アンデルソン・ロペスのチーム離脱に伴い、谷村はこの夏チームに加わった。

 思えば、谷村がJ1デビュー戦でゴールを決めた7月20日の名古屋グランパス戦でも「海那」コールは沸き起こっていた。

 谷村の決勝点でおよそ3か月ぶりに最下位を脱出したことで、残留への救世主として期待は高まっていたように思う。

J1デビュー戦から積み上げてきたことが少しずつ…

 谷村はこのとき、「ゴール前の駆け引きだったり、落としだったり、そういうのは意外とできたのかなと思います」と手応えを感じた一方で、通用しなかった部分について、このように答えている。

「チームで求められているゴールキックからのヘディングだったりはまだまだ勝てていないですし、守備の強度だったりももっと上げていけたらなと思います」

 はじめてのJ1の舞台、チームの戦術理解、チームメイトとの連係など越えなくてはならない壁はたくさんあったが、谷村は練習からやるべきことに目を向け、着実にステップアップしてきた。

 今節を含めて14試合出場で6ゴールはチーム2位の数字で、谷村が得点を決めた試合はすべて勝利している。

 この日はゴールこそなかったが、前線で植中朝日とともにターゲットとなり、ボールをおさめるなど、起点になった。

 先制点は、自陣後方からのクリアしたボールを植中がしっかりとおさめ、谷村に繋いだことからはじまった。

 谷村から左サイドの井上健太にパスを送り、井上が逆サイドのジョルディ・クルークスに展開する。クルークスが左足を振り抜き、こぼれたところを植中が押し込んだ。

 決勝点となった2点目にも谷村は絡んでいる。角田涼太朗のフリーキックを谷村が相手と競り合い、こぼれ球を渡辺皓太がオーバーヘッドで前線へ送る。これを走り込んだクルークスがしっかりと決め切った。

 ゴールの部分だけを抽出すると、聞こえがいいかもしれないが、この日のマリノスはどちらかといえば、セレッソにボールを保持される展開で中々チャンスを多く作ることはできなかった。

「前半はボールを持たれて難しいゲームだったんですけれど、徐々に調整できて、上手くはめられていったかなと思います」と谷村が話せば、トップ下を務めた植中はこう言った。

「来年の自信にもなる」。谷村海那が込めるシーズン最終戦への思い

「前線の選手がちゃんと(ボールを)おさめて失わずに前を向くことができたら、大体はチャンスになるので、谷村選手もそうですけど、自分たちの出来次第でこういうふうに結果も変わってくると思う」

 谷村は前半44分の植中からの折り返しをシュートした場面について、「力んだだけっす」と言葉少なだったが、「決めるところもそうですし、もっと起点になっていけたらなと思います」と課題を口にした。

 だが、先述した谷村のJ1デビュー戦で通用しなかったという前線で競り負けないという部分はこの試合でも見られたように少しずつだが、改善も見られる。

 J1残留を決めた試合からおよそ3週間ぶりのゲームとあって、難しさはあったはずだが、「残留を決めたときに、ここで終わっちゃダメだっていう話があったので、練習から次に向かって頑張った結果だと思います」ときっぱりと答えた。

 次節のシーズン最終戦でも集中力を切らさず、自身のできることを全うするつもりだ。

「全員が戦うというところが本当に勝敗を分けるので、そこができたらなと思います」

 相手は首位を走る鹿島アントラーズ。2位の柏レイソルとは勝ち点差がわずか1の状況だ。鹿島はマリノスに勝てば無条件で優勝とあって、当然だが死に物狂いで戦ってくるだろう。

「次はもう1位とやれるので、実力を試せるっていうか、そこに勝ったら来年の自信にもなるので勝ちたいと思います」

 記者から「もしかしたらスタジアムがシーンとなる可能性も」という質問が飛ぶと、谷村は「させます、させます!それを楽しみに頑張ります」と大胆不敵に答えてみせた。

 J2のいわきから加入し、わずか4か月で鮮烈な印象を残してきた谷村。シーズン最終戦でまた不敵な笑みを浮かべてくれるだろうか。アウェイの地でも「海那」コールが響き渡ることが楽しみでならない。

(取材・文:竹中愛美)

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【了】

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