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コラム 8時間前

MOMの久保建英が報われない…。レアル・ソシエダが勝利を逃した理由。クラブの方向性が曖昧になっていないか【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 佐藤彰太 photo by Getty Images

レアル・ソシエダMF久保建英
レアル・ソシエダの久保建英【写真:Getty Images】



 ラ・リーガ第17節、レバンテ対レアル・ソシエダが現地時間20日に行われ、1-1のドローに終わった。この一戦で久保建英はマン・オブ・ザ・マッチに選出される活躍を見せたものの、チームは依然として不振を脱しきれずにいる。結果と内容の乖離が続くなか、クラブが抱える難題があらためて浮き彫りとなっている。(文:佐藤彰太)[1/1ページ]
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またも勝利を逃したレアル・ソシエダ

 レバンテの本拠地エスタディオ・シウダ・デ・バレンシアに乗り込み、年内最後の一戦に臨んだレアル・ソシエダは、1-1のドローに終わり、またしても勝利を掴むことができなかった。

 成績不振を理由に14日付でセルヒオ・フランシスコ監督が退任。この試合では、サンセ(Bチーム)を率いるジョン・アンソテギ監督が暫定的に指揮を執った。

 ソシエダは3日前にコパ・デル・レイで3部のCDエルデンセと対戦し、苦しみながらも勝利を収めている。

 ラ・リーガで最下位に沈むレバンテとの一戦は、新体制へ良い流れを繋ぐ意味でも、是が非でも白星が欲しい試合だった。



 しかし結果は引き分け。しかも、その結末を招いたのがアンソテギ監督の采配だったという点は、何とも皮肉と言える。

 前半終了間際に久保建英がゴールを奪い、1点リードで迎えた後半、同点を狙うレバンテに対し、ソシエダはカウンターから何度も決定機を迎えた。

 追加点を奪えなかった点は確かに悔やまれるが、それでも1点を守り切ることは十分に可能だったはずである。

 アンソテギ監督はアディショナルタイム突入と同時に、ミケル・オヤルサバルと久保を下げ、20歳のアルカイツ・マリエスクレーナ、そしてこの試合がトップチームデビューとなった19歳のランデル・アスティアサランを投入。この判断が裏目に出てしまった。

近年のソシエダの不調に繋がる根本的な問題とは…

 2人は明らかに試合のテンポに入り切れず、結果的にチームに混乱をもたらした。

 オヤルサバルについては、怪我明けという事情を考慮すれば交代は理解できる部分もある。しかし、久保については最後までピッチに残しておくべきだったという見方も成り立つだろう。

 交代からわずか2分余りで、マリエスクレーナがペナルティーエリア内でカルロス・アルバレスを倒してしまいPKを献上。特に慎重さが求められるエリアでのファウルは、若さゆえの不用意なプレーである。

 この一戦は、内容以上に結果が求められる試合だった。結果論ではあるが、2点差以上のリードがあるならまだしも、1点差のアウェイゲーム、しかもアディショナルタイムに経験の浅い若手を同時に投入する必要性は全くなかったと言わざるを得ない。



 ましてや、前節はホームで降格圏に位置するジローナに敗れている。そうした状況を踏まえれば、この試合でこそ勝利への執念をチーム全体で示す必要があったはずだ。

 前任のフランシスコ監督、さらにその前のイマノル・アルグアシル監督にも共通するが、育成と結果の両立は極めて難しい。その判断軸が曖昧になっていることこそが、現在のソシエダ不振の一因だろう。

 もっとも、これらの監督はいずれもBチームから昇格した指揮官であり、育成をクラブ哲学の根幹に据える以上、避けられない側面があるのも事実だ。

久保建英のゴールは偶然ではない?

 一方で、この試合のマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた久保のパフォーマンスについては触れずにいられない。

 開幕戦以来となるゴールがヘディングだった点は意外性があるが、これは決して偶然ではない。オヤルサバルが相手のパスをカットした瞬間、高い位置に残っていた久保は、ルカ・スチッチのニアへの動きを確認し、冷静にファーへ流れた。

 ゴンサロ・ゲデスのクロスは相手にディフレクションし、ヘディング時の体勢はやや伸びきっていたが、完全にフリーのポジションを取れていた時点で、勝負はほぼ決していたと言っていい。

 この得点シーンに限らず、カウンター時の立ち位置や動き出しのタイミングは常に秀逸だった。先を読む力に優れ、味方がロストした場合でも即座に守備へ転じられるポジションを常に取り続けていた点は、久保のクレバーさを象徴している。

 また、この試合では右サイドバックのホン・アランブルが累積警告で出場停止となり、代わってアリツ・エルストンドが起用された。

 エルストンドはこの日目立っていた久保の積極的な裏への動き出しを的確に捉えるフィードを幾度となく供給。右サイドから多くのチャンスを演出し、その存在が久保のハイパフォーマンスを下支えしていたと言っても過言ではない。



 さらに久保は、守備面でも相手のパスコースを限定しつつ、強度を落とさないプレスを終始かけ続けており、その献身性も高く評価できる点だ。

 もちろん、最下位レバンテのクオリティの低さに助けられた場面があったことは否めないが、自身の交代直後に同点を許した展開には、大きな悔しさを覚えたはずだ。

 試合後、呆然とピッチを見つめていた久保の姿が印象的だった。

 GKのアレックス・レミロが拳をピッチに叩きつけて怒りを露わにしていたように、誰よりも出色のパフォーマンスを見せた久保が、もっと感情を表に出しても不思議ではない。

 試合後、ソシエダはペッレグリーノ・マタラッツォ新監督の就任を発表した。

 しかし、センターラインの要であるイゴール・スベルディアとジョン・ゴロチャテギは累積警告により次節は出場停止となる。

 新体制の船出は、いきなり厳しい条件下で迎えることになりそうだ。

(文:佐藤彰太)

【著者プロフィール:佐藤彰太】
1997年兵庫県生まれ、広島育ち。2025年よりフットボールチャンネル編集部に所属。2011-12シーズンのUEFAヨーロッパリーグ決勝でラダメル・ファルカオのプレーに心を奪われて以来、アトレティコ・マドリードのファンとなり、そこからラ・リーガの世界に深く魅了される。これまでの現地観戦は恐らく30試合以上に及ぶ。現地での交流を通じて、ラ・リーガ複数クラブと関係を築き、元アルゼンチン代表MFエベル・バネガと食事を共にしたほか、元スペイン代表DFセルヒオ・ラモスとも親交を深めるに至った。なお、スペインの空気を吸った瞬間に人格が変わると周囲から評されており、前世はスペイン人であることが有力視されている。

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