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「過去一で悩んでいます」北海道コンサドーレ札幌の川原颯斗はプロの壁にぶつかっても「慌てない。腐らない。やり続ける」【コラム】

シリーズ:コラム text by 黒川広人 photo by hiroto kurokawa
北海道コンサドーレ札幌 川原颯斗

北海道コンサドーレ札幌の川原颯斗【写真:黒川広人】



 3月14日、ジュビロ磐田との一戦で、今シーズン初めて90分間で勝利を収めた北海道コンサドーレ札幌。そのピッチには、5人もの札幌アカデミー出身選手がスタメンに名を連ねていた。なかでも、国士舘大学から新加入した川原颯斗は、プロ生活で初めてのスタメン出場を果たした。だが、そのプロキャリアは苦悩からのスタートだった。(取材・文:黒川広人)

「想像していた2か月ではない」川原颯斗が語るプロ入りしてからの日々

「過去一で悩んでいます」

 1月から2月にかけて、川原颯斗は明らかに精彩を欠いていた。川原の持ち味は、技術の高さと、頭の回転を両立させながら、味方と相手を俯瞰するようなプレー選択でチームにリズムをもたらすことだ。

 だが、チーム始動から約2か月。川原がミスを恐れ、どこか窮屈そうにプレーしている様子が、外から見ていてもはっきりと伝わってきた。

 本人も、苦悩の2か月をこう振り返る。

「想像していた2か月ではないですよね。開幕からバリバリ出ているイメージだったので。甘くなかったです。今、プロの壁に当たっています」

 大学時代や練習生としてチームに参加していた頃は、本来の飄々としたプレーを幾分か発揮していた。

 しかし、新体制となって始動した沖縄キャンプ。川原はプロ生活のスタートダッシュに失敗した。ある日の練習でミスが続くなど、悪い流れを断ち切れないまま、本来の持ち味が影を潜めるプレーが続いた。



 2月の日本大学とのトレーニングゲームでは、「サッカー人生でもワーストレベルで悪い出来だった」と試合後に吐露するほど、行き詰まりを感じていた。

 プロの強度とレベルの高さもある。だが、川原は原因をこう分析する。

「スピード感や強度も全然違いますが、一番は自分のメンタル面ですよね。大学のときとは全然違います。どこかミスを恐れている自分がいたので」

 技術的なミスが続くと、本来の持ち味である“声”までも影を潜めた。

「元々俺のことを知っているスタッフは言うんです。『もっと喋れる選手のはずだぞ』って」

 こんなはずではない。それでも川原は、自分に言い聞かせ続けていた言葉がある。

「あの試合から少しずつ良くなってきて…」川原颯斗が好転し始めたきっかけ

北海道コンサドーレ札幌 川原颯斗

日本大学とのトレーニングゲームでプレーする北海道コンサドーレ札幌の川原颯斗【写真:黒川広人】

「慌てない。腐らない。やり続ける。これだけはずっと自分に言い聞かせ続けています。ジュニアユース時代の監督でもある、柴田(慎吾)さんも発破をかけてくれていて。やり続けるしかないと思っています」

 メンタル面の向き合い方も見つめ直した。

「たとえ上手くいかなくても、周りの人を気にしすぎないでチャレンジしていこうと。自分が少しミスしたくらいで、周りもそこまで気にしていないだろうなって思うようにしたんです」

 メンタルの改革。そして、やるべきことをやり続ける。そう誓い、日々のトレーニングに取り組んだ。

 状況が少しずつ好転し始めたのは、2月下旬に行われたJ1クラブとの非公開トレーニングマッチだった。

「あの試合から少しずつ良くなってきて、練習でも成功体験が増えてきています。良い方向に向かっている感じはあります。底は抜けたかなと思います」



 その言葉通り、その週末の松本山雅FC戦でプロデビューを果たした。そして、翌週のジュビロ磐田戦ではスタメン出場。磐田との試合後に、一定の手応えとともに課題も口にした。

「今日はぼちぼちですかね。メンタル面が安定してきて、少しずつ自信がついてきたと思います。それでプレーも落ち着いてきたかなと。とはいえ、まだまだです。自分でも『それをミスるか』というシーンがいくつもあるので。一歩ずつ改善していきたいです」

 磐田戦で、川原と中盤を形成した1学年先輩の木戸柊摩も、更なる成長を期待する。

「川原がアンカーに入ることで、自分も少し高い位置を取れます。攻撃のときは自分と(荒野)拓馬くんがシャドーのような役割をできるので。ただ、川原ならもっとボールに顔を出してテンポを作れると思っています。今日はミスもありましたけど、試合を重ねればもっと良くなると思います」

 北海道コンサドーレ札幌U-18時代には、川原とともにセンターバックを形成、この試合では、縦のラインを形成し、決勝ゴールを挙げた西野奨太も同調する。

「やっとスタートラインに立てた感覚です」

北海道コンサドーレ札幌 川原颯斗

今季、国士舘大学から北海道コンサドーレ札幌に加入した川原颯斗【写真:黒川広人】

「プロに入って悩みながらプレーしているのは感じていました。でも、試合に入ればやれる選手だと思っていたので。今日、スタメンで出て、川原自身も振り切れたんじゃないかなと思います。ここからどんどん頑張ってほしいですね(笑)」

 西野とともに、4年越しに同じピッチに立った磐田戦。かつて横のラインを形成していた2人は、今は縦のラインでチームを上向かせるべく奮闘している。川原も、成長した仲間の存在を頼もしく感じていた。

「4年も空いていたので、特別に感慨にふけることはなかったですけど、奨太がいるとやっぱり安心感がありますね。懐かしい感じもありました」

 自身がスタメン出場した試合でチームに結果がついたことも大きい。川原は、プロでの初勝利を噛み締めていた。

「プロの1勝はやはり違いますね。今日も500人くらいのサポーターが来てくれたと聞きました。一緒に喜べるのは最高です。本当に嬉しいです」

 時間が止まったかのように感じたプロキャリア最初の2か月。しかし、川原の時間は確かに動き出した。



「やっとスタートラインに立てた感覚です。このままコンスタントに試合に絡んで、個人としてもチームとしても成長していきたいです。もっと強く、賢くプレーできる選手になって、コンサドーレを勝利に導きたいと思います」

 一目でわかるような派手なストロングポイントがある選手ではない。だが、気づけばチームの屋台骨を支えている。そんな存在になり得る選手だ。

 そうなるまで、川原は今日も自分に言い聞かせる。

「慌てない。腐らない。やり続ける」

 その積み重ねの先に、きっとある。札幌の中軸を担ういぶし銀の存在へ、川原は一歩ずつ歩みを進め出した。

(取材・文:黒川広人)

【著者プロフィール:黒川広人】
北海道出身。大学卒業後、フジテレビで番組制作を担当。2018年よりDAZNにてJリーグ関連の番組制作に携わる。2022年からは株式会社dscに所属し、Jリーグ、Jクラブ、WEリーグをはじめとする各種スポーツ団体の映像ディレクション業務を担当。また、地元・北海道を中心に学生年代の取材活動も精力的に行う。

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【了】

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