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なぜイングランド代表からパーマー、フォーデン、マグワイアが外れたのか。トゥヘル監督の決断の意味に迫る【北中米W杯コラム】

シリーズ:コラム text by 安洋一郎 フリーライター photo by Getty Images

イングランド代表
イングランド代表から外れたマグワイア、フォーデン、パーマー【写真:Getty Images】



 5月22日、イングランド代表がFIFAワールドカップ(W杯)北中米大会のメンバーを発表した。その中に、フィル・フォーデン、コール・パーマー、ハリー・マグワイアの名前はなかった。なぜ、トーマス・トゥヘル監督は彼らをメンバーから外したのか。その理由を、指揮官の言葉から考察する。(文:安洋一郎)[1/2ページ]

W杯に臨むイングランド代表メンバーが発表

 「我々は単に才能ある選手を集めるのではなく、チームを作り上げるのだ」

 これは、トーマス・トゥヘルが2024年10月のイングランド代表監督就任会見で、NFLのニューイングランド・ペイトリオッツのドキュメンタリー『The Dynasty』から引用した言葉である。

 ドイツ人指揮官は、FIFAワールドカップ(W杯)の目標である「優勝」に向け、強い信念を持って“チーム作り”を進めてきた。

 その中で5月22日に発表されたイングランド代表の26名には、大きな衝撃が走った。

 フォーデン、パーマー、マグワイア、そしてアレクサンダー=アーノルド。世界最高峰のタレントたちがメンバーから外れたのだ。

 しかし、トゥヘルはメンバー発表会見で「最も才能のある26人を集めるのではなく、最高のチームを構築する」と繰り返し強調。就任会見で語った“言葉”を貫く人選を行った。

 では、なぜ彼らを含む複数の有力候補が選外となったのか。

 トゥヘルの就任から現在までの発言を振り返りながら、代表チームのコンセプトと選考理由を考察する。


トゥヘルのチームコンセプト

 トゥヘルは就任会見で、プレミアリーグを「非常にフィジカルなリーグ」と評し、代表チームでも同様の文化やスタイルを反映させるべきだと語っている。

 具体的な戦術については、「試合の強度を高め、相手ゴール前でのボールタッチを増やしたい。相手陣内でのボール奪取も増やしたい」と説明。フィジカルと強度をベースに、ハイプレスと鋭いカウンタープレスで即時奪還を狙い、試合を支配するフットボールを目指す意向を示した。

 この方向性は結果にも直結した。イングランドは予選8戦全勝。しかも失点はゼロ。相手が格下中心とはいえ、全試合で平均ポゼッション率70%超を記録した。

 トゥヘルは、この強度の高いフットボールを実行できるメンバーを、試合を重ねながら固めていった。

 その代表例が、9月に初招集され、デビュー戦からデクラン・ライスの相方に定着したMFエリオット・アンダーソンだ。

 今季のプレミアリーグで地上戦勝利数とデュエル勝利数(地上戦+空中戦)1位を記録したノッティンガム・フォレストのMFは、球際の強さだけでなく、ボール奪取直後のプレー精度も高い。まさに、トゥヘルが中盤に求めるプレースタイルそのものだった。

 他のポジションでも同様に、指揮官が求める特性を備えた選手が、代表経験の有無に関係なくレギュラーへ定着していった。

その結果、トゥヘルは「名前」ではなく「役割」でポジションを整理。そして最終的に、フォーデンやパーマー、マグワイアらの居場所は消えていった。

 トゥヘルはW杯メンバー発表会見でも、「名前だけで選手を選ぶことには反対だし、彼らに何かを与えるためだけに、本来のポジションとは異なる場所でプレーさせることにも反対だ」と改めて強調している。


マグワイアが選外となった2つの理由

 マグワイアが外れた理由は、大きく2つある。

 1つ目は、トゥヘルが重視するハイラインに必要な「機動力」。そして2つ目は、予選期間における「積み上げ不足」だ。

 トゥヘル体制の最終ラインでは、前体制で主軸だったマグワイアではなく、ハイラインの背後をカバーできるDFエズリ・コンサとDFマーク・グエイがレギュラーに抜擢された。

彼らはスピードと機動力に優れ、広いスペースでも対人守備の強さを発揮する。

 一方でマグワイアは、予選期間中に一度も招集されず。3月にトゥヘル体制で初めて招集され、1年半ぶりにイングランド代表へ復帰していた。

 復帰戦のウルグアイ戦では、自慢の高さを含めて好パフォーマンスを披露。だが、トゥヘルは試合後、「タイプは違うが、彼より優先順位の高い選手もいる」と厳しく語っている。

 チームのベースとなるハイラインを成立させる上で、「機動力(モビリティ)」が重要であり、コンサやグエイ、DFトレヴォ・チャロバー(最終的に選外)、DFジョン・ストーンズの方が優先順位は高い、という判断だった。

 ストーンズに関しては負傷が続いている上、絶対的な機動力タイプではない。ただ、トゥヘルにとっては「特例」とも言える存在であり、ピッチ内外で重要な役割を担う選手だ。実際、3月の時点でも「コンディションが整えばW杯メンバーに入る」と示唆していた。

 また、トゥヘルは、ユーロ2024(欧州選手権)決勝敗戦の一因として「ピッチ内でのコミュニケーション不足」を挙げており、自らの在任期間で積み上げたチーム作りを重視していた。

 こうした背景から、「予選を戦った選手」がW杯メンバーのベースになったと考えられる。

 また、実際に指揮官はコミュニケーションを意識して、選手の社交性を重視しているとのこと。サポート役に徹することができるかなどを考えて、メンバー選考を検討し、 MFジョーダン・ヘンダーソンのようなリーダー格のベテランを選出している。



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