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コラム 7時間前

「本当に大変でした」サッカー日本代表、鈴木彩艶がスコットランド戦のヒーローになるまで。「握力も一時は8まで落ちた」【現地取材コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 フリーライター photo by 田中伸弥
サッカー日本代表、鈴木彩艶
サッカー日本代表の守護神・鈴木彩艶【写真:田中伸弥】



 現地時間3月28日、サッカー日本代表は国際親善試合でスコットランド代表と対戦し、1-0で勝利した。目下の欧州遠征を幸先良くスタートし、31日のイングランド代表戦に向かう。完封勝利に大きく貢献したのは、怪我の影響を懸念されていた守護神・鈴木彩艶。「2連戦としてこのシリーズを考えている」として、次戦へも熱い闘志を燃やしている。(取材・文:元川悦子)[1/2ページ]
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絶体絶命のピンチを救った鈴木彩艶

スコットランド代表MFスコット・マクトミネイ
日本代表に脅威を与えたスコット・マクトミネイ【写真:Getty Images】

 2026年北中米ワールドカップ(W杯)本番まで2カ月半。残されたテストマッチもスコットランド代表戦を含めて3試合しかない。

 3月28日は非常に重要なテストの場。グラスゴー・ハムデンパークでのアウェイ戦ということで、日本にとっては難易度の高い一戦だったが、森保一監督は積極的なトライに打って出た。

 まず見る者を驚かせたのがスタメン。2022年カタールW杯経験者はキャプテンマークを巻いた前田大然と田中碧、伊藤洋輝の3人だけで、キャップ数10以下の若手が5人も名を連ねたのだ。

 交代枠11人というレギュレーションが思い切ったチャレンジを後押ししたに違いないが、連係面に不安があるのは確か。そこをどう乗り切るかがポイントだった。



 けれども、田中碧が「最初の15分間はみんな探り探りでやっていました」と言うように序盤は苦戦を強いられた。

 最たるものが、開始9分のスコット・マクトミネイの決定機。スコットランドが右サイドの混戦からジョン・マッギンが抜け出し、クロスを上げた瞬間、ファーサイドの藤田譲瑠チマと菅原由勢の間がガラ空きに。そこをエースアタッカーに突かれたのである。

 絶体絶命のピンチに立ちはだかったのが、日本の正守護神・鈴木彩艶。彼は昨年11月に負傷し、まだ痛みの残っている左手1本で強烈シュートを阻止。その跳ね返りがポストに当たって外に出て、ゴールを割らせずに乗り切ったのである。

「怖さは全然なかったですし…」

伊東純也 日本代表
日本代表の決勝ゴールをあげる伊東純也【写真:田中伸弥】

「クロスに対して出ない判断をして、ポジションを取ったらすぐにボールが来て、左手で反応した感じで、本当に本能的な反応だった。怖さは全然なかったですし、最終的にゴールを割らせないというのを実行できたのがよかったと思います」と本人は力を込めたのだ。

 正直、ここで失点していたら、若手主体の日本はかなり苦境に陥っていたが、鈴木彩艶の大仕事に助けられた形。キャプテンマークを巻いた前田も「あれで決められていたら絶対流れが変わったと思う。彩艶の素晴らしいセーブだったと思います」と心から感謝した。

 これで息を吹き返した日本は主導権を握り返し、前半から数多くのシュートを放ったが、前半は0−0で終了。森保監督は後半から三笘薫ら主力級を次々と投入し、攻撃のギアを上げていった。



 一方のスコットランドもホームで不甲斐ない負けは許されない。徐々に攻めを加速させ、前がかりになっていく。そういう状況になっても、日本には鈴木彩艶がいる。アンドリュー・ロバートソンに強烈シュートを打たれた65分の場面でも冷静な対処を見せたのだ。

「セカンド(ボール)を狙われているなという感じがあったので、外にボールを勢いを殺さず流そうと考えていて、そのイメージ通りにうまく対応できました」と背番号1は相手のチャンスを瞬殺。最終的に伊東純也が奪った虎の子の1点を守り切って、1−0勝利の原動力になったのである。

「握力も一時は8まで落ちた(苦笑)」

サッカー日本代表GK鈴木彩艶
スコットランド代表戦で堂々たるプレーを連発した鈴木彩艶【写真:Getty Images】

 まさに「日本に鈴木彩艶あり」を印象付けたこの試合。本人も「ゼロというところにこだわれたのは非常に大きいですし、今後にもつながるところだと思います」と安堵感をのぞかせた。

 昨年11月8日のACミラン戦での左手中指と舟状骨骨折の重傷を負ってからここまでの歩みは本当に簡単なものではなかったという。

「手術して3日後からガンガン動き出したんですけど、左手が使えなくて、右手中心のトレーニングになったり、脳や目のトレーニングをするなど、本当にいろんなことに取り組みました。

 ただ、握力も一時は8まで落ちた(苦笑)。右手は60〜70(キロ)くらいあるんで、本当に大変でした。その後、チーム練習に合流しましたけど、感覚的な違いも感じた。



 それを言葉にするのは難しいですけど、試合に出ていなかった自分が久しぶりにプレーしたような感覚を覚えたんです」と彼は4か月に及んだリハビリの難しさを改めて口にする。

 そういった違和感とも付き合いながら、現地時間3月13日のトリノ戦でようやく実戦に復帰。だが、この試合ではいきなり失点に絡むなど、試合勘の欠如は明らかだった。

 この時点では「彩艶は本当に大丈夫か?」「W杯に間に合うのか」といった疑問の声がSNS上でも数多く散見され、森保監督も多少なりとも懸念したはずだ。

 そこから公式戦3戦目だったスコットランド戦で上々のパフォーマンスを見せたのだから、指揮官やコーチングスタッフ、チームメートも本当にホッと胸をなでおろしたに違いない。

 そうやって周りに安心感を与えられたことも、鈴木彩艶自身は嬉しく感じていることだろう。この試合で大きな手応えをつかんだ様子が見て取れた。

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