北海道コンサドーレ札幌のキングロード・サフォ【写真:Getty Images】
北海道コンサドーレ札幌の中で今、ボールを持った瞬間にスタジアムをざわつかせる存在といえば、間違いなくキングロード・サフォだろう。2024年夏にガーナからやってきた無名の練習生。出場機会はルヴァンカップでのわずか1試合にとどまり、その能力はベールに包まれていた。しかし、今、潮目が変わっている。飛躍の兆しを見せる男の正体と、「自分の家」と語る札幌への想いに迫る。(取材・文:黒川広人)
北海道コンサドーレ札幌に加入したキングロード・サフォの順風満帆ではなかった1年半
発掘をテーマに、様々なトライを続ける川井健太体制の北海道コンサドーレ札幌。その中で出場機会を伸ばしている一人がキングロード・サフォだ。
ここまでリーグ戦、5試合に途中出場。独力で相手の守備ブロックを打ち破れる数少ない存在であり、ドリブルを武器とする彼の特性は、今のチームにおいて希少価値が高い。
チームの2連勝となったヴァンフォーレ甲府戦でも、スペースへ力強く駆け上がり、何度も仕掛けた。そのたびにスタジアムはどよめく。本人も、その変化を確かに感じ取っていた。
「スタジアムが沸いているのは自分も感じています。応援してくれているサポーターがいるのが嬉しいです。Xでも自分のことを発信してくれている方が多くて、励みになっています。今日は走ることが重要だったので、その役割は果たせたのかと思います」
2024年夏の移籍ウィンドウ。逆転でのJ1残留へ向けた“秘密兵器”として、練習生から契約を勝ち取ったキング(サフォの愛称)。
「札幌でプレーできる機会があると代理人から聞いて、迷いはありませんでした。チームと共に向上したいと思っていましたし、自分が行きたいと思ったので、日本への抵抗もありませんでした」
しかし、その後の1年半は順風満帆ではなかった。ポルトガルでのプレー経験があるからこそ、日本でもやれるという自負があった。だが、現実は甘くなかった。
「ヨーロッパでプレーしていたので、正直アジアのレベルを軽視していた部分がありました。でも、札幌に来て、日本のリーグのレベルの高さに驚きました。想像以上に苦労しましたね」
今シーズンに入るまで、リーグ戦出場はゼロ。メンバー入りもわずか3度のみとメンバー外の時間が続いた。
キングロード・サフォを支えたチームメートの存在「それが今につながっています」

北海道コンサドーレ札幌加入3年目のキングロード・サフォ【写真:Getty Images】
「非常に悔しい時間でしたし、悲しい気持ちもありました。でも、それを乗り越えるために“ハードワークをして、アピールをして、出場機会を掴むんだ”という気持ちでいました。でも、メンバーに入るのか、メンバー外になるのか、のタイミングは特に複雑な思いを抱いていましたね」
そんな苦しい時間を支えたのが、チームメートの存在だった。
「(荒野)拓馬と(戸川)健太コーチは特に自分を支えてくれた2人です。モチベーションを落とさずにいられたのは彼らのおかげだと思います。『キングには能力がある。ハードワークして、積み重ねればいつかチャンスは来る』と言い続けてくれました。それが今につながっています」
周囲の支えを受けながら、キングは少しずつ札幌に順応していった。
「2年住んで、この街が本当に好きになりました。札幌は自分の家のように感じています」
そんなクラブで実現したい夢がある。
「日本のJリーグにアジャストするのは難しかったですけど、今は段々それができるようになってきていますし、自分の成長も感じています。試合に出て、ゴールを決めて、結果を出せる選手になりたい。そのために、もっと成長したいんです」
では、札幌でどんな存在になりたいのか。
「King! King! King of Sapporo.(札幌の王様になりたいですね)」
そう言って、いたずらっぽく笑った。そして、今季は“大きな出会い”もあった。
キングロード・サフォが北海道コンサドーレ札幌で描く未来

ここまでリーグ戦5試合に途中出場している北海道コンサドーレ札幌のキングロード・サフォ【写真:Getty Images】
「特に今年は自分の成長を感じられている1年になっていて、楽しいんです。(川井)健太さんから、自分の武器の使い方や、使う場面を教えてもらっています。どこの場面で、どこのスペースに入るべきか、健太さんは私の先生です」
その学びの先に、描く未来がある。
「まだ、結婚はしてないんですけど、子供がいるんです。今、僕が出場機会を得て、彼らも幸せだと思います。家族は今、ガーナにいるんですが、次のシーズンが始まるタイミングで、妻だったり、娘だったり、お父さんを札幌に呼べたらと思っています。その時を楽しみにしています」
愛する家族のために、そして、自らの未来のために。
「自分がよりチームの力になっていければと思いますし、監督やコーチが自分を助けてくれているので、彼らの力も借りてもっと成長して、コンサドーレの助けになりたいと思います」
赤と黒に染めたドレッドヘアーも、クラブへの想いの表れだ。
「赤い部分を少し、切ってしまったんですが、髪もコンサドーレを意識しています。でも、次は新しい色にしようかなと考えています。来たる時を待っています。色はまだ未定ですね!(笑)」
キングロード・サフォのKing of Sapporoを目指す、その道のりは始まったばかりだ。
(取材・文:黒川広人)
【著者プロフィール:黒川広人】
北海道出身。大学卒業後、フジテレビで番組制作を担当。2018年よりDAZNにてJリーグ関連の番組制作に携わる。2022年からは株式会社dscに所属し、Jリーグ、Jクラブ、WEリーグをはじめとする各種スポーツ団体の映像ディレクション業務を担当。また、地元・北海道を中心に学生年代の取材活動も精力的に行う。
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