なでしこジャパンの熊谷紗希【写真:Getty Images】
FIFA女子ワールドカップ2026(W杯)の出場権がかかったAFC女子アジアカップが3月1日、開幕した。なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)は2大会ぶり3度目の優勝とW杯10大会連続出場を目指している。今のなでしこジャパンで2011年のW杯優勝をただ一人知る熊谷紗希に、昨年自身に起きた変化とともに、W杯への思いを聞いた。(取材・文:竹中愛美)[1/2ページ]
【単独インタビュー/取材日:2月21日】
キャリア初の決断、結婚、新プロジェクト…2025年の熊谷紗希に起きた変化
本サイトのインタビューに答える熊谷紗希【画像:スクリーンショット】
2025年は熊谷紗希にとって、変化の年だったといえるのではないだろうか。
1月にイングランドのロンドン・シティ・ライオネスに移籍。キャリア初となる2部クラブへの挑戦となったが、最終節で優勝を決め、クラブ創設以来初の1部昇格を果たした。
7月には結婚を発表。10月には自身が代表を務める一般社団法人なでしこケア(なでケア)で新たなプロジェクトを始動させた。
結婚したことで心境の変化はあったか問うと、「ないですねえ」と笑いながら答える。
聞くと、「長く付き合った方だったので、変わったことがあんまりないです。なさすぎて笑っちゃった。ないのも変なのかな」ということみたいだ。
だが、なでケアで自身がプロデュースする新プロジェクト、「THE WORLD CHALLENGE」には変化があったようだ。
これは、未来のなでしこへの国際経験を通じた成長の場の提供や、次世代のリーダー育成を目的とするものだ。
「近賀(ゆかり)さん、(大滝)麻未ちゃん、私と、作った人たちみんなに海外経験があって、なでケアを設立した当初からいつか子供たちに(自身の経験を還元したい)というのは大きな目標ではあったんです。
でも、自分も海外にいて、まだまだ現役で、そんな言い訳も含めてなかなか実現にはいけていなかったんですけど、今回FIFA(国際サッカー連盟)の新しいプロジェクトの一員に選んでもらえて、それがすごく大きなきっかけになった。実際に動いていいんだって、良い意味でFIFAの方々が背中を叩いてくれた」
昨年8月、熊谷は世界で最も影響力のある女子サッカー選手14名に選出され、フランスで行われたFIFA Player Impact Programmeに参加した。
このプログラムは、女子プロサッカー選手が、自身が持つ影響力やリソースを活用して、それぞれの国や地域でポジティブな社会変革を推進することをFIFAが支援するというものだ。
「まだまだ初めてのことですし、子供たちが来るのは3月末で今、計画しているんですけど、実際に実施はできていないので、ここからこれを継続的にやっていけるように(していきたい)。
今やってみて思いますけど、現役のサキ・クマガイだから大きな意味を持つよなと。今のタイミングでやらせてもらえて良かった。実行できるところまで来たという意味で大きな変化は感じていますね」
今後は3月下旬にロンドンで「THE WORLD CHALLENGE」が行われ、4月~12月は参加選手の継続的成長をサポートしていくという。
そして、なでしこジャパンも変化のときを迎えていた。初の外国人監督として、ニルス・ニールセン氏が就任し、新たなスタートを切った。
「2025年はどちらかと言うと、なでしこジャパンは苦しんだ年」光を探しにアジアカップへ
ニルス・ニールセン監督初陣となったシービリーブスカップで初優勝したなでしこジャパン【写真:Getty Images】
「監督が代わって、私自身、自分の年齢もあって、変な意味じゃなく、そこから呼ばれないなんてこともチーム作りとしてあり得たとは思う。でも、1回目のShe Believes Cup(シービリーブスカップ)であれだけ大きく優勝できて、正直、楽しくて。この場は自分がまだまだ目指したいところなんだなと思えた。
そこから素晴らしい対戦相手とやる中、思うような結果がなかなか出せない、なでしこジャパンとしてはちょっと苦しい1年になったとは思う。これがW杯で勝つための糧じゃないですけど、課題を見つけられるものととるしかないのかなとは思っているので、そういった意味でもアジアカップは大きな意味を持つと思う」
実際、シービリーブスカップ優勝後は、強豪国であるブラジルやスペインと対戦し、白星から遠ざかっただけでなく、デュエルやボール保持の部分で力の差を見せつけられた。
敗戦の中で見つかった課題をバネに、アジアカップでは成長を誓う。
「これだけ海外でプレーする選手たちが増えてきていて、それだけ活躍している選手たちが集まって、1つの大きな力にならなきゃいけない。それをどれだけ表現できるかがこの大会のキーにはなるかなと思う。
2025年はどちらかと言うと、なでしこジャパンは苦しんだ年なのかなと思うんですけど、その中でも光を見出すのが私たちの仕事だと思うし、結果を出さなきゃいけないのは間違いない。その光を探しにアジアカップに行きたいなとは思っています」
対戦するアジアのチームは、世界ランキングでは日本より下位でも、ミラーゲームなどで拮抗した展開になることも予想される。
2大会ぶり3度目の優勝とW杯10大会連続出場を目指すなでしこジャパンにとっては、W杯出場権を得ることはもちろん、何より結果が求められる。
その意味でも国際Aマッチ通算歴代2位となる164試合の出場を誇り、W杯優勝やオリンピック銀メダルなど、世界を相手に結果を残してきた熊谷の存在は大きい。
なでしこジャパンの熊谷紗希が世界を相手に戦ううえで大切にしてきたこと
国際Aマッチ通算歴代2位となる164試合の出場を誇るなでしこジャパンの熊谷紗希【写真:Getty Images】
「自分が日頃から大切にしていることは絶対に手を抜かないじゃないけど、求められていることを全力でやること。ここだけは今でも自信を持って言えるんですけど、そこをぶらさないことを1番大事にしていて、どんなに大切な試合でも自分のマインドは“いつも通りやろう”なんですよ」
それは自身の強みであり、マインド的に相手がアメリカやブラジル、スペインだからといって変わることはない。
「アジアカップは正直今、みんなが戦っている相手とは違う相手になるはずなんです。それはそれで難しい戦いにはなると思うけど、アジアカップを自分たちがとらなきゃいけないという変なプレッシャーじゃなく、責任感は持ってこの大会に臨みたい。
そういう相手にも圧倒的な強さを見せないといけないと思いますし、そのマインドの持ち方は本当に伝えていきたい。みんな頭ではわかっていると思うし、手を抜く人なんてひとりもいないと思うんですけど、大会になると、またちょっと違ったものは絶対出てくるので」
姿勢でチームメイトに還元するだけでなく、自身のプレーでも示しに行く。
「自分の持ち味は対人とコーチングだと思うので、本当に自分に出せるものは全て出す。何としてもチームの結果に繋げる、チームの力になるという意味でそこは本当に徹底したい。
W杯の出場権を勝ち取るのはもちろんですけど、W杯に向かうときにチームとして、どう戦っていくのか、大きな形は監督と選手間でもっと理解を深めなきゃいけないと思う。監督のプランをもっと選手が体現できるような体制をこの1か月で作る意味で確立したものが出てこなきゃいけないなと思っています」
アジアカップでなでしこジャパンが勝ち方を確立できた先には、W杯の舞台が見えてくる。出場すれば自身5度目のW杯となる。