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コラム 4時間前

インテルの新常識が、ディマルコを変えた。18アシストを生んだ“世界最高峰WB”の進化論【コラム】

フェデリコ・ディマルコ
インテルのフェデリコ・ディマルコ【写真:Getty Images】



 セリエAのアシスト記録を塗り替えたのは、ストライカーでもトップ下でもなかった。インテルの左ウィングバック、フェデリーコ・ディマルコである。今季18アシスト。守備負担の大きいポジションで、なぜこれほど異常な数字を叩き出せたのか。そこには、クリスティアン・キヴ監督による徹底したマネジメントと、“90分プレーできる身体”への変化があった。イタリアサッカーを継続的に追う佐藤徳和が、ディマルコ覚醒の理由を読み解く。(文:佐藤徳和)[1/2ページ]

5大リーグの中で得点ランキングが最も低調なセリエA

 ネラッズーリの来季ユニフォームに、スクデットが縫い付けられる。

 現地時間3日に行われたセリエA第35節のパルマ戦を2-0で制したインテルは、2年ぶり21回目のセリエA制覇を果たした。

 今季のセリエAは、得点王争いが際立って低調である。5大リーグの状況と比較すれば、その差は一目瞭然だ。

 各リーグのトップスコアラーを見ると、プレミアリーグではアーリング・ハーランド(マンチェスター・シティ)が26ゴール、ドイツ・ブンデスリーガではハリー・ケイン(バイエルン・ミュンヘン)が33ゴール、リーグ・アンではエステバン・ルポール(アンジェSC/スタッド・レンヌ)が20ゴール、ラ・リーガではキリアン・エンバペ(レアル・マドリード)が24ゴールを記録している。

 一方のセリエAでは、インテルのラウタロ・マルティネスが17ゴールでトップに立つ。



 5大リーグの得点王争いとしては最も低い数字だが、今季は負傷による離脱が多く、26試合の出場にとどまっている点を踏まえれば、その中で首位に立っていることは評価に値する。

 問題は、2位以下の得点争いが伸び悩んでいる点にある。

 2位にはインテルのマルクス・テュラム、ASローマのドニエル・マレン、コモ1907のアナスタシオス・ドゥヴィカスが13ゴールで並んでいる。マレンは冬の移籍市場でアストン・ヴィラから加入し、出場は16試合に限られている中での数字だ。

 今季のセリエAでは、二桁得点に到達している選手がわずか11人(16日時点)にとどまっており、各クラブに絶対的なストライカーが不足している現状が浮き彫りとなっている。

イタリア人点取り屋の不足。一方でアシスト王には…

 イタリア人選手に限れば、10ゴールを挙げているジャンルーカ・スカマッカ(アタランタ)が最多であり、得点力不足の傾向はより顕著だ。

 仮にこのまま得点王が10点台で決着すれば、20得点未満での戴冠は、ジャンルーカ・ヴィアッリ(サンプドリア)が19ゴールを記録した1990/91シーズン以来となる。

 当時はまだ18チーム制であり、現在の20チーム制においては、最も低い得点王の誕生となる可能性もある。

 今のセリエAで、欧州トップレベルのストライカーと呼べる存在は、26試合で16ゴール4アシストを記録しているラウタロ・マルティネスに限られるだろう。

 このアルゼンチン代表FWが、仮にインテルの優勝に貢献した場合、MVPの最有力候補となるのは自然な流れに思える。しかし、その見方には異論もあり得る。

 アシスト争いにも“異変”が生じている。

 インテルの左ウィングバック、フェデリーコ・ディマルコが、ランキングの首位に立っているのだ。4月27日に行われた第34節、トリノFC戦でも2つのアシストを記録した。



 特筆すべきはその数字である。33試合に出場し、実に18アシストをマーク。これまでに最高記録だったパプ・ゴメス(アタランタ)が19/20シーズンに打ち出した16アシスト記録を塗り替えたのだ。

 2位には9アシストのチームメイト、ニコロー・バレッラとサッスオーロのアルマン・ロリアンテが続くが、その差は約2倍であり、他を寄せ付けない圧倒的な数字となっている。

