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18歳の徳村楓大に最大級の「可能性」を感じる。「物怖じせず戦う」なぜFC町田ゼルビアの高卒ルーキーは評価されるのか【コラム】

シリーズ:コラム text by 大島和人 photo by Getty Images
FC町田ゼルビアの徳村楓大
FC町田ゼルビアの徳村楓大【写真:Getty Images】



 実績のある選手が揃うFC町田ゼルビアで、18歳の高卒ルーキーが存在感を示している。神村学園出身の徳村楓大は、今季序盤から出場機会を与えられ、「物怖じせず、戦ってくれる」と指揮官も評価する。18歳の現在地と、その可能性に迫る。(取材・文:大島和人)
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J1で躍動する高卒ルーキー

FC町田ゼルビアの徳村楓大とナ・サンホ
FC町田ゼルビアの徳村楓大とナ・サンホ【写真:Getty Images】

 4カ月前に高校サッカーで活躍していた18歳が、今はJ1で躍動している。徳村楓大は2007年11月26日生まれの18歳で、2025年度の高校総体、高校サッカー選手権で「二冠」を達成した神村学園の主力アタッカー。今はFC町田ゼルビアでプレーしている。

 神村学園の二冠メンバーからは他に中野陽斗、荒木仁翔(共にいわき)、日高元(大宮)、福島和毅(福岡)がJリーグに進んだ。中野はいわきで8試合に先発していて、日高は6試合、荒木は5試合に出場している。徳村もリーグ戦では7試合にベンチ入りし3試合に出場。AFCチャンピオンズリーグエリート・成都蓉城戦ではフル出場も果たした。

 徳村は4月11日の柏レイソル戦で67分、エリキに変わってシャドーの位置に入った。75分にナ・サンホが決めた先制ゴールは徳村の突破、クロスから生まれている。90分の決定機は相手GKに防がれたが、短い時間で持ち味を発揮し、1-0の勝利に貢献。DAZNの中継で柏戦の「ヒーロー」として呼ばれたのも徳村だった。


 黒田剛監督は起用の理由をこう述べる。

「ナ・サンホが量をこなせる選手になってきているし、彼は右も左もできます。エリキの前への推進力と、帰陣するパワーが少しずつ落ち始めてきたタイミングで、楓大の量とスピードをもう一つかますことによって、相手の守備ラインをさらに疲弊させていけると考えました。持てる選手よりも仕掛けられる選手の方がいいだろう、それから守備に関しても迅速に対応ができる選手がいいだろうということで、そこは替えました」

黒田剛監督の評価「すごく好感が持てます」

FC町田ゼルビア 黒田剛監督
FC町田ゼルビア 黒田剛監督【写真:Getty Images】

 75分の先制弾はショートカウンターから生まれた。まず左ウイングバックの林幸多郎が前に踏み込み、相手のCBからボールを刈り取った。徳村は外からサポートしてパスを受けると、エリア内に切れ込み、左足で「ここしかない」という狭いコースにクロスを送り込む。ナ・サンホがファーサイドから斜めに走り込み、DFともつれながらこれを押し込んだ。

 徳村の武器は何と言ってもスピードと突破力。運動量や動き出しも強みで、チームの先輩からは「パスを出しやすい」というコメントも耳にした。168cm・63kgと小柄だが、体幹の強さは圧巻で、相手に詰められても押し切る、逆を取る逞しさもある。J1トップクラスのタレント軍団の中で、黒田監督の選択肢に堂々と入っている。

 指揮官が徳村を評価するポイントの一つは「物怖じしない」キャラクターだ。


「徳村は物怖じせず、しっかりと戦ってくれているところにすごく好感が持てます。これからも彼の成長に期待しながら、起用していきたい」

 確かにこの18歳は試合後に大量の記者に囲まれても堂々としている。柏戦後も怯えることも、浮かれることもなく、いい意味で淡々とコメントをしていた。

 町田は12日にサウジアラビアへ出発し、4月17日にはAFCチャンピオンズエリートのラウンド8(準々決勝)を戦う。

 準決勝、決勝と勝ち上がれば中3日、中3日の連戦だ。シャドーのポジションを見るとナ・サンホ、エリキらタレントはいる。一方で相馬勇紀、西村拓真はケガ明けで、コンディションに不安の残る状態だ。徳村が「使えるカード」として入ってきたことは、チームにとって大きい。

「欲を言えば…」徳村楓大に感じる可能性

FC町田ゼルビア 白崎凌兵 徳村楓大
FC町田ゼルビアの白崎凌兵と徳村楓大【写真:Getty Images】

 黒田監督は言う。

「サウジアラビアはかなり高温でコンディション的に難しくはなってくると思います。しかし、みんなをきちっとローテーションさせながら使っていくことによって我々の強さ、選手の強みをしっかり維持しながら戦えることにもなってきます」

 もっとも「勝ったからOK」「ゴールに絡んだからOK」というわけでもない。黒田監督は試合後の記者会見で、徳村を含めた攻撃陣に対するダメ出しもしていた。


「欲を言えば、フリーキックからの中村帆高のヘディングシュート、それからテテ・イェンギのヘディングシュート……。(90分の)徳村楓大の1対1も引きつけて、藤尾にパスを出せばゴールを取れました。常勝チームとなれるかは、あれをしっかりと取り切って突き放すしたたかさ、試合運びのうまさにかかってくると思います」

 育成年代ならば「シュートを積極的に狙う思い切り」「チャレンジ」を評価していいのかもしれない。しかしプロは1%でも得点の確率を上げる緻密な選択を求められる。徳村もロッカールームでチームメイトからの祝福とともに、コーチ陣からこの場面に対する指摘を受けたという。

 徳村の同世代は神代慶人(ロアッソ熊本→アイントラハト・フランクフルト)、新川志音(サガン鳥栖→シント=トロイデン)が既にヨーロッパへ進出している。もっともJ1のトップチームで出場機会を得ることはそれなりに高い壁で、さらに彼はこれからACLEファイナルラウンドという世界レベルの大舞台に立つ可能性がある。まだ学ぶべきものはあるのだろうが、徳村は今の町田でも最大級の「可能性」を感じさせる人材だ。

(取材・文:大島和人)

【著者プロフィール】
1976年生まれ。生まれが横浜で育ちは埼玉。サッカーは親にやらされたが好きになれず、Jリーグ開幕後に観戦者として魅力へ目覚めた。学生時代は渋谷の某放送局で海外スポーツのリサーチを担当し、留年するほどのめり込む。卒業後は堅気転向を志して外資系損保などで勤務するも、足を洗いきれず現在に至る。「スパイシー」「党首」などのHNでネット上に文章を書いていたが、2010年より球技ライターとしてメジャー活動を開始。

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【了】

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