横浜F・マリノスの喜田拓也【写真:編集部】
2月6日、明治安田J1百年構想リーグがいよいよ開幕する。昨季の残留争いを経て、今季こそは名門復活を掲げる横浜F・マリノス。その中心には今年もキャプテンに任命された喜田拓也がいる。新シーズンではどんな戦いをみせていくのか。クラブへの思いとともに聞いた。(取材・文:竹中愛美)[1/2ページ]
【単独インタビュー/取材日:1月25日】
昨季の悔しい思いは勝利でしか晴らせない

昨季はクラブ史上ワーストの7連敗を喫するなど、苦しいシーズンを送った横浜F・マリノス【写真:Getty Images】
「また始まるなという思いと、昨年、悔しい思いをしたので、勝つことでF・マリノスの存在価値というものを勝利で示したいと思います。昨年、クラブにかかわるみんなが死ぬ気で示した姿勢だとか、思いみたいなものも繋げたい気持ちがあるので、そういったものを結果でしっかりと証明することはしたいなと思います」
今年でプロ14年目となる喜田拓也の新たな航海がはじまろうとしている。
横浜F・マリノスの昨季の成績は、リーグ戦15位(クラブ史上最低)、ルヴァンカップ準々決勝敗退、天皇杯2回戦敗退、AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)準々決勝敗退と、リーグ制覇5度を誇る名門からすると非常に厳しいものだった。
シーズンの早い段階から残留争いに巻き込まれ、苦しみ抜いた末に掴んだJ1残留。その悔しさは勝利でしか晴らせない。
たとえ、それがシーズン移行前の特別大会、百年構想リーグであってもだ。この大会は昇降格がないが、優勝クラブにはACLEの2026-2027シーズンの出場権が与えられる。
通常シーズンとは異なる特別大会だからといって、特別な戦い方など考えていない。
「もうとにかく目の前の試合に勝ちたいし、タイトルがあることに変わりはないので形式がどうであろうが、何がかかっていようが、かかっていまいが、勝ちたい思いは変わりない。ましてや、あのようなシーズンを経験した後で勝利がどれだけ難しくて、素晴らしいものなのかは本当にみんなが痛感したと思う。
F・マリノスにかかわるすべての人を必ず笑顔にしたいし、勝つことで自分たちが追い求める内容やマインド、そういったもので皆さんを魅了できるようなものを構築していきたいと思っている。勝つことを追い求める中で成長していくのが1番理想だと思うので、そういうチームになっていければなと思います」
今年のチームの動きとしては主に、チームトップの8ゴールをマークした植中朝日や井上健太、ジャン・クルードが移籍した一方で、昨季、Jリーグデビューを果たした桐蔭横浜大学の関富貫太やブラジル出身FWのテヴィス、近藤友喜、井上太聖らフレッシュな8選手が新たに加わった。
新体制からおよそ1か月。チームの雰囲気について、「いいんじゃないですかね」と話し、こう答えた。
「“F・マリノスって、そうだよな”と思えるようなサッカーを見せたい」

宮崎キャンプでトレーニングに励む喜田拓也【写真:編集部】
「新しく入った選手もF・マリノスの色を吸収しようとすごく意欲的に取り組んでくれていますし、既存の選手たちも昨年あれだけ苦しい思いをした仲間たちなので、今年こそ上に登るぞという気概も見えます。もう1度、(大島)秀夫さんのもと、強くて魅力あるF・マリノスを目指して進んでいる最中なので、非常に前向きで良い雰囲気だと思います」
宮崎キャンプでは、昨シーズンの戦い方をベースに、より相手陣地でボールを保持し、テンポよくプレーすることを植え込むべく、トレーニングに励んでいた。
例年のシーズンよりも開幕前の準備期間が短い今季、既存戦力と新戦力の融合も当然、必要になってくるが、F・マリノスが展開していくサッカーはどんなものになっていくのか。
「サッカーの中身を細かく言うのは難しいんですが、言えることがあるとすれば」と前置きをしたうえで、喜田は説明してくれた。
「マインドのところでF・マリノスのサッカーはすごくアグレッシブで、やっている自分たちも楽しくて、躍動感がある。少し抽象的な表現にはなるかもしれないですが、そういうものは確実にあったと思うし、クラブが大事にしてきたフィロソフィーでもあるし、ぶれてはいけないものでもあると思う。
誰が見ても“F・マリノスって、そうだよな”と思えるようなサッカーを見せたいと思っているし、こういうことを大切にしているんだなと見ている人たちにわかってもらえるような、熱くて躍動感のある、魂のこもったサッカーを見せられればなと思っています」
F・マリノスがF・マリノスであるために、喜田は今年も先頭に立ってチームを引っ張っていく。キャプテン就任は2019シーズンから8シーズン連続で、Jリーグが開幕した1993年以降で最長期間となる。
クラブのために自らを投げうって、その責務を果たすことは誰もができることではない。そこには小学生年代からずっとお世話になってきたクラブで見てきたある光景がある。
プロ14年目の喜田拓也が「何年経っても慣れない」もの

宮崎キャンプで汗を流す横浜F・マリノスの喜田拓也【写真:編集部】
「これだけ長くプロとしてF・マリノスでやらせてもらって、本当にたくさんのことを経験してきたし、F・マリノスでプレーをしたい、仕事をしたい、たくさんの選手やスタッフが涙を流して、去らなければいけない姿を数えきれないほど見てきた。毎年そういうのはあるんですが、何年経っても慣れないし、何人見てきても胸に来る」
F・マリノスで果たしたくても果たせなかった人たちの思いを喜田は背負っている。その数の分だけ、またひとつ、ふたつと思いを大きくすることになる。
「やはりこのクラブで戦い続けられる価値は物すごく大きくて重い、本当に難しいことだし、このクラブで戦い続けることはそれだけ大変なことでもある。
それができている、今いられる自分たちはクラブのために自分がどうなったとしても戦い続けないといけない。もっと言えば、このクラブの価値をより上げないといけないと思っているので、それが今いる僕らの使命だと思う。
移籍が活発な時代で、若い選手だけではないですが、海外にすぐに行きたかったり、いろんな道を選択する選手がいる中でひとつのクラブでやる選手がもう本当に数えるほどしかいなくなってしまった時代なので、その難しさも感じています」
喜田が話すように、今やひとつのクラブに長く所属し、クラブの歴史を象徴する存在である「バンディエラ」は希少な存在ともいえるだろう。
それでも、自ら進んでその道を歩むのには、単に特別だから、という言葉では形容できないものがあるようだ。