 過去5シーズンのデータを振り返り、24/25シーズンのロメロ・ルカク(SSCナポリ)の「10」、23/24シーズンのテュラム(インテル)の「13」、22/23シーズンのフヴィチャ・クヴァラツヘリア(SSCナポリ)の「13」、21/22シーズンのドメニコ・ベラルディ(USサッスオーロ)の「13」、20/21シーズンのルスラン・マリノフスキー(アタランタ)の「12」アシストと比較しても、ディマルコのアシスト数は、突出していることがわかるだろう。

 しかもディマルコは、これらのアシスト王とは異なり、守備負担の大きいウィングバックを主戦場とするプレーヤーである。

 その立場を踏まえれば、今季記録しているアシスト数は“異常”とさえ言える。

 もちろん、ポジティブな意味においてである。まさに「攻撃は最大の防御」を体現する存在と言える。

なぜディマルコの攻撃力は向上したのか?

 ディマルコは、これまでもインテルにとって、欠かせない攻撃のキーマンの一人として活躍してきた。

 レンタルされていたエラス・ヴェローナから復帰した21/22シーズンは「4」、22/23シーズンは「5」、23/24シーズンは「6」、24/25シーズンは「9」アシストを記録し、順調に数字を伸ばしてきた。

 もともと左サイドからの攻撃力には定評があったが、今季は二桁に乗せただけでなく、昨季の約2倍のアシストを挙げているのだ。

 そして、ゴールの数もキャリア最多の6をマーク。28歳にして、攻撃の能力をさらに磨き上げている。

 なぜこれほど大きく、攻撃力が飛躍したのか。

 インテルで歴代2位の通算757試合出場した記録を持つレジェンド、ベッペ・ベルゴミが、『ラ・ガッゼッタ・デッロ・スポルト』のインタビューで解説している。

「今シーズン、際立っているのは、多くの試合で、90分間プレーしている点だ。過去数年は少し苦しんでいたので、クリスティアン・キヴ監督のマネジメントも非常に良いと私は思っている」

 ディマルコ自身も昨年9月25日に行われた第5節のカリアリ・カルチョとの一戦をあとに、このように述べていた。

「より頻繁に90分プレーすることで、コンディション面でも、毎回決まったように60分で交代するよりも成長できる」



 実際、シモーネ・インザーギが監督だった昨シーズンまでと比べ、今季は試合終了までプレーする時間が伸びた。それだけ、キヴ監督の厚い信頼を受け、結果で信頼に答える形となった。

 過去4年間で、最も出場時間が多かった24/25シーズンの2,197分をすでに上回り、2,624分間プレーしている。残り2試合で出場時間を増やし、さらにアシストの記録を伸ばせる可能性もある。

 では、キヴ監督のどのようなマネージメントが優れていたのだろうか。ベルゴミは続ける。

「例を挙げよう。コッパ・イタリアのトリノ戦(編集部注:2月26日に開催、インテルが2-1で勝利し準決勝に勝ち抜け)ではディマルコを招集すらせず、家に残した。一体なぜか? それは、この選手がどの地位に達しているかを理解させる。キヴ監督はディマルコを最も重要な選手の一人と見なしており、特定の試合では休ませている。

 また、休ませる余地があるのは、クリスティアンが多少リスクを取り、例えば(マッテーオ・)コッキがコッパ・イタリア(ベスト16のヴェネツィアFC戦)に出場したように、若手を起用するからだ。こうして、ディマルコは休んでコンディションを整えることができる。そしてフェデリーコが回復し、良いコンディションにあれば、試合を決定づける存在になる。

 ゴール、アシスト、フリーキック、コーナーキックを通じて、彼は信じられないようなキックを放つ。そして私が気づくのは、フィジカルの状態が良いと守備も良くなるということだ。両局面でより高いパフォーマンスを発揮できるものなんだ」

 キヴもまた左足を利き足とし、センターバックを主戦場としながら、左サイドでプレーすることもあった。FKも得意としたが、ディマルコの方が、攻撃力では上回る。

 同じポジションでプレーした指導者の下、インテルの「32」番が、攻守でさらにレベルを一段階上げてきたというのは、決して偶然ではないだろう。

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