———————————–
湘南ベルマーレの2026シーズンが7日にスタートする。J2に降格し再出発を図る湘南に、3年半を経て蓑田広大が復帰する。「何にも貢献できずにレンタルで出た」3年半前から、蓑田は大きく成長して戻ってくる。(取材・文:加藤健一)[1/2ページ]
——————————
蓑田広大は再びスタートラインに立った
遠回りだった。それでも、蓑田広大はスタートラインに再び立つことができた。
プロキャリアをスタートさせた当初に思い描いていたものではなかったかもしれない。2022シーズンに法政大学から湘南ベルマーレに加入したものの、ベンチにも入れない試合が続く。
湘南のユニフォームを着てピッチに立ったのは、YBCルヴァンカップの第1節、明治安田J1リーグの第7節、そして天皇杯2回戦の3度のみ。出場機会は限られていた
開幕から半年、蓑田は期限付き移籍という選択をした。
最初の半年はSC相模原に、その翌年からはヴァンラーレ八戸にプレー機会を求めた。湘南に戻るため、その一点を見据えた決断だった。
そして2025シーズン、蓑田は大きな結果を残す。
八戸の最終ラインを支え、リーグ最少失点という数字をチームにもたらし、J2昇格を達成。個人としても、J3リーグアウォーズのベストイレブンだけでなく、日本プロサッカー選手会(JPFA)が選ぶJ3ベストイレブンにも選出された。
「正直、全然思っていなかったので、本当にびっくりしました」
表彰式を終えた直後、蓑田は驚きと喜びを素直に言葉にした。
「選手に選んでもらっての票だと思うので、そこは本当に嬉しいです」
J3アウォーズとは違い、同業者である選手たちの投票によって選ばれるJPFAベストイレブン。「評価していただいているんだな、という気持ちが素直にありました」と思いを述べた。
もちろん自身も投票者の1人だが、自分に投票することはなかった。「そんなにエゴイストじゃないので」と笑いながら言う。
ただ、八戸で過ごした3年間で成長していたことは確か。復帰に際して、このようなコメントを残している。
「どんなことにも耐えてきた」「培ってきたこと、全てぶつけたい」
「湘南ベルマーレに戻る為にこの3年半どんなことにも耐えてきました。3年半前よりたくさんのものを身に付けたと思います。自分の持っているもの、培ってきたこと、全てぶつけたいと思います」
八戸で培ってきたこと。その1つとして、守備者としての感覚の変化を挙げた。
「予測の部分ですね。フォワードに嗅覚があるように、ディフェンダーにも嗅覚があると思っている」
どこにパスが出るのか、どこでシュートを打ってくるのか。相手を見ながら一歩先を読む力は、試合を重ねるごとに磨かれていった。
それを象徴するシーンが1つある。
9月20日に行われたJ3・第28節の福島ユナイテッド戦。相手GKのロングボールに抜け出した相手FWがシュートを放ち、GK大西勝吾も飛び出してそれを防ごうとする。こぼれ球を相手がシュートすると、ゴール前にただ1人いた蓑田がこれをブロック。さらに相手のクロス性のボールもヘディングでクリアして窮地を脱した。
Jリーグ選考委員会の本並健治委員は「勝点に繋がるプレー」と評価。さらに、平畠啓史委員はこう評している。
「この3年半は本当に湘南ベルマーレに戻るためにやってきた」
「ヴァンラーレ八戸の失点の少なさや勝利への執着が見える象徴的なシーン。人に対する強さを発揮する蓑田ではあるが、ゴール前でも集中力を切らすことなく、見事な対応で失点を防いだ」
八戸はこの試合を1-0で終えた。結果的に3位FC大阪との勝ち点差はわずか1となったので、これが失点となっていれば八戸の自動昇格はなかったと言っていい。
その土台を築いたのが、石崎信弘監督の存在だった。
「だいぶしんどかったですね」
八戸での日々を率直にそう語りながらも、「自分のためになっていた」と言い切る。
負荷の高いトレーニングと守備への高い要求。そんな環境の中で、守備者としての身体と意識が鍛え上げられた。
そして今オフ、蓑田は湘南へと帰ってきた。3年半前、何もできないまま離れたクラブだ。
「やっと来たなっていう感じです。僕のプロキャリアをスタートさせたクラブで、何にも貢献できずにレンタルで出た。この3年半は本当に湘南に戻るためにやってきた」
復帰は、突然決まったものではない。期限付き移籍中も、吉野智行SDをはじめとする湘南の強化部は試合を視察し、試合後には言葉を交わしてきた。



