「1つ1つのプレーを無駄にしたくない」。その思いが、美藤倫のプレーの根底にある。日々のトレーニングから準備を積み重ねてきた美藤は、京都サンガF.C.戦のピッチで自らの強みを表現していた。(取材・文:高村美砂)[1/2ページ]
明治安田J1百年構想リーグ・地域リーグラウンド第9節
ガンバ大阪 2-0 京都サンガF.C.
パナソニックスタジアム吹田
ボランチとして、自身の強みを表現する
2週間のインターバルを挟んで開催されたJ1百年構想リーグ第9節・京都サンガF.C.戦。ジュニアユース時代を過ごした古巣を相手に美藤倫は90分を通して攻守に躍動し続けた。『古巣』への特別な感情はなく、ここ数試合、途中出場の中でも示していた「ボールを(前線に)運ぶ」という強みをしっかり表現することだけを考えてピッチに立ったという。
「2週間のインターバルを通して改めて思ったのは、ボランチからしっかり前に運ぶことが大事で、それが自分の最大の強みだということ。途中からでも、先発でも、ピッチに立つ以上は、チームのギアを上げる、停滞しているのならその流れを変えることは意識してやらなくちゃいけないと思っています。
勝っていても負けていても、それをしっかり表現することが今年のサッカーだし、僕に限らず全員が意識しているその部分を僕もしっかり意識してやろうと思っています」
その決意を示すが如く、京都戦は立ち上がりから強度の高いプレーを展開。積極的に前線に顔を出しながら「運ぶ」プレーで攻撃に厚みを作り出す。一方、守備においても終始、球際、局面の強さを披露。京都のジョアン・ペドロとのバトルでもほぼ全てのシーンで上回った。
「そこで足を止めたら終わってしまう」
「球際の勝負は、とにかく気合いです。そんな深く考えてサッカーをするタイプではないので、とにかくビビらず、体を正面に向けていくというくらい。もちろん予測もしますし、(体をぶつける)タイミングとかもありますけど、対峙する相手が外国籍選手であろうと、誰だろうと変わらず、気合いで乗り切っています」
持ち味でもある局面での強さの話になると、決まって『気合い』という言葉を繰り返す美藤だが、それは単に『気持ち』だけで語られるものではない。日頃の弛まない準備の中で磨いてきたプレーを、思い切って表現するという意味だ。
プロキャリアをスタートした2024年から、日頃のトレーニングの中で、あるいは居残り練習を通して積み上げてきた『ひたむきなプレー』は公式戦のピッチで、もう一歩早く足を出すことや、より強く体をぶつける姿として示される。
「いつだって試合に出たいと思っていますし、出られない時は当然、悔しいし、ムカつくこともあります。でも、そこで足を止めたらサッカー選手として終わってしまう。だからこそ、支えてくれる家族のためにも、応援してくれる人たちのためにも、とにかく今日より明日、いいプレーができるように努力を続けるだけだと思っています」
「ああ、やっぱりサッカーができるのは楽しいな」
印象に残っているのは3月1日に行われた今シーズン初の練習試合。直近のJ1百年構想リーグ第4節・清水エスパルス戦で控えメンバーに回っていた美藤は、この試合にボランチとして先発。前半でピッチを退いてベンチから戦況を見守っていたが、後半に入りチームメイトが負傷して起き上がれないのを見るや、いの一番にウォーミングアップを開始する。
もちろん、限られた人数での練習試合で、そう多くの控え選手がいなかったのもある。だが、そうした状況下で真っ先に気持ちを示せるのも美藤の良さ。しかも後半途中からピッチに立った後も最後までグラウンドに居残り、遠藤保仁コーチと自主トレに励んでいたのも美藤だった。
「去年、ケガから復帰した時に『ああ、やっぱりサッカーができるのは楽しいな』って感じられたことは今の自分の力になっている。1つのプレーに対する重み、その1本が蹴れることの幸せみたいなものを大事に考えられるようになったし、その1本1本で自分らしく悔いのないプレーをしようと思えるようになったというか。これまで以上に、1つ1つのプレーを無駄にしたくないという気持ちが強くなった」
そのマインドは今も変わらずその胸で脈打ち、公式戦で惜しみなく『自分』を出し切るための力に変わっている。先に書いた京都戦でも90分にわたって強度の高いプレーを続けた彼は、両チーム合わせて最多の10.944キロを走り抜き、チームの完封勝利に貢献した。



